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ハーブティーと身震いとペナルティ

話が終わった後、生き生きとした半崎によって、

北斗と藤は何故か警察署のあちこちを案内されていた。


一方、清理は繁牙の部屋でハーブティーを優雅に飲んでいた。


「城酉、なぜ荒方は日本に帰ってきた。」

「あー…それ俺もわかんないっス。」

「何か仕事があったわけではないんだな。」

「まぁ、ちょこちょこは日本でも仕事してたんですけどね。

 俺がようやく朱鷺さんについていけるようになって、

 海外活動はじめて数年経ったぐらいに日本で仕事受けて、

 またすぐ海外行くんだろうなぁとか思ってたんですけどね。

 あっという間に1年以上過ぎちゃいましたよ。

 やっぱ、繁牙さんも知らないんですね。」

「側近のお前がわからんことを俺が知るわけなかろう。

 ここ何年も連絡はとっていなかったからな。」

「繁牙さんから見ても何か変だって思うんですね。」

「…日本にくることを嫌がっていた。」

「優李さんなら何か知っているんですかね?」

「荒方が周殿 優李と接触したのか?」

「いいや、個人的にって事なら皆無ですよ。

 寧ろ、優李さんの名前を出すだけで機嫌悪くなりますもん。」

「千羽 太一に似た人物とやらは何の話だ。」

「あぁ、朱鷺さんの恋愛経験の話ですよ。」

「何?」

「繁牙さんも聞いたこと無かったんですね。」


仕事以外の話をしないのは朱鷺だけではなく、

繁牙本人も同じことが言える。

返す言葉が無く、微妙な表情が少し笑えたのはここだけの話だ。


「1人だけいたらしいんですよ。

 その人が太一さんに似てるらしくて。」

「お前も会ったことは無いのか。」

「聞いたことも無かったですよ。

 まぁ、もう、亡くなっているらしいですが…。

 俺も出会う前の朱鷺さんの事なんて、

 本当に何も知らないに等しいもんですからね。」

「それはお前だけではない。

 というより、あ奴がそういう話をしただけでも驚きだが。」

「っていうか、繁牙さんが優李さんに聞いてみたらいいんじゃないですか?

