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第81話 ターゲットにされている少年ってお前だったのかよ!?

 二人が交差点の奥の闇へと消えて行ってしまった後、俺は街灯の下で少年と霊異者を待っていた。


 既に二人がここを去ってから一分程経過したが、一向に少年と霊異者が来る気配はない。


 だが祭持さんが「もう少ししたら来る」と言っていたんだ。一瞬たりとも気を緩めることはできない。


 そんな風に考え、程よい緊張感に身を沈めていると、ふと遠くから微かに何かの音が聞こえてくることに気付いた。


 耳を澄ましてみると、誰かの息切れの声と足音が聞こえる。


 来たな。


 その音は俺から見て右側の道路の先から聞こえてきており、時間の経過と共に音も大きくなってくる。


 つまり、音を出している人物がここに近付いて来ているということ。


 俺は構えた。どんなものが飛び出してきても動揺なんかしないと心に決め、何が出てきても対応できるように拳を前方に添える。


 準備万端。


 俺は一度大きく息を吸うと、ゆっくりと吐き、唾をも飲み込んで交差点の角、それが現れるであろう道路を見据える。


 「ふぅー……」


 そして待つこと数秒。たったの数秒だったが、俺が感じた体感時間は数分にも等しかった。そんな長い長い時間を終えて、ついに姿を現すのだった。


 「もぉー!何で俺はこんな奴に追われてるんだよぉ!」


 壁の側面から出てきたその人物は、茶髪に灰色のパーカーを着た私服姿の少年。


 恐怖からか、目に涙を浮かべて泣き顔になっているのは俺の親友である竹一改ーーーー


 「って、はぁ?改!?」


 まさかの出てきた人物は俺がよく知っている人物、竹一改だった。


 え?何故!?なんで改が出てくるんだ!?


 理解が追いつかない。


 さっきまでの緊張感も全て吹っ飛び、構えていた手が無意識に下がる。そこでふと、祭持さんがさっき言っていた言葉が脳裏によぎった。

   

 『それは大丈夫だよ。霊異者も少年も、奥崎君なら連れてこれるからね』


 祭持さんのその時の物言いは、まるで俺が絶対に誘導できると確信している口ぶりだった。


 ま、まさか祭持さんは、ターゲットにされている少年が竹一改だということ、そして改が俺と仲が良いことを知っていたのか!?


 そう思考を巡らせていると、改が気付いたのか、俺の方へと顔を向けた。


 「誰かいないのかよぉー!って、んん!?」


 泣き顔の改と目が合う。互いが互いに驚きの表情を見せており、二人とも口をポカンと開けて呆けた顔をする。


 だがそれも一瞬、改が俺を指差して大声で叫ぶのだった。


 「お、奥崎ぃ!?なんでこんな所にいるんだよ!」


 「そ、それはこっちのセリフだっ!何でお前がここにいるんだよ!?」


 「は、はぁ!?何でって、別に俺もいたくてこんな夜道にいる訳じゃねえよ!家に居たら家族にも危害が……って、と、とりあえず奥崎、逃げろっ!奴が追って来てるんだっ!」


 そう言い、俺の方へと全速力で駆けてくる改。


 俺は一瞬、奴?奴って誰だ?と疑問に思うも、それが霊異者であることをすぐに思い出す。


 改が俺の袖を掴む。早く走れと言わんばかりに俺の服を引っ張り、それにハッとした俺が走ろうと体を反転させようとした……その時、


 霊異者が交差点へと飛び出してきたのだった。


 それは黒いマントを羽織った者。


 所々穴が空き、ボロボロになったマントが全身を覆い隠すようになびいている。その者の顔は青白い。生気が全く感じれなく、光の当たり具合からか、瞳、眼球共に真っ黒。


 だが、その目が俺達二人を見ていることは分かる。

 

 霊異者はマントの中に隠れていた腕を前へと出す。顔と同様に腕も青白い。その腕を俺と改の頭に目掛けてーーーー


 「お、おわあぁぁぁぁー!」

 「う、うわあぁぁぁぁー!」

 

 霊異者の手が二人を捕まえる前に、俺と改は一目散に走り出した。


 がむしゃらに腕を振り、足を動かす。二人して、これでもかというくらいに全力で走り、霊異者から逃げ仰せようと必死に叫ぶのだった。


 「いやぁぁぁぁー!」

 「ぎゃぁぁぁぁー!」


 まるで女性かと思うような高音の発狂をする竹一改と喉が壊れるのではないかと言うくらいに汚い声を出す奥崎蓮。


 そんな突然の霊異者の登場に、思わず何も考えずに走り出してしまった奥崎だったが、偶然にも走り出したその道は、祭持さんと事前に決めていた誘導するための道だった。


 それを遠巻きで見ている二人の人物。


 佳奈島は遠くで走っている奥崎蓮と竹一改をじっと見ている。その表情は無であり、何を思っているのかは分かりやしない。その隣にいる祭持さんはというと……手を叩いて大笑いをしていた。


 「あははっ!あははははっ!いやー、あの二人、中々に息が合ってるね!さすが、親友なだけある」


 知らない人の家の屋根上で転げ回る祭持。彼女が言った発言に、佳奈島はピクリと眉を動かした。


 「……ねえ、その親友って奥崎蓮から教えてもらったの?」


 「……いいや?教えてもらってなんかいないよ」


 「……そう」

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