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あおいの盲点  作者: 末紀世(まつきよ)


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4/10

—出会い

この施設では、

人の身体は資源として扱われていた。


能力は、偶然では再現できない。

単体では不安定で、

記録に残らない。


だから彼らは、

結果が出るまで繰り返す方法を選んだ。




呼び出される。

番号を確認される。

別の番号と組み合わされる。


それだけだ。


理由の説明はない。

拒否も存在しない。


この工程は

「交接」と呼ばれていた。




部屋は白く、

床には排水溝。


天井の奥に、

複数のレンズ。


人と人が、

条件として並べられる場所。




目的は一つだった。


身体の反応。

遺伝の傾向。

妊娠の成功率。

それ以外に、

価値はない。




あおいは、

もう理解していた。


自分が


「出産する可能性」

として数えられていることを。




その日、

あおいと組まれた男は

北村と名乗った。


他の被験者と違い、

彼は視線を落としたままだった。


余計な動きがない。

触れ方が、最低限。


監視下で、

それがどれほど異質か

あおいには分かった。




感情は不要。

だが、雑音は避けたい。


そう言っているようだった。指先は優しく滑り、必要以上には刺激してこない。

あおいは声が漏れそうになるのを北村の腕をつかみながら必死で堪えた。




工程が終わると、

被験者たちは

一斉に移動させられる。


洗浄。


身体を、

次の工程に戻すための処理。




四方から

高圧の水。


音が、

思考を叩き潰す。


その中で――

あおいは聞いた。




――聞こえる?


頭の奥に、

直接。




――数秒しかない。

――この施設、…あ…っ


北村の声。




――能力は、

――ここでは使えない設計のはずなんだ。


水音が、

意識を引き剥がす。集中できない…




――でも今、

――俺たちは……


途切れる。




――あ……また……




係員が近づく。


列が、

分断される。




次の瞬間、

北村はいなかった。


独房に戻り、

あおいは壁にもたれた。


胸の奥が、

わずかに震えている。


希望じゃない。

救いでもない。




ただ一つ。


この施設の設計から、

はみ出した何かが

今、確かに起きた。




監視室で、

黒井はログを見ていた。


「交接工程中、

 微弱な脳内信号の同期……?」


一瞬、

指が止まる。


「……まあ、誤差の範囲だ」


そう記録し、

次の工程を進めた。




だが、

誤差はいつも

最初は小さい。


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