第84話 決着は……
声を上げる間もなく消えた霊異者。
あまりにも呆気ない幕引きだが、霊異者を滅せれたのは紛れもない事実。
「・・・・」
だが霊異者を倒したのにも関わらず、祭持さんは一人、険しげな顔をしている。
変だと言いたげで納得のいっていない表情。
その表情を見て、不思議に思った俺は未だに俺の腕に抱きついている改を無理矢理、なんとか剥がして、祭持さんの元へといく。
「祭持さん、どうしたんだ?」
俺が尋ねると、考える仕草をしている祭持さんは顔を上げて俺を見た。
「……おかしい。今の霊異者、あまりにも手応えが無かったんだ」
「手応えが……ない?」
手応えがない。祭持さんが言ったその言葉を聞き、一昨日の二人目の霊異者を思い出す。
「今のは恐らく偽物。本物は……別にいる」
「は?別にいるだ……」
突然、横の壁からそれは透けて出てくる。
幽霊のように壁など何もなかったかのように現れた。
ついさっき、祭持さんが滅した霊異者と同じ姿、同じ顔。
その霊異者と俺は目が合った。深く、どこまでも続くような漆黒の瞳。
俺が何か言うよりも先に、霊異者が俺の腹に蹴りを入れてくるのだった。
「がっッッ!?」
それは完全な不意打ち。
奥崎蓮は勢いよく吹き飛ばされ、少し遠くの壁に衝突する。その時に頭を強く打ってしまった為、意識を手放してしまった奥崎は動かない。
それを見た改が叫ぶ。
「お、奥崎!」
「「・・・・」」
味方が不意打ちでやられる。
そんな状況でも、祭持営と佳奈島清は冷静だった。突如として現れたもう一体の霊異者から目を離すことなく、既に構えている。
蹴り飛ばされてしまった奥崎蓮を見たい気持ちもあるだろう。
だが二人は長年の経験から、その一瞬のよそ見が霊異者との戦闘において命取りになるのを知っている。
祭持と佳奈島が己の武器、己の拳を構えて警戒する中、霊異者はその手に真っ赤な霊力を集めながら宙へと浮かび上がる。
霊異者の青白い手中に集まった霊力は、次第に蠢き始めると膨張し、形が作られていく。
赤黒い泥のような動きで出来上がったのは霊異者と同じ姿の者。
頭からつま先まで完全に形作られたそれは目を開き、唇を動かした。
「邪魔を……すルな」
二体目、いや三体目の霊異者。全く同じ姿の霊異者が生み出される過程を見た佳奈島は目を細め、呟く。
「……分身」
同じく、霊異者が作り上げられていく光景を見た祭持営は感心したのか、一度、「へぇ」と溢すと笑みを見せた。
「なるほどね。それが同じ霊異者が二人いた仕組み……君の霊能力か」




