表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺達と彼女の12ヶ月  作者: 徒花 紅兎
3月~The last month~
95/104

地平線と巻き込みたくないと嘘

三人の乗った車は街から随分と離れた場所までやってきた。

そこには建物らしきものはほとんどない。

しばらく森の中をひたすらに走っていた。

だが、突然視界が開ける。


広大な土地。

真っ直ぐに広がる地平線。


のどかな田舎に来たような錯覚にとらわれた。


やがて、大きな建物の前で車が止まる。


「ここは何なの?」

「飛行場だ。」

「え、知り合いの?」

「いや、私のだ。」

「荒方さんの!?え、私物!?」

「滅多に来ることは無い。」


ふと、思い出す。

かつて、2人が諦めかけた時。

彼女の背後にあったのはジェット機だった。


「まさかとは思うけど、君、ジェット機扱えるの?」

「無論だ。」

「というより、俺たちは今からどこに向かうの。」

「海外に飛ぶ。」


あっさりと答える朱鷺に視線を浴びせる。


「仕方がない。

 この状況ではこの島国では動きづらい。

 広い大陸の方が逃げ道もつても多いからな。

 我慢しろ!!」


そう言いながら、入口に入る。

中にはジェット機は無く、広い吹き抜けのような構造。

とにかく広い体育館のような建物だ。


「あれ?無いの?」

「こっちはメンテナンスや予備用だ。あっちに…!?」

「「!?」」


向こう側の扉に向かって歩こうとした時だ。

そこに一人の人物が現れる。


「やはり、ここに来たな、朱鷺。」

「優李?何故、貴様がここに………!?」


朱鷺と呼ばれて思わず優李と返す。

慌てて北斗を見たが、


「安心しろ、すでにそいつの前で朱鷺と呼んでいる。」

「何!?北斗、どういうことだ!?」

「いや、これはその………、」

「ほう、律義にも話していなかったか。」

「北斗、これが話せないでいたことなんだね?」

「………ごめん。」


状況を察し、朱鷺は落ち着く。


「北斗、優李に何を言われた?」

「それは、」


北斗が口を開いた時、すかさず優李が重ねた。


「朱鷺、その2人を引き渡してもらう。」

「何だと!?何で貴様が!!」

「理由など、お前には関係ないことだ。」

「誰が貴様の指示に従うか!!」


「朱鷺、私の指示です。」


2階からの声に視線を向ける。

そこに現れた帝人の姿に朱鷺は驚愕した。


「親父殿?何故、ここに…?」

「「!?」」


困惑する朱鷺に、帝人は優しく笑いかける。


「久しぶりですね、朱鷺。

 元気そうで安心しました。」


『『あれがヨーロッパの大企業のトップである、荒方さんの父親!?』』


全く状況がつかめない。

優李が現れ、朱鷺の父親が現れ、関係性がわからない。


「荒方さん、これってどういう…、」

「優李は親父殿の右腕だ。」

「え、じゃあ、」

「お前たちより、朱鷺のことは良く知っている。ただそれだけだ。」


ため息をつく優李。


「朱鷺、2人から離れなさい。

 これ以上君が関わる必要はありません。

 私たちはその2人に用があるだけです。」


だが、朱鷺は2人の前に立ち、動かない。


「申し訳ありません、親父殿。

 その指示をお受けすることは出来ません。」

「朱鷺!帝人様の指示だぞ!!」

「やめなさい、優李。わかっていたことです。」

「ですが!」


一呼吸おいて、帝人は諭すように話す。


「朱鷺、私は君をこれ以上巻き込みたくないのです。

 できれば穏便に事を進めたい。

 だからこそ、君にお願いをしています。」

「………最氷プロダクションの占拠も、

 街中の監視カメラの掌握、

 警察を動かしたのも親父殿ですか?」

「………できれば君には内緒にしておきたかったのですが、

 流石に君相手では難しかったようです。痛恨の極みですよ朱鷺。

 まぁ、君の成長を喜ぶべきでしょうが………ですが、

 その2人の件は別です。

 君がどう思おうとも、引き渡してもらわねばなりません。」


それならば納得できた。

あのハイレベルのやりとりは、

鷹友グループならば可能だ。


「それでも、私は指示には従えません。」

「朱鷺………教えたはずですよ。

