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第2話

「……ちゃん……お姉ちゃん! 」


「……う」


ユウナは気を失ったアイナに必死に呼び掛ける。

アイナの体を揺する手はクリスタルを使ったのだろうか、完治には至らないがいくらかさっきの状態と比べて、ましになっている。


「……ユウナ」


アイナが目を覚ます。顔は急激な魔力の消費から青白く、両手は火傷と裂傷がヒドい。


アイナが自身の体を確認するよりも早くユウナはアイナの体に抱きつく。


「っ! ユウナもっとやさしく……」


体に痛みが走り、文句を言おうとしたアイナだが最後まで言うことはできなかった。



「ひぐっ……お゛ね……ぢゃ……よがった~」


気づくとユウナは普段なら考えられないほど取り乱し、大粒の涙を流していた。


「ユウナ」


「クリスタル使っても、魔法使っても全然傷治らなくて、お姉ちゃん全然起きなくて……」


アイナは自分の体の状態を確認する。完治はしてないが、痛みはある程度引き、大きな傷もふさがっている。

これなら帰って治療すれば痕も残ることはないだろう。


「ユウナ……あんたは大丈夫?」


「あとは家で治療すれば大丈夫だよ」


「そう……」


アイナは今も抱きついたままのユウナの背に手を回し、抱きしめる。

アイナとユウナはお互いの温もりを感じ、生きていることに安堵する。


(……良かった。ユウナが無事で)


ユウナが生きていたことが何よりもうれしい。


(ユウナに、また(・・)けがをさせちゃったな……)


そんな罪悪感が頭に浮かぶ。

ケガをした事にユウナは決して自分を責めたりは絶対にしない。

むしろ、アイナがケガをした事に涙を流している。

アイナがユウナに対して悪いと思っている事に対しても申し訳なく思ってしまうだろう。


アイナは今もアイナの胸で泣いているユウナの頭を撫でながら上を見上げる。

空では蒼い月と満点の星たちがアイナ達を見下ろしていた。


すると、アイナは気づいた。


「ユウナ……天井は?」


今アイナがいるところは確か小屋の中のはずだ。

本当なら空など見れるはずもない。

周りを見ると、壁が崩れている所が数か所ある。


聞かれたユウナは涙を袖口で拭いながら顔を上げる。

大泣きしたことで、目は真っ赤にはれている。


「ぐす……あぁそれはお姉ちゃんが気絶してすぐに大きな爆発があって屋根吹き飛んじゃったんだ。壁も所々崩れてるのもそのせいだよ」


「……よくあんたも私も無事だったわね」


「それはとっさに障壁はれたからね。あとちょっと遅れたら危なかったよ」


さらっと恐ろしいことを言われた。


「……そう」


ユウナは簡単なことみたいに言うがその技量は凄まじい。

自身の魔力を世界に働きかけ行使する。

そこには緻密な魔力操作とそれを行使する為の強い意志が必要となる。


魔法の発動には魔力の操作がその規模には意志の強さが。


今の小屋の様子から爆発の規模は相当のものだっただろう。

爆発の瞬間に障壁を展開できるほどの技量とその威力を防ぎきることのできる精神。


アイナはユウナが無事だったことを安心すると同時、その技量に姉としてあってはいけない感情に嫌悪感を抱く。


(……………)


必死にその感情を押し殺し、アイナは聞く。


「私はどれくらい気絶してた?」


「そんなに時間は経ってないよ。5分もないと思う」


「そう。……あれからどうなった?」


先ほどまでの灼熱地獄が今は屋根と壁がなくなり廃墟と化した小屋に夜風が吹き込み、肌寒いほどだ。


「えっと、お姉ちゃんが気絶してすぐに大きな爆発が起きたあと、魔力は魔法陣に吸い込まれていったんだ」


「……そう」


自分の魔法は失敗だったのだろう。

なにせ発動した術者本人が気絶したのだ。

通常の魔法なら発動せず魔力は霧散していく。


アイナは魔法の失敗という事実に落ち込む。そして、自分が描いた魔法陣に目を向ける。


(え……)


「……ひ……と?」


「え?」


アイナが呟いた言葉でユウナは顔を上げる。

その顔は驚愕に目を見開いている。

アイナの視線は魔法陣に向けられていた。

ユウナはその視線の先を見ようと振り向く。


そこには、


自分たちと同じぐらいの年齢で、黒髪の少年が魔法陣の中心で仰向けの状態で倒れていた。

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