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第82話 友を信じて

 猟奇的殺人者である霊異者に追われる二人。


 俺と改は必死の形相で逃げているが、後ろから追ってきている霊異者は、腹が立つことにニヤニヤと顔を歪ませて、この状況を楽しんでいる。


 走りながら顔だけ後ろに向けて、そんな霊異者の表情を確認した俺は、つい悪態をつくのだった。


 「なっ!?あいつ、笑ってやがる!?……くそっ、追いかけるのがそんなに楽しいのかよっ!」


 俺が発した言葉を聞いた改も振り向く。霊異者の笑った顔を確認した改はすごく嫌そうな顔で叫んだ。


 「うわっ!俺だけ追っている時よりも楽しそうにしてるじゃん!」


 ……は?じゃあ俺もターゲットになったってことか!?


 あの霊異者は俺のことを覚えていないのだろうか?一昨日は俺に向かって「邪魔するな」と言っていたのに、今は獲物にしか見えていない模様。


 再度振り返り、霊異者を見ると、振り返った俺を見て、霊異者は更に口角を上げた。その笑顔を見て俺は確信する。


 あぁ、そっか……俺もか。


 「くっそーー!俺もターゲットになったのかよぉー!」


 それからも嘆いたりしながら走り続ける二人。その間、霊異者はずっと、ある一定の距離を保って俺達を追ってくる。


 その気になればこんな距離、一瞬で詰めれるはずなのだがそうしないのはもちろん楽しむ為なのだろう。そう考えると嫌悪感が増してくる。


 そんな感じで無我夢中で霊異者から逃げていると、改が俺の方へと顔を向けてくるのだった。


 「なあ、奥崎!」


 「なんだ!?」


 「このままずっと走って行ったら行き止まりに着いてしまうけど、どうする!?どこで曲がる!?」


 どうやら改はこの道の先が行き止まりだということを知っていたみたいだ。


 普通なら行き止まりに行きつかないように逃げるが、俺が行きたい場所、祭持さんと佳奈島がいる場所は、普通は避けるべきであるその行き止まり。


 どう説得すれば、改は俺について来てくれるのか……腕を振り続けながらも考えてみるが全く思い浮かばない。


 「・・・・」


 急に黙った俺を見て、改は不思議そうに首を傾げる。


 「……奥崎?」


 改が俺の返事を待つ。改の視線を感じる中、それでも俺は考え続けるが……やはりいくら考えても良い説得の言葉が思い浮かばない。


 そうしている内に、別れ道を通り過ぎ、行き止まりまでの別れ道が次で最後になってしまう。


 時間が……ないっ!


 俺は考えが思いつかないまま改の顔を見た。


 「……な、なあ、改……もしさ、もしだけどさ、このまま一直線に突き当たりまで来てくれって言ったら、改は俺の言葉を信じてついてきてくれるか?」

 

 しどろもどろで自信なさげな言葉。『信じてほしい』のに弱々しい口調で言ったことを、言い終えてから後悔してしまう。


 そんな俺の言葉を聞いた改は、意味が分からないと声を上げた。


 「は、はあ!?そんなことしたら俺たち行き止まりでやられちまうじゃないか!」


 「だ、大丈夫だ。そんなことにはならない!」


 「何を根拠にそんなこと言って……」


 理解できないとばかりに俺を見る改。だが行き止まりに行く方法しか、改と俺が生き残れる道は無いのだ。


 「改。信じてついて来てくれないか?」


 お願いだから信じてくれ。


 その気持ちだけを一心に込めて、強い眼差しで改の目を見る。

 

 そんな俺を、改は数秒間じっと見つめ続ける。その瞳は揺れており、迷いが生じているのがよく分かる。

 

 奥崎蓮の言葉を信じて行き止まりへと行くか、次の別れ道で曲がるか。


 改はその二択のどっちを取るかを悩む。眉をひそめて強く目を瞑り、唸った。そんな改に、俺は祈るように言うのだった。


 「頼むよ、改」


 「……うむむ」


 命を脅かされているこの状況で、親友の言葉を信じるか、自分が思う、助かる可能性の高い道を選ぶか……どっちにするか。


 「……むむむむむ」


 眉間に皺を寄せて、下唇を噛む。悩みに悩み続けて、ついに改は決める。


 「…………ああ、もう分かったよ!お前の言う通りにしてやるよ!その代わり、今度、飯奢ってもらうからなっ!」

 

 改は若干、投げやりで「仕方ねえな!」と言うと、走る速度を上げた。そして俺に手招きをして歯を見せつけてくる。


 「ほら、早く行こうぜ!こんなホラーな追いかけっこ、すぐにでも終わらせたいからな!」


 その表情はいつもの改の表情。元気で明るくて、一緒にいるとこっちだって元気が湧いてくるような、眩しい笑顔をしていた。


 改の選択に俺は強く頷く。からっきしの体力に鞭を打ち、走る速度を上げ、怖さを消し飛ばそうと口角を上げて返事をした。


 「ああ!」


 直後、後方にいる霊異者が笑い声を上げた。


 「いーヒッヒぃー!フヒ……あはァ!」


 俺と改はその声に驚き、飛び跳ねる。二人の表情は怯えの顔へと戻ってしまっていたのだった。


 「「ひいっ!」」

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