私の猫
SFで良くある変態能力のある種族(地球の猫に似た形態と人間形態を選択して取ることができる)の娘の独り言みたいな、ワンシーンを切り取った形の短編です。脈絡も説明も無いです・・・。
雰囲気で読んでもらえると嬉しいです。
十代の頃書いた作品なのでかなりつたない作品ですが、個人的に気に入ってるのでUPしてみたくて出しました。
猫は、金色の目をして見ていた。 そう、こちらを・・・
「私を殺す気?」
答えないー冷たい瞳
「・・そうよ! 私は猫の裏切り者。好きになさいよ、猫!」
思わず頭に血が昇った。
大声でまくしたてる自分とクレイの冷静さがおかしかった。
金色の毛皮が滑らかに光に濡れる。
赤い舌。白い牙。初めて彼が口を開いた。
「憶えているか、一族の掟を・・。」
猫形態のどこからこんな声が、と思うほど綺麗なアルト。
「君は我々を裏切ったのだ ―――― 全ての猫を死に至らしめようとした。」
音も無く、ずいと前に出る。
どうこう弁解する気はさらさら無かった。それは真実だったし、何より”スジ”が通っていた。
が、あたしは自分を”悪女猫”だとは思っていなかった。あたしは、自分が生きるために、生き残るために当然のことをしたのだ。
あたしは、耳をピンっと立てて胸を張り、ヒゲをなでつけた。
「だから、何だって言うの!」
「自然の精霊としての誇り、人間に飼いならすことの出来ない我々の種族は二度と貴様を見ないだろう。」
「今更何を・・。私がどんな思いで生きてきたか。そしてその時あなた方猫は、その冷たい金色の目をしてただ私を見下ろしてたわ。たとえ誇りを捨てようと人間の方がいくらもマシよ。これ以上失うものなどあたしには無いわ!」
猫はくるりと背を向けた。
「あたしを殺さないの!猫!」
「お前にかける牙は無い」
「・・・。」
あたしの牙が、鋭い爪が、猫を襲うのが見えた。
瞬間―――――
闇と光が同時に見えた。
眩しかった金色の目。
ぼんやりと血の流れているららしい感触がした。
床は心地よかった。
あたしの毛皮。
咽元が傷物になっちゃった、と思った。
とても幸せだった。
求めていたものが何だったのか分かった気がした。
~ ~ ~ 暗転 ~ ~ ~
カチ・・ジーピピピピピピピ。
11:00
デジタル表示。
あと1時間なのだ。この宇宙が変わるのは・・・。
あたしは、ほおずえをついた。
ハウスキーパーメカが、ティーカップを置いた。
スクリーンには星の海。
あたしは、尾っぽを触ろうとして少し笑った。
人間形態・・・。今、あたしは猫の姿をしていなかったのだ。
猫 ―――――
あの星々のどこにでも猫はいるのだろう。
旅猫以外は、その能力で高い地位について・・・・。
11:10
あと50分
人間どもが考えた、わけのわからぬ改革は、多分、猫の居場所をなくしてしまうだろう。
旅猫以外は・・・。
猫一族。
宇宙中で一番素晴らしい種。
あらゆる状況に順応し、メカを操り、世界を動かす力を持った超エリート。
宇宙を翔け、冒険を求め、野生の力を持つ自由な種。
11:20
あと40分
あたしのせいで、・・・多分、彼らは窮地に陥るのだろう。
でも、・・・・。かるく首を振る。
あたしは、あの夢が猫族の持つ力が見せた現実の世界なのか、あたし自身の心が見せた本当の想いなのかわからない。
いえ―――――― わかりすぎてる。 多分、両方なのだ。
人間どもの計画は失敗するだろう。そして―― 猫は、
それは、あたし自身の求めていることなのだ。
結局、あたしは猫。
誇り高い個人主義の猫。
猫は群れはなさない。そして・・・個で全体なのだ。
11:40
とても安らいでいた。あの夢の中で猫は幸せだった。
11:50
猫形態に戻ろう。
あたしは人間じゃない、猫なのだから。
0:00
あたし・・・猫に殺されたい。金の猫に・・・・。
Fin