 依頼者達に執着してはならないと。

 いずれ身を亡ぼすことになるのです。」

「彼らの命を狙ったのは親父殿ですか?」

「……………。」


答えない帝人に胸が痛んだ。


「引き渡して、彼らの身の保証はない、違いますか?」

「………朱鷺、忘れなさい。」

「朱鷺!お前が口挟んでいいことではない!!」


「今更、無関係などと言えるものか!?」


朱鷺は力いっぱい叫んだ。


「人の命の尊さなど、教えてくれたのは親父殿ではないですか!?」


大切な人が死んだことを知っているのに。

あなたも失ったはずなのに。


「それが、理由も無く引き渡せなどと誰が応じられます!?

 親父殿達が彼らの何を知っている!!

 どうして2人が自分の生きたい道を歩めない!!

 何で命のやり取りなどを迫られねばならないのですか!?」


帝人もわかっていた。

何故、朱鷺がそこまで言うのかも。

事件を目の当たりにしたのだ。


「北斗!!言え!!優李はお主に何を言った!?」

「荒方さん、それはっ。」


帝人はゆっくりと強い声で言った。


「それは、お前の名前では無かろう!?」



3人は視線を帝人に向けた。



―――荒方さん、俺たちは君や皆にずっと嘘をついてきた。



「先珠 藤。それも本当の名前では無いな?」



―――二人で一緒にいるためだったんだ。



「先珠 藤―――お前の名前は“国間(くにま) 斎人(さいと)”」



―――俺たちは“恋人”じゃない



「周殿 北斗………お前の名前は“国間(くにま) 大和(やまと)”」



―――俺たちは……



「国間の息子たちだろう?」



―――“兄弟”なんだ。



顔色を変えない様子を見て、帝人と優李は察した。


「朱鷺、お前、知っているのか?2人が兄弟ということを。」

「この間、打ち明けられている。

 だが、2人が兄弟だからと言って何なんだ?

 親父殿達と何の関係がある?

 命を狙われる要素は何だ!?」

「関係性で言えばお前も無関係ではない。」


どこか辛そうな表情を見せた優李。

帝人は隠しておくことをやめる決心をした。


「朱鷺、君には話していませんでしたね。

 彼らが関わっているのは“龍真(りゅうま)”の件です。」

「!?」


『『誰だ?』』


藤も北斗もその名前に聞き覚えが無かった。


「私の息子であり、君の婚約者だった、


 鷹友(たかとも) 龍真(りゅうま)を殺したのですよ。」


朱鷺の指先から感覚が無くなるのを感じた。


「2人の両親である、国間(くにま) 仁和(よしかず)辰子(たつこ)は。」


思わず2人の顔を見た。

お互いが理解した。


「彼らは私たちの仇の息子たちなんです。」


鷹友 龍真。

帝人の一人息子だった。

そして、いつか朱鷺が話していた、

太一に似ている“亡くなった大切な人”でもある。


そして彼は殺された。

藤と北斗の実の両親によって。


「―――子供に罪は無い。」


朱鷺は再び、帝人の方を向いた。


「2人の両親は事故で亡くなったと聞いた。

 …それは親父殿が手を下したのか?」

「いいえ、確かに復讐しようとはして追ってはいました。

 ただ、彼らは崖から落ちる事故にあったのです。

 追っていたのは私の指示ですから殺したも同然かもしれませんが。」

「その情報は見つからなかった。」

「彼らに関する情報は全て葬りました。

 …遺体が見つからなかったために確認が出来なかったですが。

 まさか、息子二人が生きているとは。

 先珠と周殿から連絡が来るまで知りませんでしたよ。」


その言葉に藤も北斗も眉間にしわを寄せた。


『『あの人は最後まで………。』』


それでも朱鷺にはわからなかった。


「2人は死んだ、ならば、この2人の命まで奪う必要なんかない!!」

「朱鷺、それではダメなんだ。」

「何がダメなんだ!?」

「何故、先珠と周殿がリスクを冒してまで2人を匿ったと思っている!?」


は、と気づいた。

帝人が追いに追い続けていた存在の一部だ。

もし、それが彼に知られればただでは済まない。

先珠も周殿も鷹友を相手にすることだけは避けていたはず。


必死で考えるが答えが見つからないのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