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私が双極性障害?!  作者: かかとにハイヒール
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第2章 自殺の思考の芽生え



最初は、「死にたい」という言葉ですらなかった。

もっと曖昧で、もっと逃げ道みたいな考えだった。

「この苦しさが、終わればいいのに」

「明日が来なければいいのに」

そんなふうに、未来を丸ごと消したい気持ちが、ふと頭をよぎる。

それを自殺願望だとは、まだ認められなかった。

認めてしまったら、何か取り返しのつかない場所に踏み込んでしまう気がしたからだ。

でも、考えはしつこかった。

無理に追い払っても、隙を見て戻ってくる。

夜、布団に入ると特にひどかった。

昼間はまだ、音や光や人の存在で紛れていた思考が、暗闇の中では一気に前に出てくる。

「生き続ける理由って、何だろう」

「この苦しさを抱えたまま、何十年も生きるの?」

答えの出ない問いが、何度も何度も繰り返される。

考えないようにしても、脳が勝手に同じ場所をなぞる。

まるで壊れたレコードみたいに。

怖かったのは、ある瞬間から、その考えに抵抗しなくなった自分がいたことだ。

以前なら、「そんなこと考えるな」「ダメだ」と必死に止めていた。

でも、鬱の底では、その力すら残っていなかった。

「そうかもしれない」

「もう、終わらせてもいいのかもしれない」

そう思ったとき、心が少しだけ軽くなる。

その感覚に、強烈な罪悪感と恐怖を覚えた。

――軽くなるなんて、おかしい。

――そんなふうに感じる自分は、もう壊れている。

理性は警鐘を鳴らすのに、感情はそれを無視する。

二つの自分が、頭の中で引き裂かれていく。

日中も、ふとした拍子に考えが入り込む。

洗い物をしているとき。

道を歩いているとき。

何気ない景色を見たとき。

「ここで消えられたら、楽だろうな」

そんな思考が、何の前触れもなく浮かび上がる。

自分でも驚くほど、自然に。

それが怖くて、また自分を責める。

「なんてことを考えているんだ」

「最低だ」

「周りの人の気持ちを考えろ」

でも責めれば責めるほど、心は追い詰められる。

逃げ場はどこにもなくなり、思考はますます一点に集中していく。

「生きる」か「消える」か。

世界が、二択に見え始める。

本当は、そんな単純じゃないはずなのに。

助けを求める選択も、休む選択も、治療という道もあるはずなのに。

鬱の思考は、それらをすべて見えなくする。

視野が狭くなり、感情が平坦になり、

「終わり」が唯一の解決策のように錯覚してしまう。

私はまだ、行動に移していなかった。

でも、思考は確実に一線を越え始めていた。

「死にたい」と口に出さなくても、

「生き続けたくない」という気持ちは、はっきりと存在していた。

そのことに気づいた夜、私はひとりで静かに泣いた。

怖かった。

自分の心が、どこへ向かっているのか分からなかった。

そして同時に、

「誰か、止めてほしい」

そんな弱い願いが、心の底にかすかに残っていた。

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