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#7 未来に生きる人間たちにカップ焼きそばを作らせてみた ~パンドラクロス編~

今回の作品は『ときえん』シリーズ(http://ncode.syosetu.com/s7141c/)より。


今回の登場人物

・フィオナ

・イナーシャ

・ラファ

・セロン

・ウィル

・エリアス

・アリソン

 時は流れ、西暦3000年という未来の話――――。


 ある日、パンドラクロスの屋敷に大きなダンボール箱が2箱届いた。

 ウィルとエリアスはそのダンボール箱を1箱ずつ持ち、リビングまで運んでいる。


「ここでいいか?」

「うん」

「なんだ、コレは?」

「さぁ……」


 彼らはダンボール箱(それら)をテーブルの上に置いた。

 目の前に置かれたそのダンボール箱は見慣れない食べ物のような絵が描かれている。

 ウィルたちはそれを見ているだけで開こうとしない。

 その時、白衣を着た女性が彼らの近くを通りかかった。


「「ア、アリソンさん!」」

「ウィル、エリアス、どうしたの?」

「さっき、この段ボール箱が届いたのですが……」

「あー……それはねフィオナとイナーシャが実験か何かに使いたいって言っててね……」

「フィオナさんたちが!?」

「そう。詳しい話は本人たちに聞いてね」


 アリソンからそのような話を聞いたエリアスたちはフィオナの部屋に乗り込もうとインターホンを鳴らそうとしたが、偶然にも彼女とイナーシャが部屋(そこ)から出てきたところだった。


「フィオナさん!」

「イナーシャさん!」

「ん?」

「どうした?」


 彼女らはなぜ彼らが部屋の前にきているのか首を傾げながら立っている。


「もう! どうしたもこうしたもないですよ!」

「今すぐ、僕たちのあとについてきてください!」


 ウィルたちがフィオナたちの腕を掴み、例のダンボール箱が置いてあるリビングに誘導しようとした。

 彼女らは彼らから手を離し、エリアスたちが言いたいことを察したかのように、「もしかしたら……」「……届いたのか?」と問いかける。

 しかし、彼らは一体全体何が届いたのか分からず黙ったままきょとんとしていた。


「2人とも、何が届いたか分からないようだから、ついて行ってみるか」

「そうだね」


 フィオナたちは仕方なく、彼らの後について行く。

 リビングに着き、彼女らは例のダンボール箱を「「コレだ!」」と言いながら指をさした。


「フィオナさんたちはよく得体の知れないものを頼みましたね……」

「これは「得体の知れないもの(・・・・・・・・・)」ではない。「カップ焼きそば(・・・・・・・)」という今からずっと前から存在している食べ物だ!」

「それは美味しいんですか?」

「上手く作れれば美味しいらしい……」

「そもそも、イナーシャさんたちは「カップ焼きそば」を作ることができるんですか?」

「が、頑張れば……ねぇ、フィオナ?」

「う、うん……(きちんと作れるかは保証はできないが……)」


 エリアスたちの質問に淡々と答えていくフィオナたち。

 しかし、彼女らは最後の質問だけは曖昧な回答をするしかなかった。


「だったら、実際に作ってみればいいんじゃないですか?」

「僕も「カップ焼きそば」というものが美味しいかどうか確かめたいです」

「俺も!」

「私も!」

「セロン、ラファまで!」


 どこでその情報を聞きつけてきたのかは分からないが、ラファやセロンもリビングに集まってきてしまい、フィオナたちはカップ焼きそばを作らざるをえない状況に追い込まれる。


