表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

#2 電子ケトル VS 理科の実験器具 ~料理は実験だ!~

今回の作品は『ふしがく』シリーズ(http://ncode.syosetu.com/s2604c/)より。


今回の登場人物

春原(はるはら) 美沙(みさ)

秋山(あきやま) 和也(かずや)

今田(いまい) 有里子(ゆりこ)

渡辺(わたなべ) うらら

大島(おおしま) 倖也(ゆきや)

柴山(しばやま) 雄貴(ゆうき)


全員、高校の先生です。


※ この実験は作者が実際に実験したものではありませんので、ご了承くださいませ。

 ここはとある高校の職員室。


 その扉には『テスト問題作成中のため、生徒の出入りはできる限り控えてください』という紙が貼ってある。


 カタカタ、カタカタ……。

 カリカリ、カリカリ……。

 その空間は時々、くしゃみや鼻をかむ音以外はパソコンのキーボードを叩く音や何かをメモを取っている音しか聞こえてこない。


 中間テストの問題を作成するために何人かの先生達が集っていたのだ。


「テストが終わったら採点かぁ……」

「テスト問題を作ることも大変なのにね」


 今田とうららが完成したテスト問題の見直しをしながら話している。

 その時、「うらら先生!」と1人の男性が彼女に声をかけてきた。


「リスニング問題の録音が終わりました!」

「本当ですか? 大島先生、すみません。本来は出題者である私が録音する予定だったのに……くしゅんっ!」

「いえいえ、とんでもないですよ」


 うららが机の上に置いてあるボックスティッシュに手を伸ばす。

「うらら先生、大丈夫?」


 たまたま通りかかった春原が彼女に話しかける。


「たまちゃん、ちょっと鼻が辛い……」

「ずっと、くしゃみとか鼻をかんでたからね……」

「うん。ティッシュがあっという間になくなっちゃうよ……」

「それに……おなか空いたかも。まさかここまで時間がかかるとは思わなかったから、ご飯準備してなかった。少し辛いかも……」

「なら、化学室でインスタント食品でも食べる?」


 今田が呟くと、春原が彼女に問いかけた。


「うん。でも、食べたものはちゃんと同じものを買って返すよ」

「私も……鼻が詰まって食べ物の味が分からないけど、ご飯が食べたい」

「よし、化学室に行こう」



 *



 場所は変わり、化学室。

 春原や今田、うららはもちろんのこと、コンビニ弁当を持ってきていた秋山や何人かも一緒についてきたようだ。


「さて、どれがいい?」


 春原は生物準備室からインスタント食品がいくつか入ったビニール袋を化学室に持ってくる。

 カップ焼きそばやラーメンなどメーカーは異なるが、様々な味がある。


「私は焼きそばにしようかな?」

「さっすがたまちゃん、分かってるね! 私も、そのカップ焼きそば、美味しいよね!」

「私はこのラーメンにしよう」


 春原と今田はカップ焼きそば、うららはラーメンを選んだ。


 一方の秋山達は「これから何が始まるのだろうか……」と思いながら、持参してきたコンビニ弁当や手作り弁当をパクつき始めていた。


「まずはお湯を沸かそう!」


 春原が出したのはマッチといくつかのアルコールランプとビーカー。


「アルコールランプだぁ!」

「懐かしい!」


 ビーカーとアルコールランプの段階でカオスな匂いがしてくる予感が――。


 水道水を必要な分だけビーカーに入れ、マッチに火をアルコールランプにつけた。

 スタンドの高さを微調整しながらそこに当てるようにする。


 その間に彼女らはフィルムを破き、蓋を開けるとソースとふりかけの小袋があり、それらは机の上に置く。

 かやくはすでに麺に絡んであった。


「このメーカーは珍しいですね」

「はじめて見ました」


 秋山と大島がそう言うと、春原と今田が楽しそうに「かやくの袋がないからお湯が沸けばすぐに入れられるしね」と答える。


 しかし、まだ湯は沸かない。

 春原は温度計を見ながらアルコールランプの火加減を調節している。


「これって、すぐに沸かないパターンですかね……」

「素直にやかんでお湯を沸かした方が早いような気がするけど……」

「大島先生、秋山先生、甘いね! 料理は実験だよ!」


 彼女はその火加減を見ながら、彼らの額に割り箸でデコピンを打つ。


「「イタッ!」」


 2人は額を撫でながらその様子を見ていた。


「俺は普通に作るから、どっちが早くカップ焼きそばを完成させられるか勝負しませんか?」


 柴山が職員室から電子ケトルを持ち込み、春原達と同じメーカーのカップ焼きそばを作り始めた。



 *



 あれから数分後……。

 柴山が準備した電子ケトルから湯気が出てきて沸いたみたいだ。

 しかし、春原達のビーカーに入っている水は少しだけポコポコと下の方に泡があるだけ。


 彼は必要な分だけお湯を容器に入れ、タイマーを3分にセットし、待っている。


 一方の彼女らはそのうちの何個かのビーカーがようやく沸騰したようだ。

 そして、必要な分のお湯を容器に注ぐ。


「今入れたものは今田先生が食べていいからね」

「ありがとう!」


 彼女らが話している時に、普通に作っていた柴山がセットしたタイマーが鳴った。


「おっ、できた!」

「柴山先生、タイマーを貸してください」

「どうぞ」


 今田がタイマーをセットし、待ち始めた。

 柴山は湯切り口のフィルムを外し、シンクを「ボコッ」と言わせながら、しっかりと湯を切り、ソースとふりかけを麺に絡めていく……。


「完成!」

「えっ!? 私は湯切りの段階ですよ!?」


 彼の作った普通に作ったカップ焼きそばが先に完成し、その数分くらい経ったあと、今田のその焼きそばが完成した。


 春原は今、うららのカップラーメンに同じようにアルコールランプで沸かした湯を注ぎ、タイマーをセットしている。


 よって、「普通に作ったカップ焼きそば」は「理科の実験器具を使って作ったカップ焼きそば」よりスピーディーに完成することが判明。


「同じカップ焼きそばなのに、使うものによってはこんなに時間がかかるんですね」

「柴山先生、食べ比べてもいいですか?」

「……いいですよー。俺も今田先生の1口いただいてもいいですか?」

「どうぞー」


 2人でそれらを食べ比べる。


「柴山先生の美味しい」

「今田先生のは少し硬さが……」


 柴山が言うには麺の硬さは若干違うらしい。

 しかし、彼女はおなかが空いていたせいか、普通に食べ終えていた。


 「電子ケトル」と「理科の実験器具」によるカオスな料理バトル(?)が終了。


 彼女らの中間テストの準備の様子をお送りしました。

2016/10/23 本投稿

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