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俺達と彼女の12ヶ月  作者: 徒花 紅兎
3月~The last month~
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お縛りと馬鹿力と瓦礫

朱鷺が物体を放り投げる。

それは一瞬で破裂し、白煙が広がった。


「逃げるぞ!!」


藤と北斗を引っ張って出口に出ようとした。

だが、


「どこに行くんです?朱鷺姉さん?」

「「!?」」

「ちっ!」


突如現れた男に朱鷺は蹴りを繰り出すが、

彼は両腕で受け止める。

だが、朱鷺は器用に飛んでもう片方の足で蹴り飛ばす。


「うっはー♪流石♪

 相変わらずきっつい一撃っスね♪」


男は笑ってすぐに態勢を立て直し、笑顔で言う。


「朱鷺姉さん、痺れるぅ♪」

八馬弦(やまづる)!」

「久しぶりの再会なんですからハグぐらいさせてくださいよ!」

「なんで、あんたの周りってこう…、」

「変なのが多いというか…、」

「優李の下僕だ!あの男が関わると、」


「俺が何だ?」


背後から拳が飛んでくる。

朱鷺は体を回転させ、受け流したつもりだったが、

すぐに次の手が伸びてきた。

それを何とか受け止める。


「しつこいぞ!優李!」

「この程度で逃げるつもりか、愚か者。」


何度も優李に反撃を繰り出すが、彼は完璧に防ぐ。


「いい加減くたばれ!」

「誰がお前に教えたと思っている?」


2人の攻防を見ていた藤と北斗だが、

八馬弦が伸びをしながら暢気に話す。


「俺ってあんまり難しいことわかんないんだけど、

 とりあえず、あんたらを確保すりゃいいんっスかね?」


笑みを浮かべるが、目が笑っていない。

八馬弦は縛るためのロープらしきものを取り出して言った。


「さぁて、お縛りの時間といきましょうか、ね?」

『『色んな意味でやばい奴だよな!!』』


「下がって、藤!」

「あ、無駄っスよ?あんたが優李さんに教えてもらったのって、

 “逃げる”ための護身術でしょ?」


八馬弦はゆっくりと2人に近づく。


「俺らが培ってきたのは“倒す”ための武術。」


構える八馬弦。


「“攻撃は最大の防御なり”っスね。」


彼が一歩を踏み出した瞬間だった。


「“守りは朱鷺さんの十八番”ですよ!!!」


八馬弦の動きを止めるように飛び出してきた清理。


「うわぁ、あんたも久しぶりだね♪せーちゃん!」

「相変わらずの気色悪さですね!八馬弦さん!!」

「ホント、あんたらって刺激的だわぁ。」


上から下に拳をめいいっぱい叩きつけられる。

清理は寸前のところで交わし、

藤と北斗の近くに寄る。

叩きつけられた床は見事に凹んでいた。


「相変わらずの筋肉馬鹿なんですね、八馬弦さん。」

「何、褒めてくれちゃって、最高だね、せーちゃん♪」


そんなやりとりを攻防しながら聞いていた朱鷺と優李。


「あんな部下を持ってお主も鼻が高いな。」

「お前、それは褒めていないだろう。」


優李の攻めに軽やかな身のこなしで避ける朱鷺。


「ちょこまかと…。」

「どうした優李?昔に比べてスピードが落ちたんじゃないのか?

