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チョコと親戚とキスマーク

七ヶ月。

信じるなんて簡単なこと

だけど疑わないなんて難しいことで

人に対してではなく

自分に対してが一番難しいんだ

君は決めたのに、

俺たちは未だに迷っているのかもしれない



[10月]



「ぴりっと刺激にふわりと香る甘い彼」

「つんとした刺激に爽やかな甘さの彼」

「「君の好みはっどち?」」

「うさぎ家から新発売!

 和チョコレート 辛子風味、山葵風味!好評発売中!!」

「「待ってるよ」」


チョコレートのパッケージを片手に

着物姿の藤と北斗が決めポーズ

カットの声がかかり、拍手が起こる。


「藤くん、HOKUTO!さいっこうよぉー!!」

「「ありがとうございます。」」


今日は二人そろってのCMの撮影。

もちろんスタジオの片隅には朱鷺が気配を消しながら見守っている。

CMのプロデューサーである川伊達(かわだて) (あい)は二人に熱い抱擁を交わす。


「いいわぁ、二人とも。

 着物の似合う大人にすっかり熟しちゃって…。」

「まぁ、俺もいい歳ですからね。」

「川伊達さんも、いい熟し方だと思うけど?」

「やだぁ、HOKUTOったら、私を抱きたいの?」

「ははは、まさか。絶対無理。」

「照れちゃって、仕方ないわね。

 しょうがないから着物を脱がすの手伝ってあげるわ♪」

「いや、いい―――」


有無を言わさず、控室に引きずられる北斗。

ぱたんと扉が閉まると、近づいてきた朱鷺に藤は不安そうな顔を見せた。


「たぶん、大丈夫だ。」

「・・・・・・・・たぶんなの?」


****************


「で、何の用なわけ?」

「あら、急に可愛げがなくなるわけ?」

「君に愛想なんてふっても無駄でしょ?」


控え室のソファに腰を下ろした北斗は深いため息をつく。

愛はどこか余裕の笑みで足を組み椅子に腰かけた。


「あなた、兵佳様(おとうさま)に反抗したって本当なの?」

「そんなことで仕事場まで来たわけ?」

「・・・・・そんなことって本気で言ってるの?」


ずんと思い視線を感じる。

彼女とは昔からの付き合いではあるが、

何年たってもこの威圧が苦手でたまらない。


「10年以上、兵佳様があなたの仕事を黙認してくれていた意味がわからないわけ?」


かつんとハイヒールの音が響く。

視線を外した北斗の顎を掴んで己に向かせ、目を合わせる。


「あなたがどんな存在で何を成さなきゃならないのか、忘れた?」


ぞくりと体が冷える。

忘れようと蓋をした過去がちらつく。

嫌なのに動けない。


「それともあの頃みたいにまた一からじっくりと時間をかけて教え込もうかしら?」


嫌だ、思い出したくない。


「やめてもらおうか。」


愛の手首をがっしりと掴んだ手が北斗から引き剥がした。


「あら、朱鷺ちゃん。

 ごめんなさいね、久しぶりの親戚の子との再会だから

 ついからかっちゃったわ。」

「歳月は皴とともに嫌味も深くなるものだからな、致し方あるまい。」

「相変わらず、冗談きついのねぇ。」

「あぁ、すまない。本心しか口に出せない性質なのでな。

 あえてもう一言付け加えるなら、いいからさっさと出ていけ、だな。」

「もう、しょうがないんだから。

 じゃあね、北斗。ま・た・ね?」


さっそうと愛が部屋を出た途端、朱鷺が北斗に向き直ろうとした。

だが、背後から彼の腕が朱鷺の体にしがみついた。


「見ないで。」


小さく呟いたその震える声に「わかった」と返す。


「北斗。」

「なに?」

「記憶を消してやろうか?」

「は?」

「催眠術みたいなものでな、消してやれる。」

「…君は一体何者なのさ。」


微かな笑いとともに、強張っていた腕の力の緩みを感じた。


「世界一、完璧で尚且つ優秀すぎる最強のマネージャーだ。」

「あーはいはい、もうわかったよ。」


完全に脱力した北斗が体を起こしたその時、

控室の扉が急に開いた。

そこにはトイレに行っていたはずの不機嫌な藤がいた。


「・・・荒方さん。

 凄い質のいいウェットティッシュある?」


その頬にはべったりと真っ赤なキスマーク。


「「あの川伊達 愛(ばばあ)」」

「性質悪すぎなんだけど・・・」


その日、何度目かのため息をついた。

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