イカれた彼女のヤンデレシンドローム
冬真っ盛りの十二月上旬、俺が学校から帰宅すると、家のリビングには包丁の柄を握りしめた雪のように白くきれいな髪の少女が立っていた。少女の足元には二人の大人。リビングには鼻につくような臭い。俺は少女に言う。
「なにをしてんの?」
「あ、真広くーん♪」
少女俺の存在に気づき、握りしめていた包丁を床に捨てると俺に甘えた声で近づき、俺の胸に飛び込んできた。
「真広くんだぁ、真広くん」
何回も何回も俺の名前を言う少女。
俺は少女の後ろに広がっている残念な光景を見ながら、
「あれはお前がやったのか?」
質問すると、俺の胸に埋めていた小さな顔を上げて最高の笑顔で言った。
「うん! あの床にあるほうちょーでグサグサを刺したんだよ!」
あたかもそれが普通の出来事であるが如く、少女は笑顔を浮かべたまま、明るい声で答える。
俺は少女の白い髪を撫でる。すると少女は目を細め気持ちよさそうにしている。髪を撫でたまま俺は再び質問をする。
「どうして刺したんだ?」
少女の笑顔が消え、小さく頬を膨らませ、拗ねたような顔になった。
「わたしがね、真広くんと一緒に住むって言ったらあれが反対したんだよ。だからあの真広くんにもわたしにも存在価値のないあれを駆除したんだ♪ ねぇ、わたしえらいでしょーふふふ」
最初は不機嫌だったものの、次第に明るさを取り戻していく少女。俺の両親を人間ではなくゴキブリ並の扱いをする辺りに関しては同情する。二秒ほど。
俺は撫でていた手を止め、今度は頭のてっぺんに手を置き子供を褒めるように撫でる。
「そうか、えらいえらい」
「そうでしょーふふふふ」
「俺と一緒に住みたいの?」
「うん! ずっと離れたくない!」
「それじゃ一緒に住もうか」
「そうしよーそうしよー」
淡々と同棲が決まった。
俺はリビングを見て言う。
「その前にまず、あの死体を片付けようか。邪魔だろ?」
「うん、そうだね。ゴミになんて触りたくもないけどわたしたちの生活には邪魔だもんね」
そして俺達は二人の死体ごと家に火を放つ。こうすれば死体の原型が無くなる。
その後、警察から色々と話を聞かれたが、まさか小学生が火事を起こすなんて考えていなかったようで、励ましの言葉を多く貰い疑われることもなくこの火事はストーブが原因の火事として事件は終わった。
こうしてイカれた少女、琴吹早矢と俺、上杉真広の生活は始まった。
続きどうしようかな……