懇願と却下とテレビ
三ヶ月。
この頃になると、あたかも一年以上いるような気分になってくる。
もう三ヶ月なのか、まだ三ヶ月なのか。
約束した半年の半分なのだから、まだなのかもしれないけれど。
未だ消えない警戒と嫌悪。
でも、期待という気持ちが存在しているんだ。
[6月]
それは朝からの話だった。
「行きたい。」
「駄目。」
「だって、藤。これ見てよ!」
「駄目ったら駄目。」
「一度くらい。」
甘えるような目で迫ってみる。
だが、今回ばかりは藤のほうが優勢だった。
「俺の事よく知ってるでしょ?」
「……………。」
「駄目。」
きっぱりと断られた北斗の姿はまるで捨てられた犬だ。
それに付き合わず、藤は新しい珈琲をいれる。
朱鷺はそれを横目で見ているだけだ。
事の発端は、北斗が見ていた雑誌だった。
そこに掲載されたある場所に行きたいと北斗が言い出した。
もちろん朱鷺としては却下する理由も無いので承知しようとしたのだが、
予想外な事に藤が却下したのだ。
それも彼女が返事をする前に即答。
普段、北斗には大甘の彼が頑なに駄目だと言い張るため、朱鷺としても賛同出来ずにいる。
それでも負けまいと雑誌を広げて藤に懇願する北斗。
とても40手前の男とは思えない姿だ。
三ヶ月目に入ってわかった事。
彼らは見た目は大人でも、中身はびっくりするほど、子供100%である事。
流石の朱鷺も時々“面倒”だと思う事があるのはここだけの話だ。
「………そろそろ時間じゃないのか?」
「あ、ホント。」
彼女の声かけで、北斗はパタパタと準備を始めた。
藤はすでに準備済みなので、食器を洗って彼を待つ。
テレビを消そうとリモコンを手にした瞬間、“彼”は映しだされた。
<今日は最近大注目の粉物王子に生でインタビューしちゃいたいと思いまぁす!!>
そこに映し出されたのは、イベント会場でインタビューを受けるあの仙羽 太一の姿だった。
実は彼が発売したあの粉商品が大ヒット。
尚且つ、料理上手なキャラも確立されたためか、爆発的に人気が出たのである。
現に、テレビ内でも“粉物王子”という愛称で騒がれているのだ。
特に見たいと思ったわけでも無いが、反射的に見てしまった。
少ししてスイッチを切り、後ろを振り向く。
そこにはなるべく音を立てないように佇む二人の姿があった。
「準備が出来たなら声をかけろ。」
「いや、まだ見てても、」
「いらん。」
北斗はにやにやと気持ち悪い笑顔を見せる。
あれからというもの、やたらと太一の話を引っ張り出しては朱鷺の反応を見て楽しむ。
(しかし、朱鷺は無反応なのですぐに飽きてしまうのだが。)
藤に至っては言葉にせずに、太一が出ている番組にこっそり切り替えておくという、姑息な手段を用いているのだ。
完全に玩具のような感覚なのだろう。
こういう所が面倒だと思う要因である。
太一が出てくるとお腹がすいてきます。粉もの食べたい。




