#10 彼らにカップ焼きそばを作らせたらこうなった
今回の作品は『キケサバ』シリーズ(http://ncode.syosetu.com/s8255d/)より。
今回の登場人物
・アスタキ・コンドロイ
・ヴィンセント・ミッドフォード
・イルザ・アナフェローズ
ここは魔界裁判所――。
アスタキは荷台に電子ケトルと数種類のカップ焼きそばを乗せ、ある部屋に向かっている。
彼は部屋の前に着き、その扉を軽く叩いた。
「イルザくんかヴィンセントくん、どちらかいるかい?」
その向こう側から「「ハイ」」と2人の声がしたため、アスタキは部屋に入ろうとドアノブに手をかけようとした時、それが突然回り、扉が開く。
「コンドロイ裁判所長、どうされたのですか?」
「イルザくん、まずは部屋に入らせてくれ……」
「わ、分かりました」
部屋から出てきたのはイルザと呼ばれた女性。
彼がそこに着いた頃にはたくさんの裁判官や探偵が通行していたため、混雑しているのだ。
彼女は彼が押してきた荷台を見て、これから何が始まるのか不審に思っていた。
†
部屋の中は書類がごった返しており、そこにいる男性が片付けている。
イルザがアスタキを迎えた時にはその片付けは一段落していた。
「イルザ探偵……アスタキ所長がなん、だって……!?」
「ああ……コンドロイ裁判所長が得体の知れないものを持ってきたのさ」
「ヴィンセントくん、驚かせてすまないな。イルザくんったら……」
「そうではないですか? 私達にとっては、得体の知れないものなのですから」
彼女が「カップ焼きそば=得体の知れないもの」扱いにしている中、ヴィンセントと呼ばれた男性が荷台に載っているものを見て驚いている。
「まぁ、そうなんだがな……コレはカップ焼きそばというものらしい」
「カップ焼きそば……?」
「はじめて聞きますね……」
「それでなぜこちらにカップ焼きそばが?」
「イルザくんは察しが利くな」
「もしかして……」
ヴィンセントが「それを俺達が作れというわけですか?」と彼に問いかけた。
アスタキの答えは「その通りだ!」と答える。
そのような流れでヴィンセントとイルザはカップ焼きそばを作ることになったのだ。
当の本人達はカップ焼きそばを見たことがなければ、作ったこともない。
彼らは内心、彼に対して苛立ちを覚え始めていたが、それを作らざるを得ない状況だったのだ。
「まずはこのツルツルしてるやつを剥がした方がいいですかね……」
「そうだな……」
ヴィンセント達は何種類かあるカップ焼きそばの中から1つずつ選び、フィルムを剥がす。
蓋を開ける前に作り方が書いてあるかを確認。
「「作り方が書いてあった!」」
「あれ?」
「パッケージとか違いませんか?」
しかし、2人はその蓋を開けたら異なることがあった。
彼らが選んだものはカップ焼きそばのパッケージも作り方も異なる。
「本当だ。それぞれ作り方を見て作らなければな」
「そうですね……」
イルザはソースとふりかけの小袋を出したら、麺とかやくが混ざっているもの。
一方のヴィンセントはかやくもすべて小袋に入っているものだった。
彼は溜め息をつき、かやくを小袋を開け、その容器に入れる。
「あとはここにある電子ケトルでお湯を沸かしましょうか」
「それまで仕事か……」
「この裁判は明日当たりでも判決を下しますか?」
「私次第だな」
「ですね。もうそろそろお湯が沸きそう……」
ヴィンセントが言いかけた瞬間、電子ケトルから水蒸気が噴き出していた。
彼らはカップ焼きそばの容器に必要量の湯を入れる。
「何分だっけ?」
「3分ですね」
「私のものも3分だ」
タイマーを3分にセットし、その間も彼らは仕事を再開。
あれから3分経過し、タイマーからアラーム音が流れた。
「何気に早いな」
「3分ってあっという間ですね」
「お湯を切らなければな」
「ハイ」
イルザがタイマーを止め、2人仲よくキッチンへ向かう。
彼らは自分のカップ焼きそばの蓋を見た。
彼は湯切りの溝を立て、彼女は湯切り用のフィルムを剥がす。
よって、湯切りも全く異なるのが分かる。
「念のために水を流しながらお湯を切らないか?」
「それはなぜ?」
「シンクをダメにしたくはないからな。い、一応、私の部屋だから……」
「分かりました。一気にお湯を切りますか」
「う、うん」
彼らは蛇口から水を出し、蓋をしっかり押さえ、湯を切る。
次の瞬間、ボトッと音を立てて何か出てきていた。
「あああ……麺が……」
「どんまい、ミッドフォード裁判官」
ヴィンセントのカップ焼きそばの蓋がきちんと閉まっていなかったせいか、容器から3分の1くらいの麺がシンクに落ちている。
「イルザ探偵、あとでその麺を捨てておきます……」
「んー。分かった」
彼らはその容器に麺とソースを絡め、ふりかけをかけ入れた。
「やっとできましたね……」
「ようやくな……」
ヴィンセントとイルザのカップ焼きそばづくりは終了したのであった。
†
「ところで、イルザ探偵?」
「ん?」
「俺達が作ったカップ焼きそばは誰が食べるんですかね……?」
「確かに……私達は悪魔だから、食事は必要としないしな……」
「作者に渡すしか……」
※ ヴィンセント達が作ったカップ焼きそばは作者側で少しずつ美味しくいただきました。
2017/08/27 本投稿
2017/08/27 「前書き欄」追記