「そう言われてしまったら……」

「作ってみるしかないね……」


 彼女らはカッターナイフでダンボール箱を開け、人数分のカップ焼きそばを取り出した。

 それらのパッケージは2017年のものとは異なるものの作り方は変わらないはずだと思われる。


「さて、まずはお試しで作ってみようか」

「そうだね」


 イナーシャとフィオナはカップ焼きそばを1つずつ手に取り、他の4人は彼女らの様子をしばらく見守ることにした。



 ♪



「フィオナ……開かないけど……」

「私も……開かない……」


 彼女らはその蓋を開けようとしたが、フィルムがついているためなかなか開かない。

 2人とも同じような動きをしているため、他のメンバーの笑い声が耳に入ってくる。


「ち、ちょっと、笑わないで!」

「「ハイ……」」

「イナーシャ。もしかしたら、コレは透明なものに覆われているんじゃないのか?」


 フィオナは試しに自分が持っているカップ焼きそばのフィルムを剥がしてみた。

 それに習ってイナーシャもそのフィルムを剥がしてみる。


「あっ、剥がれた! コレが蓋みたいだね」

「なんか絵が描いてある……」


 フィルムを破がされたカップ焼きそばの蓋にはその作り方が絵と文で分かりやすく説明されていた。

 彼女らはその絵を見ながら蓋を開け、ぎこちない動きでかやくとソース、ふりかけを取り出す。


「他に袋はないよね?」

「多分……」


 彼女らは不安になり、何回も袋がないかを確認した。

 次に電子ケトルに水を入れ、湯を沸かす。

 湯が沸いたあと、彼女らはカップ焼きそばの容器に注ごうとした。


「ちょっと待った!」

「えっ!? 何!?」

「なんか足りなくないか?」

「そういえば……かやくを入れてないよ!」

「それがないと麺とふやかせるから硬いままじゃ……」

「今から入れても大丈夫かなー?」

「急いで入れれば大丈夫だと……」


 フィオナたちは焦りながら、その蓋を再度見る。

 どうやら彼女らはかやくを入れ忘れたようで、それを入れたあと湯を注ぎ、蓋を閉めた。

 フィオナとイナーシャは他のメンバーと話しながら麺やかやくがふやけるのを待つ――。



 ♪



 あれから、3分くらい経過した。


「もう大丈夫かな」

「そうだな」

「お湯を切らないとね」

「キッチンの方がよくないか?」

「うん」


 彼女らはその容器を両手でしっかり持ち、リビングからキッチンへ向かう。

 その時、ウィルたちもフィオナたちのあとに続き、キッチン(そこ)へ向かった。

 そして、2人は湯切りとして少し浮いていた部分を折り曲げ、同時に一気に湯をシンクに流す。


「「ボコボコボコボコ、うるさーい!」」


 彼女らは同時にこう言うと、アリソンが「水を流しながらやってみたら?」と声をかけてきた。


「今回は完全にお湯が切れたので……」

「次からやってみます……」

「うんうん。はじめて作ったんだから、失敗はつきものだよ。次から試してみてね」

「「ハイ!」」


 フィオナたちは反省しながら、リビングへ戻る。

 エリアスたちに続き、アリソンまでついてきた。


「あとはソースとふりかけを入れて混ぜ合わせるだけだから簡単だね」

「じゃあ、エリアスとウィルには荷物を受け取ったお礼として最初にあげよう」


 彼女らはウィルとエリアスにカップ焼きそばとフォーク、ふりかけとソースの袋を手渡す。


「いいんですか?」

「ありがとうございます!」

「えー……私には?」

「アリソンの分は次に作るから!」


 1番最初に受け取った彼らはソースを入れ、麺とソースをよく絡め、最後にふりかけをふりかけた。


「いい匂いだねー」

「美味しそう」

「「いただきまーす!」」


 ウィルたちが食べ始めた時、フィオナたちはそれを作るコツを見つけたらしく、自分たちの分を含めた残りのカップ焼きそばをキッチンで作り始めている。

 シンクをボコボコとした音を立てぬよう、水を流しながら湯を切り、約10分後にすべての工程を終えた。


「「お待たせー」」


 彼女らはカップ焼きそば(それら)を2台の荷台(ワゴン)に乗せ、リビングに戻ってきた頃には彼らはすでに食べ終わっていたようだ。


「待ってました!」

「イナーシャさん、お腹空きました……」

「今、分けるから待っててねー」


 イナーシャたちは1人ずつカップ焼きそばと小袋などを渡し、各自でソースとふりかけを混ぜ合わせる。


「「いただきます!」」

「お、美味しい!」

「はじめていただきました」

「ソースの匂いで食欲が増しますね」

「これがエリアスが言ってた「得体の知れないもの(・・・・・・・・・)」の味なんだね」

「ラファさん、それは失礼です!」

「本当のことだからいいじゃない」

「俺とエリアスは先に食べちゃったんですが、とても美味しかったです!」

「「ごちそうさまでした」」


 アリソンたちはカップ焼きそばを食した感想を漏らしていた。


「みんなに喜んでもらえてよかったね!」

「うん!」

「イナーシャ、ここからが実験(・・)の本番だからな……」

「そうだね」


 作った側の2人が言ったカップ焼きそばを使った実験とはどのようなものだったのかは別の話――――。

2017/08/19 本投稿

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