第79話 作戦会議とはなんぞや
「……それじゃあ、作戦内容に移ろう……と、言っても既に案は私が考えてきているから、確認という体で聞いておいてくれ」
暗い雰囲気になってしまった中、祭持さんが雰囲気を変える為に明るげに言う。その言葉を聞き、俺は気を取り直して祭持さんヘと顔を向けるのだった。
「今回の霊異者は二体いる。どういう仕組みか分からないけれど、一体だと思っていた霊異者が一昨日に二体いることが判明した。よって、私達は二手に分かれて各々倒すことにする」
祭持さんが腕を組み、若干、口元を緩めながら言葉を口にする。そんな中、唐突に佳奈島が手を挙げた。その顔は何か言いたげだ。
「……ねえ」
「なんだい?佳奈島君」
「二体って、片方が本物でもう片方は偽物ってこと?」
「それはどうだろうね。戦ってみないと分からないかな。佳奈島君、君の言う通り、一体が本物でもう一体は偽物かも知れない……でも、もしかしたら両方本物だったりするかもね」
「……そう」
今の祭持さんの回答で満足したのか、佳奈島はほんの少し頷くと上げていた手を下げる。祭持さんはそれを見て、中断していた話を再度、喋り出した。
「分け方はこうだ。私と奥崎君、そして佳奈島君の三人で一体。もう一体には外蘭一人で滅してもらう。斎藤君はいつもやっている通り、外蘭の傍付きを頼んだよ」
「はい、分かりました」
「あぁ?おい祭持ぃ、俺は一人かよ」
三人と一人に分かれる。その案に納得がいかないのだろう。
外蘭は眉を顰めて、祭持さんへと顔を飛ばす。だが、祭持さんは顔を飛ばされても何とも思わないのか、普通の表情……いや、むしろ挑発するかのようにニヤニヤと表情を歪ませてみせる。
「んん?何だい?もしかして外蘭、一人で戦うのが寂しいのかい?」
明らかに小馬鹿にしている言動。その言葉を聞いた外蘭が拳を前に出し、片足をテーブルの上へと置いた。
「はぁ、何ほざいてんだぁ!?んなわけねぇだろうがぁ!霊異者一体くらい、俺一人で充分だぁ!」
声を高々にして叫ぶ外蘭。そんな外蘭を祭持さんは雑にあしらう。
「あ、そう。じゃあ頼んだよ」
「祭持ぃ!お前ぇこそ、霊異者一体くらい一人で……」
「師匠、足やめて」
「外蘭様、恥ずかしいです」
両隣の女性陣から声が上がる。
佳奈島と三輪さんは一様に凄く嫌な顔を外蘭にむけており、二人のその顔を見た外蘭は硬直し、数秒固まったかと思うと、テーブルに乗っけていた足をそっと下ろした。
「……ちっ」
そんな意外とも呼べる一部始終を見ていた祭持さんは、外蘭が大人しく従っているのが相当面白かったのか、顔を俯かせて笑いを堪え始める。
そんな祭持さんを見ていると俺も釣られて笑いそうになるが、外蘭が凄い形相で俺を睨んできたため、顔を逸らして明後日の方向を見るのだった。
「……おい、祭持ぃ!霊異者の場所は分かってんのかぁ?」
恥ずかしさを誤魔化すためか、少し大きな声で祭持さんへと尋ねる外蘭。祭持さんは少し間を置いて、顔を上げた。
「…………もちろん、分かっているよ。霊異者がどこにいるのか……それも二体ともね」
「はっ、そうかよ。だったら、早く行こうぜぇ。こんなとこに長いはしたくねえからなぁ!」
外蘭はそう言って、背伸びをし始めた。もう外に出る気満々な外蘭に、俺は思わず目を細めてしまう。
二手に分かれるということが決まっただけでまだ作戦会議と呼べるようなことはしていないと思うのだが……まあ、祭持さんが引き留めるだろう。
外蘭を見て、そう思う俺だったが、祭持さんは意外なことに外蘭の言葉に頷いた。
「そうだね、これくらいで切り上げようか。じゃあ、これにて作戦会議はお終いだ……それじゃあ早速、滅しに行こうじゃないか」
「……うん」
「分かりました」
祭持さんの言葉に、佳奈島と三輪さんも頷く。それを見た俺は困惑してしまう。
「……え?」
あれ?これで終わりなの?作戦会議って、こういうものだったか?
何度も皆の顔を見返すが、四人とも特に何も思うことはないのか、せっせと解散し始める。
皆が満足気に帰っていく中、俺は一人、テーブルの前で頭にハテナを浮かべるのだった。
「…………作戦……会議は?」




