第十話 ###「あなたの隣、私の居場所」
朝の講堂は、静まり返っていた。
全リリィが整列する中、
教官が前に立つ。
「先日の任務における
月白リリィ・天城アリアの連携は、
極めて高い評価を得た」
ざわめき。
リリィは、背筋を伸ばす。
アリアは、少し緊張していた。
宣言
「よって――
両名を正式バディとして認定する」
一瞬、空気が止まる。
次の瞬間、
小さな拍手が広がった。
アリアは、思わずリリィを見る。
リリィは、静かに頷いた。
バディの証
式のあと。
控室。
教官から渡されたのは、
二つの小さな徽章。
「バディ章。
失くすな」
リリィは一つを受け取り、
もう一つをアリアに手渡す。
「……つけて」
「はい」
互いの胸元に、
同じ印が輝く。
言葉にする勇気
人がいなくなった控室。
リリィは、少し迷ってから口を開いた。
「アリア」
「はい?」
「……あなたが怖がるのを、
止めさせようとしてた」
「それ、違った」
アリアは、ゆっくり首を振る。
「一緒に怖がるって、
言ってくれたじゃないですか」
リリィは、
小さく息を吐いた。
「……ありがとう」
バディの意味
「ねえ、先輩」
「なに?」
「バディって……
戦う相手ってだけじゃ、ないですよね」
沈黙。
リリィは、
アリアの方を向いた。
「……帰る場所」
その言葉は、
とても静かだった。
触れる距離
屋上。
夕焼けが広がる。
風が吹き、
二人のバディ章が触れ合う。
「これからも……」
リリィが言いかけて、
止まる。
アリアが、続きを言った。
「隣、空けておきます」
リリィは、
ほんの少し笑った。
第一章・終わり
星が灯り始める。
二人は、
同じ空を見上げていた。
戦う理由は、
もう一つ増えた。
――守るべきは、世界だけじゃない。
あなたの隣が、私の居場所。
【第一章 完】




