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俺達と彼女の12ヶ月  作者: 徒花 紅兎
3月~The last month~
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研究と記憶と差し出す

「朱鷺、あの日に殺されたのは龍真だけではありません。

 君の実の父親である“荒方(あらかた) 剣臣(けんしん)”も、

 同じ場所であの2人に殺されているのです。」

「それとこの2人と何の関係があるのです?」


帝人は藤と北斗を見る。

彼の視線に優李も異変に気づき、口を開く。


「その2人はその現場にいたのだ。」

「「「!?」」」


朱鷺は藤と北斗を見つめるが2人とも困惑している。


「龍真に会ったことがあるのか!?」

「知らないんだよ!」

「どこの誰かもわからない!」

「30年ぐらい前の事だ!白衣で黒髪の男だ!」


そう言われても藤と北斗はお互いを見合い、

全く思い出せなかった。


『―――まさか、龍真っ』


朱鷺の頭に一つの仮定が生まれた。

たった一つの可能性。


「とぼけているわけでは無さそうですね…では、やはり。」


帝人はため息をついた。


「朱鷺、2人の両親が龍真達を殺めたことが問題ではありません。

 一番の問題はその2人が龍真達の“研究”に、

 関わっていたことが一番の問題なのですよ。」

「龍真の研究………。」

「龍真は君を研究所には近づけさせないようにしていましたからね、

 君は知ることが無かったのですが…。」


帝人は躊躇いながらも続けた。


「私は……龍真達が命を落としたことは正直自業自得だと思っています。」

「何故です?」

「あの子たちは、手を出してはならないものに手を出した。

 だからこそ、その業を背負うことになった。

 私はそう思っているのです。」

「龍真達が何に手を出したというのですか?」


朱鷺の問いに、答えたのは優李の方だった。


「“記憶の操作”だ。」


藤と北斗の心臓がどくんと高鳴った。

その言葉に何かが反応する。


「それはほとんど噂や伝説に過ぎないもので、

 現実に存在するかも怪しいものだった。

 だが、龍真達はそれを見つけたと情報が残っていた。

 “それ”を使うことによって、

 人の記憶を外から第三者が忘れさせたり、

 覚えさせたり、自由に操作をすることが出来ると言われている。」


「それが俺に聞いてきた“マザー”ってやつなの?」


北斗の問いに優李は「そうだ」と答えた。


「前も言ったけど、俺はそんなもの聞いたことも無い。藤は?」

「俺も全然覚えが無いよ。

 その龍真っていう白衣の人も会った記憶も無い……。」


「その記憶が無いのが何よりの証拠だ。

 あるはずのものが無くなっている、

 ましてや、お前の絶対記憶の中に残らないなどおかしな話だろう?

