補助学生
処女作です!
一応バトル×ラブコメの予定です!
自分が生きているこの世界はとても不平等である。
誰しも一度は考えたことがあるのではなかろうか?
あいつは賢くて運動ができてモテる。
あの子は可愛くて性格が良くて人気者。
それに比べて……
それに比べて自分はなんなんだと……
本当に嫌になる。
「おい、聞いているのか!」
「は、はい!」
「まったく、お前だけだぞ!数学の赤点は!
まぁ ギリギリ赤点だから一度くらいなら目をつむってやるが、お前前回の中間テストもギリギリ赤点だったよな
聞けば他の教科もギリギリ赤点越えるか越えないからしいじゃないか。
このままだと一年なのに留年何てことになりかねんぞ」
「はい……」
先程からありがたい説教をしてくれているのは、数学教師兼我がクラスの担任 獅子道 剛 (ししどう たけし)先生である。
数学教師なのにバリバリの体育会系で細マッチョである。
そして、さっきから生返事を繰り返しているのが自分 葉原井 上神 (はばらい かずわ)である。
こちらは中肉中背 残念ながら彼のような細マッチョには遠い…… 部活はやっているのだが先生ほどのキレイな筋肉にはなかなかたどり着けない。とりあえず在学中は無理だろう。
「技能の試験なんて5点ってなんだよ5点って
どうしたらこうなる。一年初めのテストだぞ!
適当にやっても30は越えるだろう。
まぁ こればっかりは能力の差もあるが……」
技能とは今より数百年前より人間に突如現れた不思議な能力で今では日本社会には必要不可欠なものである。
大昔ではこれを「超能力」だとか「魔法」と呼んでいたらしい。
「普通、技能は中学のうちにある程度身に付いて最低でもランクE-は越えるはずなんだが……毎年数名いるんだよなぁ まったく発動できない生徒が」
そう僕がこんなに怒られているが他にも数名いるのである。
だが僕のクラスは僕一人……悲しい。
「ほれ、ダイヤのエースを選べ。」
「はい?」
獅子道先生はそう一言言うと机の上にトランプを5枚並べた。
僕は一瞬なんのことかわからず間抜けな返事をした。
「中学の時やったろ?一枚選んで当てるやつだよ。さすがに5枚ははずさんだろ。」
獅子道先生は軽くイラついた感じでせかす。
「あ、あぁ…技能を使えってことですね。」
先生は無言で頷き、僕は手のひらをトランプの上にかざし……叫ぶ。
「うぉあああああぁぁぁ!!!!」
あまりの叫びに獅子道先生も若干引く。引かないでお願い。
こうでもしないと自分の能力がでないのだ。
「これだっ!!!」
「……あー……これは5点だ」
先生は残念そうな目で僕のめくったハートの3を見てあきれる。
本来高校生ならジョーカー抜きの52枚のトランプから一枚のカードを技能を使って引き当てるなんて雑作もないはずだ。
しばらくの沈黙の後先生は僕に数学の課題を出し会議があると言って職員室を後にした。
落ち込んでおぼつかない足取りで下校するためにし一階の職員室から下駄箱に行くと、そこには我が親友 只中 翔太が待っていた。
「おぉ! 翔太よ!まっていてくれたのか!
持つべきものは親友だべ!」
僕が小走りで近づくと、翔太は爽やかなスマイルで迎えてくれた。
「調子いいな~まったく」
この只中 翔太 イケメンである。イケメンなのである。
軽くパーマのかかった茶髪で外国人のように鼻が高く小顔である。
そして、顔がいいだけではない、中身もイケメンなのである。
今日もおそらく誰かしらの女子に帰りを誘われたが「友人を待ってるんだ。今度一緒に帰ろうね」と僕の好感度を上げつつ、女子へのアフターケアもおこなっているのだろう。いや、憶測でしかないが……
「上神が来るまで大変だったんだよ~
B組の佐藤さんが一緒に帰ろうって誘ってくれたんだけど上神をほっとけないから断っちゃって。
それで泣きそうになっちゃったから今度一緒に帰ろうねって約束しちゃったよ。僕女の子苦手なんだけどな~」
腹立たしい。予想通りで実に腹立たしい。
しかし、女より友情を選んでくれてちょっと嬉しい。僕、チョロいなー。
僕と翔太は学校指定の寮に住んでいる。この寮は男子寮ではあるが女子が入っても問題ない。まぁ、僕の部屋に女子が訪れる予定はないのだが……
「で?今日は何で起こられてたの?」
ちょっと心配そうな表情で僕の顔を見る翔太。
本当にいいやつだな、お前。
「いやー、テストの点数がひどくてさー。
数学赤点だってよ。
技能に関しては5点だわ」
冗談混じりに僕が言うと翔太は呆れた顔つきで「はぁ……」と深いため息をついた。
「上神、このままじゃ留年しちゃうよ?まだ一年生なのに……」
翔太は僕の事を心底心配してくれているのだろう。
「情けない限りです……」
本当に情けない。
しばらく寮への帰り道を無言で歩いていると、翔太が名案を思い付いたように手を叩く。
「そうだ!補助学生に申し込もう!」
「補助学生?なにそれ?」
「上神、ちゃんと入学式の時配られたプリントみた?」
「………………それなりには……」
「ほとんど見てないんだね?
「い、いや!見てない事は……無いことも無いといいますか……」
翔太はまた呆れた顔でため息をつき、上神を見て強い口調で言う
「見てないだね」
「はい」
こう言うときの翔太の顔は本当に怖い。しぶしぶ僕は頷いた
。
「まったく……補助学生って言うのは、技能や学業に余裕のある上級生が下級生の家庭教師をする制度だよ。
まぁ お金は少しかかるけど上神バイトしてるから大丈夫でしょ。」
「うぅ……まぁ、できなくはないけど……」
「お金貯めて遊びたいのはわかるけどそんなこと言ってられない状況なんだよ?わかってる?」
翔太はどんどん僕をおいつめる。
「うへぇ……はい……」
折れた。
「はい!決まり!早速部屋に帰ったら申請だ!」
「おー……」
翔太は昔から大人しそうな顔をしているのに行動力がある。
おそらく、そのまま僕の部屋に来てすぐにでも作業を始めるのだろう。
しかし、上級生が家庭教師をするって当たりはずれがあるのでは無かろうか。まぁ、今の翔太に何を言っても正論で返されそうなので大人しく従っておこう。変な人がきたらやだなー。
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