 一応、義理の弟になるんでしょう?」

「実の妹にも話さないことを聞けと?」

「やっぱり話してないんですね。」

「鷹友のことも知らなかった。」

「めんどくさい夫婦ですね。」

「まったく、知らぬ間に子供を作りおって…。」

『こっちはめんどくさい兄貴だけど』


机の上に置かれた写真を見る。

少し昔のまだ幼さの残る瑠依の写真の隣に、

最近撮ったであろう、瑠依と楓の写真が並べられていた。


「優李さんはいないんですね。」

「馬鹿者、鷹友 帝人の右腕が姿を残すわけが無かろう。」

「あぁ、まぁ、そうっすね。

 そこらへんは朱鷺さんと同じというか……。

 じゃあ、朱鷺さんの写真とか無いんですね?」

「………昔、写そうとしたやつのカメラごと破壊していた。

 お前ですら撮れないんじゃないのか?」

「えぇ、そりゃ、もちろん。

 免許証の写真すらも見せてもらえませんよ。

 隠し撮りも全部カメラ破壊されたもんなぁ。」

「写真に関しても異常なほど嫌悪感を現すからな、荒方は。」

「荒方さんの写真嫌いは本気でやばいですもんね。」


2人の脳裏にその時の朱鷺の表情が浮かぶ。

目に光は無く、冷血そのものの無表情。

長い付き合いでも背筋が凍るような。

怒りも超えた感情が辺り一帯を包み込む。


思い出すだけで身震いをした。


「さ、さて、そろそろお暇しますかね。」


何となく朱鷺の存在を感じて立ち上がる清理。


「城酉、出来るなら荒方を探れ。」

「警戒されそうなんですが。」

「出来るならと言っている。

 とにかく、今のあ奴は何かがおかしい。

 絶対に目を離すな。」

「もちろんですよ。

 まぁ、困ったときは連絡でもします。」


繁牙の指示で北斗と藤が呼び戻され、

部屋を後にしていった。


見送りを半崎に任せた繁牙は一人ため息をつく。


言葉に出来ない不安が込み上げた。


*********************


警察署の入り口にて、三人は固まる。


「………そんなとこに三人立っていれば邪魔だ。

 さっさと車に乗れ。」


さも当然のごとく、待っていた朱鷺。

鍵は清理に投げつけて助手席に乗り込んだ。


「あ~、え~っと朱鷺さん、あのですね…、」

「運転に集中しろ、清理。」


はい、と消え入るような返事をした。

残りの2人も平然を装う。


無言の朱鷺に清理は“不機嫌”を感じ取った。


「藤、これ。」


朱鷺は異常なしと書かれた再検査の証明を手渡した。


「良かった…何ともないなら安心したよ。」

「約束のケーキは、」

「大丈夫、ちゃんと作るよ。」

「ならいい。」


北斗と藤も彼女の不機嫌を感じ取った。

普段、見せないその感情に少し戸惑った。


「………もしかして怒ってる?」

「何に対してだ?」

「いや、何か、機嫌が悪そうな感じがしてて…。」

「病院が大嫌いなだけだ。」

「警察署にきたことで怒ってるんじゃないんだ?」

「何故、怒る?北斗の親戚にでも会いに行ったのだろう?」

『『『まぁ、わかるよな。』』』

「何の話をしたのかは知らないが、特に興味は無い。

 連絡が無かったことに関して言うならば、

 与えられるペナルティはお前たち二人ではなかろう。」


ちらりと視線が運転手に向けられる。


『これ、目を合わせちゃいけないやつだ。』


必死で運転に集中する清理。


「まぁ…特に…問題があるわけではないから、かまわんが。」

「え、嘘、またこのパターン!褒めてくれてます!?」

「いいから運転に集中しろ。」

「そんなぁ!朱鷺さんのイケズ!!

 たまには素直に褒めてくださいよ!!

 罵ってくれてもかまいませんから!!」

『『どっちだよ』』

「うるさい、黙れ。」


賑やかしい前の席を眺める藤。

ふと、隣を見ると北斗は寝入っていた。


『懐かしいな…』


と、視線を前に戻す。

桜に引き取られる前のことを思い出した。


前の席には父親と母親がいて、

後ろに自分と弟が乗っていて。

よく弟は寝ていた。

車に乗ると寝てしまう体質なのか、

とにかくいつ乗ってもすぐに寝てしまっていて。

父母はよく話をしていた。

たまに自分の方にも話しかけてきて、

母親が弟に上着をかけてと手渡す。


それが、もう今は消え去った。


ここ数年。

車の座る場所は同じだが、隣には誰もいない。

運転席には名前も知らない運転手。

助手席には上品な姿の養母。


話しかけられることなどほとんどない。


小さいころから毎年クリスマスになると、

用意された綺麗な服を着せられて、

車に乗せられ、どこかへ連れていかれる。


たぶん、桜さんの知り合いのパーティのようで、

見覚えがある大人も初めて会う大人もたくさんいた。


なるべく彼女から離れないようについていき、

彼女に合わせて大人たちに挨拶をする。

余計なことは言わず、他愛も無い会話を繰り返す。


小さいころから大人の女性受けのいい見た目であることを、

頭のどこかで理解していた。

あどけない態度をしていれば彼女たちは油断をして口を滑らせる。

その情報を養母に集めて渡すこと、

それが会場での自分の役目であることすらも理解していた。


ある程度大きくなっても子供らしさを忘れず、

また人によっては大人っぽくふるまうことをつけ足して、

無知な部分に教えを乞うことも、

逆に彼女たちの好きそうな話題を提供することも、

全て先珠 桜が教え込んだ。


食事を楽しむことも、雰囲気に浸ることもしない。


「藤。」


朱鷺に呼ばれて現実に戻ってきた。


「ブッシュドノエルはすぐに作れるのか?」

「まぁ、手順さえわかれば問題はないとは思うけど…。」

「そうか、私は作ったことが無いのでな。

 不慣れながらも全力は出す所存だ!!頼むぞ!!」

『よっぽど作りたいんだな…。』


瞬間的に、母親の作った不格好なケーキを思い出した。

ふと懐かしさが心に広がる。


「なんなら、今日練習でもしてみる?

 俺も一度試してみたいし。」


目を輝かせた朱鷺が材料を買うと清理と運転を変わる。


余談ではあるが、

朱鷺にお菓子作りの才能が無いと発覚し、

しばらく失敗作の処理に清理も巻き込まれることになった。

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