#3 カップ焼きそばの楽しい(?)作り方
「なぁなぁ。謎の中略ミサとキザ刑事ー。腹、減らないかー?」
ニャンニャン仮面がお腹を空かせていたらしく、「グー……」と鳴らしている。
「確かにお腹空いたわね」
「ボクも」
ミサとニャンニャン刑事も彼と同じことを口にした。
彼女は腕時計を見る。
今の時刻は12時30分を指していた。
「うーん……あるもので何か作りましょう」
「「さんせーい!」」
彼女らは台所らしきところに行き、冷蔵庫や床下収納の中に何か食べるものが存在するかどうかを一通り探してみた。
「ミサさん、変態仮面!」
ニャンニャン刑事はミサとニャンニャン仮面に声をかける。
「なんかあったのかぁ?」
「何々?」
「カップ焼きそばを見つけたんだ! しかも3個!」
彼(?)の手には少し大きめのビニール袋にカップ焼きそばが運よく3個入っていた。
それに気づいた彼女らは「「3個!?」」と驚いている。
「そうだよ。ミサさん、変態仮面、そして、ボク」
「ありがとう」
「どうも」
ニャンニャン刑事はビニール袋から1個ずつカップ焼きそばをミサ達に渡した。
それを受け取ったニャンニャン仮面は「本当だ。ぴったり3個だ!」と言い、鞘から刀を取り出す。
「さて、オレの華麗なる刀さばきをご覧あれ!」
シャキーン! シャッ、シャッ……! と手早く刀を動かすニャンニャン仮面。
こ、これでそのフィルム剥がしたと言えるのだろうか?
これでは、単に斬りつけたと言った方が妥当だと思われる。
「ちょっと、変態仮面! パックが傷ついているじゃない!」
彼のカップ焼きそばはフィルムはもちろんのこと、容器も傷ついており、それはほぼ使い物にならない。
「謎の中略ミサは焼きそばを食べたくないのか!? ならば、オレの華麗なる刀さばきでフィルムを剥がしてあげよう!」
「そんなことしなくても、自分でできるからいいわよ!」
「離せよー」
「あんたが離しなさいよー!」
ミサとニャンニャン仮面は彼女のカップ焼きそばを奪い合うように引っ張り合っている。
「まぁまぁ……2人ともお腹が空いてイライラしていると思うけど、落ち着こうよ」
「落ち着いていられないぞ!」
「落ち着いていられないわよ!」
ニャンニャン刑事が彼らをなだめるが、逆効果なのかもしれない。
彼(?)は溜め息をつき、その様子を見ながら、食器棚で何かを探している。
そうこうしている間にミサのカップ焼きそばのフィルムが剥がれ、少し騒ぎが落ち着いた。
「ニャンニャン刑事さん、フィルムを剥がしておいたからね」
「ありがとう。変態仮面はこれで勘弁しろ」
ニャンニャン刑事が彼に手渡したのは蓋つきの鍋。
彼(?)はいろいろと探した結果、その鍋しかカップ焼きそばの麺が入らないと判断したらしい。
「あっ、どうも……さて、気を取り直してカップ焼きそばを作るかぁ!」
「変態仮面は「鍋焼きそば」だけどね。やかんでお湯を沸かしてくるねー」
「ミサさん、ナイス!」
「謎の中略ミサといい、キザ刑事といい……」
ミサはやかんに水を入れ、ガスコンロで湯を沸かし始めた。
*
待っている間にミサとニャンニャン刑事は蓋を開け、かやくとソース、ふりかけの3つの小袋を取り出し、かやくはあらかじめ入れておく。
一方のニャンニャン仮面も彼女らと同じようにソースの小袋は無事ではあったが、かやくとふりかけは彼いわく「華麗なる刀さばき」によって開けられていた。
麺についてしまったふりかけを皿に取り、こちらも準備を終えた。
あとは3人揃って湯が沸くまでの間リビングで談笑をしながら待つ――。
*
