#13 俺の小さくなった彼女と一緒にカップ焼きそばを作ってみた
今回の作品は『短編集(https://ncode.syosetu.com/s4274c/)』の『俺の彼女が小さくなって俺のところにやってきた(https://ncode.syosetu.com/n9205cr/)』より。
・菅井 拓真
・小川 澪
この話は期末テストまであと1週間を切ったある日の日曜日の話である。
少年は物理の教科書とノートを広げていた。
ルーズリーフには文字が1文字ずつ書かれていくが、実際には少年が書いている訳ではない。
その文字はシャープペンシルよりも小さくなった少女が全身を使って書かれたものである。
「ねぇねぇ、拓真ー」
「澪、どうした?」
澪と呼ばれた小さくなった少女は拓真と呼ばれた少年に「お腹空いたー……」とシャープペンシルとともに見渡す限り真っ白なルーズリーフの上にパタッと倒れた。
彼の机の上にある置き時計は12時を少し回っている。
「勉強を止めて、昼飯でも食べるか?」
「うん! でも、この問題はあと少しで終わるから待ってて」
「分かった」
澪は途中まで解いた回答をシャープペンシルで指し示し、「うんしょ」と立ち上がり、それを立て全身を使って頑張って文字をつづっているため、意外と時間がかかる。
拓真は彼女のその大変さは分かっていたのだ。
「よし、解き終わった!」
「答え合わせは昼飯のあとにしようか? 澪はずっと腹の虫を鳴かせてたからな」
約10分くらい経ったあと、彼女は問題を解き終え、彼はルーズリーフを教科書に挟むようにして閉じる。
「じゃあ、キッチンに行こう!」
「ところで、今日は拓真のお父さんとお母さんはいないの?」
「今日は2人とも出かけてるから家には俺と澪しかいないんだ」
「2人きりだね!」
「そうだな」
彼らは部屋から出、話しながら階段を下り、キッチンへ向かった。
「今日は何にするの?」
「テストが近いからサッと食べられるものがあればいいんだけど……」
誰もいないキッチンに着いた2人は澪を広い調理スペースにちょこんと座らせ、拓真は冷凍庫をガサガサと探し出すが、冷凍食品は弁当用のおかずくらいしか入っていない。
今度は床下収納に何か入っていないかを探し始めると、幸いにもカップ焼きそばが入った箱が1箱入っていたのだ。
「私、そのメーカーのカップ焼きそばが好きなの!」
「それは奇遇だな。うちの母親がこれの味が好きらしくて、物心がついた頃からずっと食べてる」
「わーい、拓真と同じカップ焼きそばが食べられる!」
「じゃあ、それでも食べるか?」
「うん! 1個は食べられないけどね」
彼らのカップ焼きそばの好みはまさかの一致。
2人で仲よくそれを作るということで話がまとまった。
*
澪は拓真にハサミで切り込みを入れてもらいながら、大きなカップ焼きそばのフィルムを豪快に剥がす。
彼はやかんに水道水を入れ、ガスコンロで湯を沸かしている間にその蓋を開け、ソースとふりかけ、かやくの袋を取り出し、その袋にも切り込みを入れた。
「かやくの袋は開いてるから、こぼさないで入れてな」
「拓真ー……ちゃんと入ってるか見ててね!」
彼女は両腕でかやくの袋をしっかり掴むと、拓真の腕をスロープのように少しふらつきながら上っていく。
彼は澪が自分の腕にいるため、くすぐったく感じながらも「もう少し右」と指示を出した。
「ここ?」
「ああ」
ようやく彼女の位置が定まり、かやくをドサッと容器に入れる。
澪は「疲れた」と拓真にその袋を渡し、よたよたと腕から下りていくと、ひんやりする調理スペースに突っ伏した。
彼はかやくの袋を確認し、フィルムとともにゴミ箱に捨てると同時に湯が沸いたようだ。
「熱いお湯が沸いたから、ちょっと動かすぞ」
「ふぇ!? もう!?」
拓真が調理スペースでボヘッとしている彼女を左手でそっと摘み、蛇口の上に移動し、カップ焼きそばの容器に必要な分の湯を注ぐ。
彼はズボンのポケットからスマートフォンを取り出し、アラームを設定した。
*
あれから3分経過し、拓真のスマートフォンのアラームが台所に響き渡る。
「アラームがなったから、お湯を切らないとな……」
「そうだね」
彼はそれを止め、彼女を再び調理スペースに移動させ、湯切りの爪を立て、シンクからポコッと音を立てながら湯を切った。
最後にソースをしっかりと麺に絡ませ、ふりかけをかける。
「よし、完成だ!」
「やったね!」
こうして、2人で作ったカップ焼きそばは完成した。
拓真は澪の分として細かく切り、玩具の茶碗とフォークを洗い、その中に焼きそばを入れる。
「どうぞ」
「拓真、ありがとう!」
「じゃあ、食べようか」
「うん!」
「「いただきます!」」
小さくなった彼女と少年のカップ焼きそばを食べ終え、後片付けを終えたあと、テスト勉強を再開するのであった。
次回はついに最終話です。(本当ですよ!)
2017/11/12 本投稿




