第2話 完成度を高める
完成度を高めるために何をするべきでしょうか? もしくは何が必要でしょうか?
もっと速く書けること?
長文がかけること?
ものすごく細かい設定?
ストーリーの奇抜なアイデア?
かっこいいキャラクター?
文章の華美な表現?
違います。それらは書く能力やオリジナリティや表現力であって作品そのものの完成度ではありません。
何度も書きますが完成度とは過不足である程度判断できます。
初心者にとっての完成度とは過不足の量そのものであり、過不足の質そのものです。
どんな部分に過不足があって、どんな部分が読み手に受け入れられていないのか、そこをハッキリさせるのが人間的で個人的な判断であり作品制作における押さえるべきポイントになります。
過不足の確認方法はいくつかあります。
頭の中の物語を整理し場面ごとのキーワードや単語を書き出しましょう。書いた文章の中にそれらの要素はすべて含まれていますか? 要素として不要なキーワードや単語が何度も何度も使われていませんか?
文章の中に読者の知らない単語は含まれていますか? 表現や説明の内容は適切ですか?
小説独特の文章を除けば、読者と現実に会って口頭で読み上げても伝わりますか?
そもそも読者はどのような人ですか? 高校生以上であるとか、普段から本を読む人であるとか、3つくらいの条件を付けましょう。読者は生きています。ふわふわした綿アメではありませんし、作者と同じ人間です。喜怒哀楽を持っています。そして、なぜか尊大である場合もあります。理由はかなり単純で、作者が読者よりも若かったり知識的に劣ったり、はたまた説明が下手だったりすると「オイラはこの作者より賢いぞ」とマウンティングに入ります。マウンティングとは、オイラのほうがすごいぞ、と叫びはじめることです。
恋愛ジャンルやファンタジージャンルであればそのような事態が起こりづらいのですがお仕事系の小説や専門分野ではよくあります。
読者側のマウンティングへの対策をしましょう。
まず、知識が正しいことをある程度は保証しましょう。下調べや意味の確認がこれに当たります。最低限、指摘や質問を受けたものは調べられる範囲で調べましょう。
次に、読み手の立ち位置を調査する必要があります。市場調査です。
WEB小説では異世界転生などの似たり寄ったりのジャンルや作品が多数投稿されていますが、これはWEB小説における市場調査の結果です。
あなたの書く小説に近い内容で、あなたが高評価できて、かつ全体としても高評価を得ている作品を読んでください。その作品では物語をどのように書いていますか? その文章を小学生の国語の授業のように実際に書き写してみましょう。作品のリズムや内容説明のためのキーワードや単語の取捨選択がされているはずです。また多くの場合は作品と関係ないことは書かれていないか、文章の配置としてある段落にまとめて書いてあるのではないでしょうか。
説明における間違いや嘘もほとんど無いはずです。例え話も少ないはずです。それらは現実で他人と会話するときにつまらない原因になったり話が滑る原因であるため、小説の文章でも回避される傾向があります。説明の間違いや嘘は一般的なものであれば辞書で調べたりネットで検索すれば防げます。活用できるものは活用しましょう。
過不足を技術的に把握する方法はキーワードや単語に限りません。例として構成要素に着目しましょう。
メディアに依らない作品の構成要素は以下の通りです。
○世界観
○ストーリー
○キャラクター
キャラクターは文学作品などである場合は人物と読み替えてください。
そこに、書き手が表現を加えることになるため文章が加わります。
○世界観
○ストーリー
○キャラクター
○文章
文章はどのように読まれるでしょうか?
紙面であったりパソコンやスマホの画面です。
WEB小説である場合、上記の要素に画面を追加することになります。
○世界観
○ストーリー
○キャラクター
○文章
○画面
世界観やキャラクターについてはキーワードや単語で解決します。ストーリーはかなり確立された分野なのでハリウッド映画のストーリー構成などを参考にしてください。三幕構成などが代表的です。
文章は内容の誤りや単語の誤用、作品と関係性の薄い表現や例え話がないかの確認、キーワードや単語で解決します。
画面の確認方法は実際に見るしかありません。レイアウトが人間に与える印象については説明しませんが縦書きと横書きは別物と考えてください。またWEB小説では紙の代金が発生しないため改行が多くなりがちです。紙の本で改行だらけにすると……プリンターをお持ちであれば実際に試してみてください。社会人になるとパソコンで文章を作りプリンターで印刷して内容確認を行うことが多いです。
多いということは理由があるからです。ぜひ試してみてください。それらを理解した上で実物を印刷せずに済ませるのと、理解せずに実物を印刷せずに済ませるのは違います。ただ、作品が紙本になることを想定しない場合は印刷確認をしなくていいかもしれません。
多くの人に読んでもらいましょう。
多くの人に読んでもらうことが上達の近道であるというのは少ない読者の偏った意見を無限に追い続けるのを避けるという意味もあります。人は世界中にいっぱいいます。あなたの作品を読んでくれる読者は、今は読んでいないだけで世界中にいっぱいいるのです。
作品を褒める人や作品をけなす人、作品を良くするためのアドバイスを考えてくれる人、作品をとりあえず非難する人、作者本人の人格を攻撃したがる人、通りすがりの賢者、色々です。わたしはそれらを読者タイプと定義しています。
読者の意見のうち検討対象になるのは複数の読者タイプから出ているものではないかと思います。褒める側からもけなす側からも出る意見は採用すべきかどうかに関わらず重要です。
作品を提供するときの心構えも大事です。読者と作品は、店員とお客様の関係に似ています。作品を提供して時間を支払ってもらうのです。
店員に対して「俺はお客様だ! 神様だぞ!」と叫ぶ人に対してへりくだってはいけません。逆もしかりです。読者を自分の下僕か何かと勘違いしてはなりません。
現実の人間関係と同じように作者と読者の関係もまともであるべきです。
まともな関係を築こうと思うなら、文章に書いてはいけない内容や、文章に紛れ込ませてはいけない内容があることも分かるはずです。それらが分かっている上であえて書くことと、分かっていないのに書くことは全く違います。
上述のいくつかのポイントを参考に過不足を減らして作品完成度を高めましょう。
完成度はラノベだろうと文学作品であろうと芸術品であろうと作品と名の付くものにはかならず存在します。
逃げないでください。逃げて得られるものはありません。逃げながら得た完成度は、プロが仕事として続けていくために必要としている完成度とは異なります。世の中にはプロ級の人が沢山います。あなたの代わりは沢山います。だからこそ居場所は自分で作り続ける必要があります。
自分のグループを作って居場所を確保するのも手ですが、小さなグループ内に篭もることはグループ外への影響力は無視していることになるので気をつけましょう。自分の所属する複数のグループに所属している人の合計数が読者限界数です。
最後に、今回長々と書いてきた完成度を高めるための方法は最後まで書ききった作品にしか適用できません。
作品は最後まで書きましょう。未完成の美しさが許されるのはお金や時間のやり取りが発生しない場合に限られます。WEB小説の投稿サイトではお金は発生しませんが時間のやり取りは発生します。
重ねて書きますがわたしは小説が好きです。あなたの作品にお金や時間、賞賛の言葉を喜んで支払える日をいつもいつも心待ちにしています。
以上、ご拝読ありがとうございました。