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第4話

アイナとセラフィーナが話している最中、ユウナは少年に治癒魔法《ヒール》をかけ続けていた。

《ヒール》はユウナが使える魔法の中で一番使い慣れたものだ。

日常で出来る傷のすべてこの魔法で痕も残さず治療することが出来る。


しかし、少年のけがに効いているように思えない。

傷の治りが限りなく普段より遅い。



普段使う魔法の技量だけでは成り立たないところがある。

系統魔法のような属性を持つ魔法は自らの魔力で持って世界にある神秘を起こす事。


対して、《ヒール》のような治癒系の魔法は、自身の魔力で人間の生命力に働きかけるもの。


それは回復される人の意思と生命力の大きさに左右されるという点だ。


通常の魔法は、操作を技量、効果を術者の精神力が大きな要因となる。


治癒魔法では、操作を術者の技量、効果がケガ人の精神と生命力が必要となる。

《ヒール》の効果が薄い原因として、少年の生命力は風前の灯ということだ。


しかし、それでも薄くとも効果が出ていることにユウナは驚きを隠せない。


普通の人なら楽になりたいと願うほどの痛みのケガのはずだ。


生命力が限界なら、少年の意思がこれだけのケガを負ってなお生きようとしている。


はたして彼はどんな人なのだろう?


そんな興味がユウナにわいてくる。


「……ゅ……き……ゅ」


また、少年は必死にかすれた声で鳴く。

意識はないはずだ。


それでも、誰かを呼ぶように誰かを大切にするように、誰かを守ろうと鳴き続ける。


ユウナは彼のボロボロの左手に目が行った。

その手は誰かの手を掴んでいたのだろうか?

その手は虚空を握り締める。


そして、右手を見る。


不思議なことに少年の右手は、肘から先が全くの無傷だった。

肘から上はやけどがひどい。肩の一部分はむしろ炭化している。

なぜそこだけ無傷なのだろうか?


まるで肘から先は新しく生えてきたようだった。


ふと、母親であるセラフィーナと連絡を取っているはずのアイナの声が聞こえなくなった。

気になってみてみると、デバイスを耳に押し当てたまま凍りついているアイナがいた。


「お姉ちゃん! 」


「 ! お母さん! 」


ユウナが悲鳴じみた声を上げる。

それで意識を戻したのか、アイナは早口に今までの経緯を説明している。


その様子を見たユウナは少年の治療に意識を戻す。

こちらも気を緩めていてはならない。

ユウナが魔力の操作に誤れば、少年はすぐに死に至るだろう。


「……ゅ……ゅ………」


今にも死にそうなはずなのに少年は呼ぶことをやめない。

ユウナは、自分が彼の呼ぶ人物ではないことはわかってはいるが、その声に応えてやりたいと思う。


悔しげに顔をゆがめる。


(この人を死なせたくない)


アイナは母との通話を終えたのだろう。

デバイスの画面を見つめていた。


「お母さん。どれくらいで来てくれるって?」


聞いたが返事がない。

呆然と立っているアイナから目を外し、ふと少年の首にアクセサリーがかけられている事に気がついた。


そのアクセサリーはドッグタグというものだとユウナは知っていた。

それは地獄の業火の中にいたことにより、焦げて黒くなってしまっている。

ドッグタグには何か文字が刻まれているが、ユウナにはその文字が何なのかはわからなかった。


ドッグタグには、《2012.11.20 to HARUTO Y by YUKI Y》と刻まれていた。

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