あれから数分が経ち、やかんからシューシューと水蒸気が現れるようになり、ピーとリビングまで鳴り響いた。
「「お湯が沸けた!」」
「キッチンに行こう!」
彼女らはその音に反応し、キッチンに戻る。
「この線までかな?」
ミサがニャンニャン刑事に問いかけた。
「作り方を見たら、「線まで入れてください」って書いてあったよ?」
彼(?)はカップ焼きそばの蓋を見ながら答える。
一方のニャンニャン仮面は湯が自分のところまで回ってくるかどうか不安になりながら、彼女らを黙って見ていた。
「あっ、変態仮面。お湯が残ったからもしよかったらどうぞ」
「あ、ありがとう。意外と残ってるんだなー」
「やかんにお水を入れすぎちゃって……」
ミサとニャンニャン仮面はこう話しながら、やかんを彼に手渡す。
ニャンニャン仮面にとってはそれは意外とずっしりしており、重く感じたのだろう。
「俺も鍋だからどのくらい入れたらいいか分からないから適当に入れよう」
「やかんに入っている分は全部入れちゃっていいわよ!」
「ボクたちは必要な分だけ入れたからなー」
「謎の中略ミサにキザ刑事……最低でも麺が浸かるくらいまでは入れるぞ? いくらなんでもお湯の入れすぎはよくないから、残ったらわかめスープでも作ればいいと――」
彼が腕を組みながら納得したかのように言うが、その頃にはすでに湯は入れられ、ご丁寧に蓋まで閉められていた。
「って……さっきまで俺が語っていたはずなのに、すでに蓋が閉まっているぞ?」
「私じゃないわよー」
「ボクじゃないよー。透明人間が入れたんじゃないのか?」
怪しいと思ったニャンニャン仮面はミサ達の方を向く。
彼女らはよそ見をしながら答えた。
*
そうこうしている間にミサとニャンニャン刑事のカップ焼きそばの湯きりをしている。
彼女らは湯を入れて3分経ったのだろう。
「よし!」
「あとはソースとかを入れて混ぜれば完成ね!」
ミサ達はソースなどの小袋と割り箸を持ち、リビングに行った。
「もうそろそろ、オレの「鍋焼きそば」が完成するぞー」
「テンションを上げて完成させてねー」
「おう! テンションを上げて作り終わらせるぞー!」
ニャンニャン仮面は両手に鍋つかみを着け、鍋の蓋を少し開ける。
ここからが1番難しいところである湯きり。
彼は麺が流し台に出ないよう、少しずつ湯を切っていく。
鍋に入っているのはパスタやうどん、蕎麦ではなく、本来はパックで作る「カップ焼きそば」の麺だ。
これは重要事項である。
「むむっ……難しいなぁ……」
ニャンニャン仮面は鍋の中の湯の量を見ながら湯をきっていく――。
「鍋が軽くなったから、これでお湯が切れたな! よし、仕上げだ!」
彼はミサ達に遅ればせながら、割り箸などを持ち、リビングに向かった。
「完成したぞー!」
「「お疲れ様!」」
ニャンニャン仮面がきた時には彼女らのカップ焼きそばは食べ終わっており、彼の「カップ焼きそば」ならぬ、「鍋焼きそば」がどうなっているかをニヤニヤしながら待っている。
「なんだよ? ニヤニヤして気持ち悪いぞ……」
「なんとなくねぇ……」
「楽しみなんだよな……」
「なんか不気味だけどな」
彼はいそいそとソースとふりかけを麺に絡め、1口食べ――。
「麺が延びて美味しくない……」
「最初に素直にフィルムを剥がせばよかったのに……」
「だよな……」
結論。
カップ焼きそばのフィルムは刀で斬りつけず、素直に剥がす。
パックではなく、鍋で作られた「カップ焼きそば」ならぬ、「鍋焼きそば」は麺が延びてしまい、美味しくない。
その2点が実証されたカオスな作り方であった。
2017/02/11 本投稿