 つまり、お前たちの記憶は“マザー”によって消されている。」


言われればそうだが、実感のないものをどうしろというのだろうか。


「だからって、俺たちがどうなるわけでも、」

「先珠や周殿が欲しがったのは“マザー”システム。

 それの唯一の手掛かりがお前たちだということだ。

 もし、奴らの手にマザーシステムが渡ればどうなるか、

 あの中で生活をしていた貴様らになら予想が出来るだろう?」


全世界の人間の記憶を操作するだろう。

自分の思いのままに記憶を操り、

私利私欲の限りを尽くす。


「なんで俺たちがそのマザーシステムに関わったわけ?」

「それはわからんが…お前たちの異常な記憶力や計算力、

 そして洞察力というか、サイコメトリーにも近いメンタリズム。

 それが生まれ持った能力化は甚だ怪しいところではあるな。」

「それって、どういう…。」

「マザーシステムによって埋め込まれた能力という可能性だ。」

「そんなことが可能なの?」

「あくまで憶測だ。何せマザーシステムがどこにあるかもわかない。

 だが、その可能性を否定することは出来ない。

 貴様らのその出来のいい脳なら理解できるだろう?」


もし、知能の高い脳が作れるようなシステムならば、

そんなものが本当にあるのであれば、

誰もが欲してしまうだろう。


「私は…マザーシステムが争いの火種になるのを恐れているんですよ。」


帝人は静かに言った。


「人の記憶を操ったり、

 医療以外の事で脳を扱うなど…してはならない。

 そんな人外めいたことを人が許しては、

 人が人でなくなる。

 例え、生活が豊かになろうとも、

 どんなに超常的な能力を持とうとも、

 良からぬ想いを抱いて扱っていいものではない。」


ましてや、そのためにもうすでに2人の命が奪われ、

もう2人の命が亡くなった。


「親父殿、マザーシステムを見つけたらどうするおつもりですか?」


絶対に成さねばならない。

息子の後始末は必ずつける。


「破壊する。マザーシステムは存在してはならない。」


そして、それに関わる存在がある限り、

先珠や周殿のような人間が彼らを求めるだろう。


「だからこそ、2人を引き渡してもらう。

 どんな手を使ってでもマザーの痕跡を見つけ出す。

 二度と利用されぬように葬る。」

「それとこれとは別の話だ、親父殿。

 彼らはこの世界で生きている。

 その命や自由を奪うことが許されるとでも思うのか!?」

「ならば、君が守り抜きますか?一生をかけて。

 これから、先珠や周殿のような輩がマザーシステムのことをかぎつけて、

 ハイエナのように群がってくるかもしれません。

 今以上の苦戦を強いられるのは目に見えているのに、

 君は彼らを守り抜くというのですか?」


帝人は一呼吸おいて続けた。


「自分の存在を消そうとしている君が、守るというのですか?」


「「「!?」」」


藤、北斗、優李すらも驚いた。


「今回、どこの誰とも知れぬ輩が

 マザーシステムのデータにアクセスしたことで探すことにしましたが、

 そこでたまたま気が付きました。

 朱鷺、君は世界中の君自身のデータを消していますね?

 ありとあらゆる、情報も監視カメラのデータも。

 白菊でなければ見つけられなかったでしょう。」

「朱鷺、どういうことだ?」

「荒方さん?」

「今の話はどういうこと?」


彼らの問いに朱鷺はだんまりを決め込む。


「朱鷺………何故、話してくれないのですか?」

「それは………、」

「龍真を失い、君まで失えと君は私に言うつもりですか?」


帝人の表情に、朱鷺は苦しくなる。

徐々に会うことを減らしてきた。

いずれ、彼の前から完全に消え去るために。

どうしても、消えなければならない事情が出来た。

話せるものならとっくに話していた。


内ポケットに入れた手帳を服の上から触れる。


『それでも、私は―――』


顔をあげて、藤と北斗を見る。


テレビやイベント会場、その他多くの場所で見てきた。

彼らの姿に声にその全てを求める多くの存在。

笑っていてほしいと、笑顔でいてほしいと望む想いも。


多くの事で苦しんできたはずなのに。

彼らはずっと輝いていた。

その輝きが時に人の心の助けになることもあった。


朱鷺にとっても見たことのない世界の一つだった。

新鮮でどこか温かくて予想外で忙しくて。

そんな世界を、


『守りたいと思う。』


例え、それが自分にとっては悲しいことであっても、

隠したままでいたかったことであっても、


藤と北斗の笑顔が龍真を想う気持ちを思い出させてくれたから。


「親父殿、残念ながら藤と北斗は“マザー”とは関わっていない。」

「どういうことです?」

「龍真と関わっていたことが事実でも、

 マザーシステムとは一切の関わりがない。

 2人の記憶が無いのは、恐らく龍真が消した…というより、

 一種の暗示や催眠術みたいなもので、

 今は無いように見えるが、何かのきっかけで目覚めるものだと思う。」

「朱鷺、お前何を言っているんだ?」

「まさか、朱鷺、君は知っているのですか?」


真っ直ぐに帝人を見つめる朱鷺は答える。


「マザーを差し出します、だから2人に自由を与えて。」


その言葉に全員が言葉を失う。

だが、朱鷺は続けた。


「ただ、その前にやることがあるから」

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