幕間:とある診療所にて
「やぁ、君がここに来るなんて珍しいね~」
「ははは、そんな怖い顔しないでよ~」
「君と僕の中じゃないか~」
「で、ここまでわざわざ足を運んでくれたってことは~」
「旦那と別れて僕と一緒になってくれる決心が……」
「…………ごめんなさい、調子に乗りすぎました。」
「だから、そののこぎりを僕の首筋から離してくれない?」
「というか、どっから出したのそれ?」
「深く追求するな?まぁいいさ」
「ところで、今のところ僕しか話してないように見えるけど、何か意味あるの、これ?」
「どこで聞かれているか分からない?」
「そんな耳が隣にあるわけないだろう?」
「このマンションのこの階は僕の診療所しかないんだから~」
「………そうですか。そもそも僕が信用できないね。はいはい」
「まぁ、いいさ。いつか僕の愛を……」
「はい、ふざけるのやめます。ごめんなさい」
「え?どうして僕が念話をしないのかって?」
「やだなぁ~ぼくは魔法使いじゃなくて医者って設定だよ?魔法が使えるわけないじゃないか~~」
「僕が使うのは医術だけだよ~~」
「まぁ、よくお得意様からは僕の治療は魔法みたいだって言われるから心外なんだよ?」
「だってこれまでの研鑽されてきた医学という学問を魔法なんて一言で済ませてほしくないからね~」
「そもそも僕みたいな一般人の医者が魔法を使うなんてことはごぱっ!!」
「そんな話はいい?ここからが面白いのに?」
「そんな聞いてってよ!」
「この話聞けば、君もきっと僕と結婚したくなる…………訳ないですね。すいません」
「だから、口の中にくぎを突っ込むのをやめて~~」
「はぁ、え?彼のカルテを見たい?」
「はいはい、分かりましたよ~」
「え~~と、たしかこの辺に………………あれ?」
「おかしいな~どこだっけ?」
「お~~い、少年のカルテどこにある?」
「…………いつも悪いね~自分でしまうとどこにやったか覚えてなくてさ~」
「え?そもそもしまってない?」
「床に落ちてた?」
「ふ~ん、そっか」
「え?医者がそんなんでいいのかって?」
「だって男のカルテなんてどうでもいいし~~」
「ああ、女の子のカルテは別だよ?」
「そこに、バストの大きい順にファイリングして保管してるからね~~」
「……………4冊しかないけどね~~」
「悲しくないやい!!」
「それはそれとして、はい。これが少年のカルテだよ~」
「なになに、夫というものがありながら~~」
「その身に余る欲望が抑えられなくて~」
「一緒に生活している若い青にあてられて~~」
「毎晩疼いて疼いて仕方がない衝動が~~」
「我慢の限界が近付いたために~」
「少年の身体的特徴をくまなくチェックして~~」
「夜這いでもするのかい?」
「それはとてもそそるシチュエーションでもあり僕は少年を殺してしまいたくなるほど憎いね~」
「やーい、エロの人妻~」
「僕も混ぜろ~~」
「………………………………」
「なにか言ってほしいな~~」
「殺気だけで僕はもうおなかいっぱいだ、ごちそうさま~~」
「で、感想はどうだい?驚いたろう?」
「はは、あいた口がふさがらないみたいだね」
「あぁ~そうだろう、僕も始めてみた時は驚いたさ~~」
「そのレントゲン、決してミスじゃないんだな~~これが~~」
「何度も撮り直してもその結果になるんだよ~」
「こんな症例いままで見たことないね、聞いたことはあるけど~~」
「彼がなんなのかは君が良く分かってるだろう?」
「彼はこの異常の事は感づいていたよ。それに僕もおかしいと思ってたんだ~~」
「彼を拾ってきたとき、体中火傷やら傷が酷いって言うのに~」
「そこだけ無傷なんてさ~」
「まぁ、彼には、僕が考えうる限りの仮説を伝えておいたよ~~」
「僕は医者だからね~研究者じゃないさ~~」
「あれがどうなっているかとか興味がない訳じゃないけど~~」
「僕の専門は研究より実技なんだ~~」
「何だったら今から保健体育の実技を………しませんね、はい」
「まぁ、ほんとうの原因なんて分からないよ~~」
「彼がどうやってここに来たのかも分からないんだからね~~」
「それにここまで言えば君も分かってるだろ?」
「彼がここに来た経緯から推測してさ~~」
「……僕は何も知らないよ~」
「君が話してくれないしね~それに彼にも口止めしてるみたいだし~~」
「まぁ、なにも言わないけどさ~~」
「にしても、不思議だよね~~」
「“右腕の肘から先”が映らないなんて」