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第15話 ###「祈りは刃にならない」

1.完全沈黙


星槍ルミナス・ノートは、

何の反応も示さなかった。


起動コード。

共鳴誘導。

精神同調。


――すべて、失敗。


「……やっぱり、だめか」


アリアは力なく笑う。


胸の奥にあった“歌”は、

完全に静まり返っていた。


2.宣告


医療区画。


「共鳴率は、むしろ上がっています」


教官の声は淡々としている。


「ですが――

精神が、それに耐えられていない」


モニターには、

異常な数値。


「このまま出撃すれば、

精神崩壊の危険がある」


つまり――


「一時的な、

リリィ資格停止だ」


3.折れる音


アリアは、

何も言えなかった。


(私は……

役に立たない)


守りたかった。

隣に立ちたかった。


でも現実は、

彼女を戦場から引き剥がす。


「……はい」


その返事は、

自分でも驚くほど小さかった。


4.すれ違い


夜の回廊。


アリアは、

月白リリィとすれ違う。


「……先輩」


リリィは、

一瞬足を止めた。


「出撃、しばらくできないんだって」


知っている。


だから、

言葉が見つからない。


5.冷たい距離


「無理をするな」


リリィの声は、

優しい。


でも――

遠い。


「今は、休め」


それだけ。


アリアは、

俯いた。


(違う……

私が欲しいのは、そんな言葉じゃ――)


6.独りの夜


寮の部屋。


アリアは、

星槍を抱きしめていた。


「ねえ……」


答えは、ない。


「私は、

祈ることしかできないの?」


涙が、

一滴、槍身に落ちる。


7.壊れた共鳴


その瞬間。


――バチッ。


鋭い音。


星槍が、

完全に沈黙した。


光は消え、

ただの武器になる。


「……え?」


アリアの呼吸が、止まる。


(嘘……

嘘だよ……)


8.崩れる心


「私のせいだ……」


膝から崩れ落ちる。


「歌えない。

戦えない。

一緒にいられない……」


嗚咽が、

部屋に響く。


9.扉の向こう


その時。


――コン、コン。


ノック。


「……アリア」


月白リリィの声。


扉を開けると、

彼女は立っていた。


10.初めての本音


「……どうして、

一人で抱え込む」


リリィは、

アリアの手から星槍を見て、

息をのむ。


「……壊れた?」


「私が、壊したんです」


アリアは、

震える声で言った。


「私、

足手まといだから……」


11.抱きしめる


次の瞬間。


リリィは、

アリアを強く抱きしめた。


「違う」


低く、

必死な声。


「君がいない戦場は、

……ただの地獄だ」


アリアの肩が、

小さく揺れる。


12.祈りの意味


「祈りは、

刃にならないかもしれない」


リリィは、

アリアの額に額を重ねる。


「でも――

私を、立たせてる」


初めて、

距離がゼロになる。


ラスト


星槍は、沈黙したまま。


アリアは、

泣きながら笑った。


「……じゃあ、

祈り続けます」


リリィは、

静かに頷く。


「私が、

刃になる」


二人の影が、

重なった。

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