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第六話 ###「祈りが届かない場所」

出撃サイレンが、学院全体を引き裂いた。


「ノクス中型反応。市街地残存区域」

「民間人、避難未完了」


その言葉だけで、

この任務が“最悪”だとわかる。


リリィは前を向いたまま、

アリアを見なかった。


アリアも、何も言わなかった。


崩れた陣形


戦場は、瓦礫と炎に包まれていた。


「前衛、押し上げる!」


リリィの声は冷静だったが、

どこか硬い。


アリアは後衛で支援を行う。

だが――


(距離が、遠い)


いつもの感覚が、戻らない。


槍の光が、鈍い。


「共鳴率、低下……?」


通信に焦りが混じる。


予想外


ノクスが、突然分裂した。


「なっ……!」


挟撃。


前衛が崩れ、

リリィが孤立する。


「リリィ先輩!」


アリアは、命令を無視して走った。


(考えるな)


(間に合え)


届かない祈り


ノクスの一撃が、

リリィを弾き飛ばした。


地面に叩きつけられる。


「……っ!」


アリアの槍が、必死に光を集める。


「お願い……!」


だが、光は応えない。


――心が、噛み合っていない。


「下がって! 天城!」


リリィの叫び。


「来るな!!」


その声が、

アリアの足を止めた。


失敗


爆発。


視界が白に染まる。


通信が、途切れた。


静寂


瓦礫の中で、

アリアは目を覚ました。


耳鳴り。

視界の端に、倒れた人影。


「……先輩?」


血に濡れた制服。

動かないリリィ。


「やだ……」


手を伸ばす。


(私のせいだ)


(気持ちを、ぶつけたまま……)


救出


「生存者、確保!」


支援部隊の声。


担架に運ばれるリリィの手を、

アリアは離さなかった。


「……ごめんなさい」


答えは、返らない。


医務室前


扉が閉まり、

赤いランプが灯る。


アリアは、床に座り込んだ。


(もう一度、話したい)


(言えてない言葉が、たくさんある)


白い天井の向こうで、

リリィは、まだ目を覚まさない。


最悪の任務は、

まだ――終わっていなかった。

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