表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私が双極性障害?!  作者: かかとにハイヒール
9/11

第3章 :心を開く瞬間



ある夜、リビングで二人並んで座っているときのことだった。

私は、言葉にならない思いを胸に抱えていた。

胸の奥が痛くて、息が詰まる。

でも、どうしても声に出せず、ただ俯いているだけだった。

夫はテレビも見ず、スマホも触らず、静かに隣に座っていた。

ただそこにいるだけ。

その静けさは、以前なら息苦しく感じたかもしれない。

でも今は、重くもなく、圧もなく、心地よかった。

「……ねぇ」

つい、かすれた声が出た。

声に驚いた自分もいた。

「うん?」

夫はそっと体をこちらに向ける。

無理に表情を変えることもなく、ただ目を見ているだけだった。

「……私、最近、本当に……しんどくて」

言葉を切り出すのに、何度も喉が詰まった。

涙が溢れて、手が震える。

そのたびに「やっぱりやめよう」と思いかけるけれど、夫の穏やかな視線が、私を止めなかった。

「話してもいいんだよ」

それだけ。

でも、その一言が、私にとっては、救いだった。

小さな声で、少しずつ、胸の内を吐き出す。

「生きてる意味が分からなくなることがある」

「何もできなくて、毎日が重い」

「誰かに迷惑をかけている気がして、息が詰まる」

泣きながら言葉を紡ぐ私を、夫はただ聞いていた。

うなずくことも、言葉を挟むこともない。

ただ、聞いている。

その事実だけで、心の奥の緊張が少しだけ解けていく。

「そうか……つらかったね」

初めて出た言葉は、短く、飾り気もないものだった。

でも、私の心には深く響いた。

「うん……ありがとう」

ぎこちなく答える私。

恥ずかしくて、申し訳なくて、でも言わずにはいられなかった。

その夜、私は初めて、弱さを見せることが怖くなくなった気がした。

完全に安心したわけではない。

でも、「ひとりではない」という感覚が、少しだけ形になった瞬間だった。

手を握るわけでも、強く抱きしめるわけでもない。

小さな存在の確かさ。

それだけで、私の心は、ぎりぎりのところで立っていられた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