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ステータスALL Sの受験生が170キロで高校野球を終わらせた件  作者: 白峰レイ
第1章 高校編

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35/103

第35話『怪物、聖地で173キロを解き放つ』

また、更新予約を忘れておりました……

申し訳ありません。

2話更新させて頂きます。

一回裏。


佐藤が四球で出塁し、球場の空気がざわついた。


そして二番――夏目孝太郎が、ゆったりと打席へ歩く。


その歩幅だけで、全国から集まった観客の空気がピリッと張りつめる。


夏目は、いつものように淡々とバットを構えた。


相手エース・志摩は全国屈指の技巧派。

普段はほとんど四死球がない、桜阪の柱だ。


その志摩が――なぜか謎のポーズで深呼吸している。


「あれ……?無のポーズ第7式……?」


相手ベンチから謎の単語が聞こえたが、佐藤はツッコミを飲み込んだ。


志摩がセットに入る。


初球。

インハイのストレート。


夏目は、迷いなく振った。


カキィィィィィィィンッ。


打球は甲子園のレフトスタンドへ一直線。

実況の声より先に、観客席の悲鳴が落ちる。


「入った!!」

「嘘だろ初球!?」

「軽く振っただけじゃん!!」


夏目はゆったりとダイヤモンドを回り、小さくつぶやく。


(……軽い)


本当にそれだけの感想だった。


桜阪ベンチでは、謎のポーズを決めていた隊長格の男子たちが崩れ落ちた。


「む……無のポーズが破られた……」

「志摩、集中してたはずなのに……!」

「これは……第3形態に移行すべきか……!」


どこの帝王だ、と佐藤は思った。


 


二回表。


夏目が淡々とマウンドへ戻ると、桜阪の四番が打席に立つ。


その瞬間、観客がざわついた。


理由は一つ。

四番の構えが意味不明だった。


足をクロス。

腕を掲げ。

なぜか仰向け気味。


(なんの構えだよ……)


佐藤の脳が処理を諦める。


四番は堂々と名乗るように叫んだ。


「俺こそ真の隊長……第四戦士!!」


完全に意味がわからない。


夏目は興味なさそうに投げた。


ズバァァァァン。


ボールがミットに収まった瞬間、四番は口をパクパクさせた。


「い、今の……見え……」


言い終わる前に二球目。

沈むカーブ。


「無理無理無理!!」


三球目。

ストレート。


四番は三球三振で崩れ落ちる。


桜阪ベンチでは隊長たちが真剣な顔で肩に手を置く。


「第四戦士……よく戦った……」

「敗北のポーズに移行しろ……」


(敗北のポーズってなんだ……)


 


以降も桜阪の打者は、

意味のわからないポーズを決めては、あっさり散っていった。


異様に揃った統率力でポーズを決め、

綺麗に三振していく姿は、もはや芸術だった。


観客も悟る。


――あ、これ完全試合ペースだ。


 


五回終了。


開明のリードは広がり、夏目の奪三振は二桁に届いていた。


夏目が肩を回しながら漏らした一言。


「……軽いな」


「さっきから、軽いってなんなんだよ!お前!!」


中村が悲鳴を上げる。


佐藤は夏目の背中を見つめ、胸がざわついた。


(こいつ……マジで全国を変える気だ……)


伊藤はスコアブックを握りしめる。

夏目の球速は、まだ上がっていた。


 


九回表。

スコアは9ー0。


球場全体が“記録の瞬間”を待っている。


桜阪最後の打者――隊長Zが、両手を天に掲げて打席へ。


「我が……終焉のポーズを見よぉぉぉ!!!」


観客から笑いが漏れた。


夏目は淡々とセットに入る。


投球。


ズバァァァァァァン。


173km/h。


隊長Zのバットが空を切る。

帽子まで飛んだ。


悲鳴と歓声が混ざった。


隊長Zは震えながらミットを指差す。


「……消える……ことあるんだな……」


二球目。

外角低め。

完璧なストレート。


三球目

内角高めのストレート。

バッターが思わず仰け反る。


ミットが破裂したような音を立て、審判の右手が上がる。


「ストライーク!! バッターアウト!!」


甲子園が揺れた。


実況が叫ぶ。


『完全試合!!

 夏目孝太郎!!

 なんと世界最速更新、173キロ!!

 甲子園初登板で完全試合達成です!!!』


観客の歓声と悲鳴の渦の中、

桜阪の隊長たちは整列し、謎の敬礼ポーズを決めていた。


「隊長Z……よく散った……」

「我々の誇りだ……」

「敗北のポーズ……発動……」


何が起きているのか、誰にもわからない。


夏目は淡々とマウンドから降りた。


(……ほんと、軽いな)


“準備運動”でもしていたかのように。


こうして開明高校は圧倒的すぎる完全試合で、

初の甲子園勝利を手にした。


怪物は――

聖地でも、怪物だった。



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