#1 タイマーの電池が切れてしまった!
今回の作品は『ふしがく』シリーズ(http://ncode.syosetu.com/s2604c/)より。
今回の登場人物
・夏川 紫苑
・桐山崇史
・紫苑の母親
10月某日、夏川家にて。
紫苑は崇史を彼女の家に招き、中間テストの勉強をしていた。
「ねぇ、崇史。この問題が分からないんだけど、教えてくれない?」
紫苑が崇史に問いかける。
彼は「どの問題?」と訊き、彼女は分からない問題を指差した。
「どれどれ……。あぁ、この問題はね……」
彼は自分のノートに問題と同じ図を描いている時に「グー」とお腹が鳴る。
「崇史、おなか空いてるの?」
「あぁ、少し小腹が空いてる」
「キッチンに行けば、チョコがあるけど……」
紫苑は自分のマグカップに手を添え、ココアを1口飲んだ。
その時、階段を上る音が徐々に彼女らのいる部屋に近づいてくる。
「紫苑ー」
紫苑の母親が彼女の部屋にノックをせずに入ってきた。
「ちょっと、お母さん! ノックくらいしてよ! びっくりするじゃん!」
紫苑は不満そうに言う。
「崇史くんも驚かせてごめんなさいね」
「とんでもないです」
「お母さんは今から出かけるから、お昼は適当に食べてねー」
母親はそう告げると、彼女は「んー。分かったー」と適当に答え、速やかに出て行った。
*
現在の時刻は11時30分。
紫苑達はシャーペンを置き、顔を上げた。
「そろそろ、お昼にしない?」
「そうだな。さっきから腹がグーグー鳴ってるからな」
「キッチンに行って、なんか探そうか」
「もし、何もなかったらコンビニ弁当でも外食でもいいしな」
「私達のご飯、何かありますように!」
彼女らは床から立ち上がり、キッチンに向かう。
床下収納や戸棚などをガサガサ探し、カップ焼きそばが運よく2つ見つかった。
「崇史ー、カップ焼きそばしかなかった」
「それでいいや」
「一緒に作っちゃうねー」
「あぁ」
崇史はリビングのソファーに腰かけて新聞を読んでいたのであった。
一方、キッチンにいる紫苑はやかんにポットに入っている温くなりかけた水を入れ、ガステーブルで湯を沸かす。
湯を沸かしている間にカップ焼きそばに包まれているフィルムを破り、蓋を開けた。
その中にはかやく、ソース、ふりかけの3袋が現れた。
彼女は両方の容器にかやくを入れる。
残りの2袋は別のところに置いておいた。
「これで準備OK!」
紫苑は崇史がいるリビングに向かおうとした時に沸騰している音が聞こえてくる。
彼女は湧いた湯を容器に必要な量を入れ、3分間という短い待ち時間。
紫苑はタイマーをセットし、やかんに汲んである湯をポットに入れ、リビングに向かった。
*
「あれ?」
「どうしたの?」
先ほど、タイマーをセットしたはずなのに、一向に鳴る気配がない。
「さっき、タイマーをセットしたはずなのに、鳴らないからさぁ……」
「もうそろそろじゃないのか?」
「固かったり、軟らかすぎだったりしたらどうしよう」
「その時はその時さ」
「そうだね」
紫苑はキッチンに戻ると……。
「キャーッ! タイマーの電池が切れてた!」
彼女がタイマーをセットした時は正常に作動していたが、いつの間にかその電池が切れていたのだ。
「どんまい」
「……ううーっ……」
紫苑はなくなく、湯切り口の穴を開ける。
シンクを傷めないように、冷水を流しながら湯を切った。
冷蔵庫から烏龍茶を透明のコップに注ぎ、に容器と小袋、割り箸を乗せたおぼんと一緒にセットする。
「お待たせ。やらかしちゃった」
「タイマーの電池が切れちゃったんだからしょうがないよ」
テーブルにそのお盆を置き、彼らは蓋を開け、ソースをよく絡め、ふりかけをかけた。
「食べようか?」
「……うん……」
「「いただきます」」
彼女らは一斉にカップ焼きそばを1口食べる。
「麺が延びちゃったな」
「そうだね。でも、味は変わらないよ」
「言われてみればそうだよな! これ食べたら、勉強を頑張ろうな!」
「んー!」
彼らはあのあと約3時間くらいテスト勉強をしたのであった。
2016/10/16 本投稿
2016/10/23 前書きに作品名(シリーズ名)の記載