 随分、老いたものだな、お主も。」

「お前も同じだけ歳をとっているはずなんだがな。」


朱鷺の蹴りを片手で受け止める。


「力の強さはお前には劣らんぞ。」

「下僕そろって力馬鹿が。」


そう言って朱鷺が手元に隠していた破裂弾を優李に投げつけ、

それと同時に優李から距離を取る。


「俺にその手は―――」

「清理!!!!!」


それを合図に清理も八馬弦から距離を取る。

離れながら朱鷺は呟いた。


「コード、“アイビス”」

「!?―――(やしろ)!!!」


優李は朱鷺の言葉に察知した。


「ワード、“ウォール”」

「避けろ!!!!!!」


朱鷺たちの前後を何本ものワイヤーが横から横へ突如出現した。

それは八馬弦と優李の前に立ちはだかる壁のように、

朱鷺たちへの道を分断した。


「わーお、朱鷺姉さん最高…。」

「音声認識………そんなものまで仕掛けていたか。」


朱鷺の声に反応し、決められた言葉で認識。

壁から自動でワイヤーの壁が出現された。


「出口は別にある、行くぞ!」

「これっていつぞやの特注のワイヤー?」

「あぁ、普通のは物じゃ切断できないってやつね…。」


朱鷺についていこうと進もうとした時だった。


それは一瞬。

風を切る音だけ。


優李側のワイヤーの壁が一筋で切れた。


「「「「!?」」」」


長くて美しい刀身。

それを片手に帝人は現れる。


「に、日本刀……。」


だが、朱鷺は焦ることなく、踵を力強く床に叩きつける。

床がめくれ上がると同時に、それも姿を現した。


「隠し持っていましたか、朱鷺。」


朱鷺も帝人と同じように日本刀を鞘から引き抜き、

帝人に斬りかかる。


「この国じゃあ、持ち歩くと問題がありますので!」


帝人の重い太刀筋に、素早い動きで受け流す。


「音声認識も、声が出せなければ造作も無い。

 社、何を遊んでいる。」

「はいはい。」


八馬弦の馬鹿力はワイヤーを力ずくで引っこ抜く。

朱鷺たちの前方には日本刀の帝人。

後方には武力の優李と八馬弦。


その時、北斗が呟く。


「この距離だ。」


その声に清理が朱鷺ときりあっている帝人に向けて、

破裂弾を投げた。


「そんなものは効かん!!」


打ち返そうと日本刀を横に斬りつける。

だが、そこで聞こえたのは、


藤の声だった。


「コード、“エウアケ・ナ・カエワ”」


優李はそれに気づき走り出すが遅かった。


「ワード、“カーロ”」


「帝人様!!」

「!?」


天井が崩れ落ちてくる。

彼らの視界は真っ暗な闇に閉ざされた。


*******************


数分後、瓦礫の中から優李が立ち上がる。

その視線の先にすでに瓦礫から抜け出していた帝人を見つけた。


「帝人様!!お怪我は!!」

「私を誰だと思っているんです?」

「失礼いたしました…朱鷺たちは……。」

「逃げられました。本当にあの子は………。」


八馬弦が瓦礫の中から出てくる。


「マジ朱鷺姉さん痺れる!!

 ここまで無茶苦茶する!?超たまんないんですけど!!!」


彼の様子を見て2人はため息を付いた。


「とりあえず、あの馬鹿を黙らせなさい。」

「………申し訳ございません。」


********************


その頃、朱鷺たちは車ですでに離れた場所にいた。


「遅れて申し訳ありません!」

「いや、いいタイミングだ、助かった白百合。

 だが、よく場所が分かったな。」

「野菊が外部との連絡をつないでくれて、

 繁牙様と連絡が取れたんです。

 場所を教えてくださったので、すぐにこちらに参りました。」

『野菊…成長したな。』


彼女の頑張りにほっとする。

助手席には清理、後部座席は朱鷺の両隣に藤と北斗が座っていた。

流石に疲れたのかぐったりしている。


朱鷺はおもむろに、藤と北斗それぞれの頭をしっかりと腕で抱き寄せた。


「ちょ、」

「荒方さん!」

「………巻き込んですまない。」


『『あ』』


藤と北斗の脳裏に映像が映し出される。


「息子たちを返して!!」


―――パンッパンッ


まだ生きていた頃の母の叫び声、そして、

2度の銃声ののち、白衣の男が膝から崩れ落ちる。


「母さん!何を!!」


小さい藤と北斗が駆け寄ろうとした時、

白衣の男は2人の頭を抱き寄せた。


「―――大丈夫、大丈夫だから。」


少し、掠れたその声は優しかった。

母親と遅れてやってきた父親は近くまで寄ってきて、彼の顔を見た。


「ごめんね、誤解をさせちゃったね。

 でも大丈夫。この子たちは心配ないから。」


少し、息切れがしていた。


「すぐに逃げたほうがいいんだけど、

 この子たちの記憶を消させてもらうね。

 何かの拍子で思い出しちゃうかもしれないけど。

 でも、たぶん、しばらくは大丈夫だから。」


彼は藤と北斗の顔を一度見て言う。


「ごめんね、怖いことは一度忘れてしまおうね。」


もう一度、2人を抱きしめる。


「僕のことは忘れてしまうけど、

 でも、これだけは忘れないでね。

 君たちは特別かもしれない、

 そのために苦しむかもしれない。

 でもね、君たちには君たちにしか出来ないことがあって、

 理解をしてくれる人はそんなにいないかもしれないけど、

 それでも、絶対に世界に君たちを本当に理解してくれる人はいるから。

 逆に君たちが理解してあげなきゃいけない人もいるかもしれないから。

 だから、どんなに苦しくても、寂しくても、辛くても、

 この世界のどこかにいる誰かのために、

 君たちの力を必要と待ってくれる人が必ずいるから、

 だから………諦めないで。苦しくても。絶対。」


そして、もう一度だけ顔を見た。


「僕は君たちの幸せを願っているからね。」


その優しくてたまらない笑顔。


それを最後に記憶は途絶えた。


何故だか、そのことを朱鷺には話せなかった。

そして、車を降りるまで、彼女の腕を振りほどけなかった。

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