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経歴と腕前と若さ

 やがて、時間がやってきた。

 スタジオには観客が既に満員状態。

 藤と玄宇は最終確認をしている。


「そして、この機械の緑のランプがついている時は生放送中。

 赤のランプは放送されていないという事ですので。」


 最終確認を終えて、それぞれの待ち位置へ移動した時だった。


「眞璃さん!」


 まるで飼い主を見つけた犬のように、玄宇は走って行った。

 彼女の隣りには玄宇のマネージャーが立っており、どうやら、特別にスタッフの中に紛れさせてもらっているようだ。


 藤はほんの少しだけ、二人の様子を確認すると、すぐに視線を反らして位置まで進む。

 驚きはしたが、内心は自分でびっくりするほど穏やかで落ち着いている。


『やれる事をやろう。』


 一つ、深呼吸をすると藤は心の中で頷いた。


*****************


「それではやってまいりましたぁ!!

 今宵、下剋上となるのか!?

 それとも、無敵の帝王となるのか!? 結果は未来しかわかりません!!

 それではお呼び致しましょう……

 青コーナー、今夜は彼が始まりだった。

 全ては憧れを越えるため!

 突如、芸能界に現れた青い彗星!

 可愛いベビーフェイスで世のお姉様方を虜にする!!

 楽佐らくさ事務所所属!

 くぅうろぉぉぉ えぇぇぇぇん!!!!」

「「「「「きゃー!!!」」」」」


 頭が割れそうなほどの黄色い歓声と拍手。

 そんな中を玄宇は持ち前の人懐っこい笑顔で元気に登場する。

 藤と北斗は『何故、格闘試合っぽいアナウンスなんだ?』と首を傾げた。


「続きまして!赤コーナー、

 デビュー当時はまだあどけなさが残っていた…

 しかし!その頃から変わらぬクールビューティは健在!!

 知的な役で彼に敵う者はいない!

 最氷プロダクション所属!

 ふぅぅううぅぅじぃぃい!!!」

「「「「「きゃー!!!」」」」」


 これまた劣らず壮大な歓迎に、これまた変わらず爽やかな笑みで控えめに登場した藤。


「そして!本日お二方に対決して頂くお題はこちら!!」


 スタジオの一部にかけられていた布が外された。

 現れたのは大量の食材と大きな看板。


「題して!“彼女の為に作るバースデーディナー”!!」


 観客はほぼ女性で異様な盛り上がりを見せる。

 そう、今夜の対決はずばり“料理”である。


「………先珠の腕前なら、まず負ける気がしないのだが?」

「まぁ、そうだよね。

 あの玄宇って子がどこまで出来るかは知らないけど。」

「流石にフレンチのフルコースは無理だろう。」

「うん、流石にね………でもなぁ。」

「どうした?」

「藤は料理が得意だなんて公表してないんだよね…どうするのかな。」

「……………その辺りは聞いて無かったな。」


 すでに会場では調理が始まっている。

 朱鷺が見る限り、玄宇も負けず劣らず手慣れた手つきである。


「ねぇ、荒方さん。あの子って手つきがプロっぽいんだけど。」

「それなりの免許を持っている。」

「うわ、やっぱり。」

「それだけでは無い、あの若者は有名大学を首席で卒業したエリートだ。

 スポーツも全国では名が知れてスカウトも多かったらしい。

 歌唱力もこの業界でやっていくには充分だろう。」

「ねぇ、それって………。」

「先珠には料理しか、勝機を見出だせない。」

「最悪。」


 まだ、出始めたばかりでその情報はあまり知られていない。

 あちらの事務所からしてみれば、最強の新人を発掘してきたのであろうが、何故、“藤潰し”に抜擢したのか。

 朱鷺はそこがどうにも納得出来ずにいた。

 だが、その時携帯が鳴る、清理だ。


「何かわかったか?」

〔予想通りです。〕

「ご苦労だ。」


 すぐに電話を切った。

 横から北斗の視線を感じたが、放っておくことにした。


 およそ、40分の作業ののち、調理時間の終了となった。

 審査員の元へ先に運ばれたのは、玄宇の料理だった。

 一目見て審査員達はざわついた。


「これは…イタリア料理ですね?」

「すっごい本格的〜!」


 まさにプロ並の腕前だった。

 食べる前からの好印象で、もちろん、味も絶品らしく、審査員のプロのシェフですらも文句の付け所が無い状態だ。


「知り合いにプロがいまして、彼女の為に修業してしまいました!」


 益々、好感触である。

 スタジオ中の女性陣は黄色い溜息をつくのだ。

 そしてこっそり婚約者にウィンクしてアピールも欠かさない。


 絶賛の拍手が彼を包み込む中、その視線は藤のほうに突き刺さっていた。

 笑っているのに、その目だけは藤を睨んでいた。

 気にしない藤だが、ふと気になる。


『………どこかで…………?』


 そんな考え事をしていると、ついに今度は藤の番になった。

 とりあえず、その事は忘れて料理を運んだのである。

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