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第78話 今回の霊異者について

 恐怖の怯えから険しい顔をしていると、祭持さんはこちらに顔を向け、ニヤリと笑ってみせる。


 俺の抱いている恐怖に追い討ちをかけるようにゆっくりと言葉を続けるのだった。


 「そう……彼は比較的明るく活発な人を狙って殺す殺人鬼。実の兄である麦原太陽と共に、活気のある人をターゲットにして、その人が夜道を歩いている時に殺すということを繰り返していたんだ」


 殺すこと自体を目的とした殺人。


 なんでそんなことをするのか、俺には到底理解ができない。その男はきっと殺すことに何か快楽を見出したのだろう……イカれているな。


 「一人が、暗い道を歩くターゲットに刃物を持って近づき追いかける。逃げ出した先でもう一人が待ち伏せをし、追い詰める。何度も何度も逃しては追いかけるのを繰り返して、ターゲットの心が恐怖で一杯一杯になったその時殺す……というのをしていたそうだよ」


 祭持さんの話を聞いて俺は一部始終を想像してしまう。


 人をじわじわと恐怖へと陥れて恐怖が最高潮に達した時に殺害する。その時の殺人犯、麦原翔は一体どんな笑みを浮かべているのだろうか……くそ、胸糞悪い。


 つい無意識の内に拳を強く握ってしまう。


 一人、苦虫を潰したような顔で伏せていると、テーブルに何か置かれた音が聞こえ、俺は顔を上げた。


 見ると、どこから出してきたのか、祭持さんが一人の少年らしき人物をかたどった小さな石像をテーブルに置いていた。


 祭持さんはその石像に向かって霊力を纏わせた指を弾いた。するとその石像は、一人でにテーブルの中央へと向かい始める。


 「現在、その霊異者は一人の少年に狙いを定めている。理由はさっきも言った通り、殺す快感を味わうためだ」


 トコトコとテーブルの上を歩いている石像を見ていると、何か気になることがあったのか、俺の向かいにいる佳奈島が祭持さんに尋ねる。


 「……ここで話してて、大丈夫なの?」


 「大丈夫とはどういうことだい?」


 「その霊異者、今この瞬間にもその少年を、殺したりしないの?」


 「それは問題ないよ。今回の霊異者は、ターゲットを恐怖に陥れてから殺すという猟奇的な奴だからね。狙いを定めてすぐには殺さないんだ……数日かけてゆっくりとターゲットの心を恐怖で埋めていく。その過程も、奴にとっては快楽になるのだろう」


 祭持さんはここにいない霊異者への嫌悪感からか、若干顔を歪める。その表情を見た外蘭が何故か「はっ!」と言って笑っているが、俺にはこの流れで笑えるところがあったのか理解できない。


 そうこうしているうちに、トコトコ歩いていた石像は中央に辿り着き、その足を止めた。


 祭持さんは言う。


 「前々回に殺された被害者は、十二日前の深夜。前回の被害者は六日前の深夜だった……」


 猟奇殺人鬼である霊異者の二人の被害者……それと滅しようとして失敗してしまった一人の除霊師。計三人の死者。もう既に三人が奴の手にかかっている。


 祭持さんが指を鳴らす。


 するとテーブルの中央にあった少年の石像が砂のように崩れ、跡形もなくなる。


 祭持さんは勢いよくテーブルを叩く。


 叩くと同時に伏せていた顔をゆっくりと上げ、俺達四人に告げるのだった。


 「ターゲットの少年が殺されるのは前回の殺人から六日後……つまり今日の深夜だ」


 「「「・・・・」」」


 「いや、全然問題無くないじゃないかよ」


 祭持さんの言葉で皆が黙りこくる中、俺はついツッコミを入れてしまう。


 さっき、佳奈島に「今すぐ倒しに行かなくていいのか?」と言われて「問題無い」とか言ってたけど、今すぐ向かわないと駄目じゃないか。


 だって今日殺されるんだろ?もう夜で辺りも暗いし、いつ殺されてもおかしくない。


 そんな焦りを募らす俺とは裏腹に、祭持さんは何故かいつも通りの余裕を見せている。


 「別に問題はないだろう?夜は夜でも、霊異者は深夜に殺すのだからね。まだ時間はある……今日の内に霊異者を滅すればそれでいいんだ」

  

 「いやいや祭持さん、今までの二人が深夜に殺されたからと言って、今回、霊異者がまた深夜に殺そうとするとは限らないだろ。それに一昨日、俺たちはあの霊異者と相対した。もしかしたらあの霊異者が俺達に邪魔されるかも知れないと思って、ターゲットを早めに殺すかもしれないじゃないか」


 その可能性は十二分にあり得るのでは?


 そう思う俺だったが、俺の話を聞いた祭持さんはあり得ないとばかりに首を横に振る。


 「それは無いよ。奴は殺すのに異常な程、強い拘りを持っているんだ。殺すのを遅らせるのはともかく、時間を前倒しにして殺したりはしないだろう」


 「だとしても……」

 「前にも言ったけどね、奥崎君。霊異者は並半端な想いじゃ、霊異者にはなれないんだ。今回の霊異者は『まだ殺したい、もっと沢山殺したかった』という異常なほど強い想いから霊異者になった……だから、絶対に時間を早めて殺したりなんかはしないんだよ……人を恐怖、戦慄、絶望の最高潮に陥らせ、殺す……これが今回の霊異者の、存在意義だ」


 は?なんだよ、それ……人を殺すためにいる?人を殺す快感を味わうためだけに霊異者になったって言うのかよ。


 「そ、そんなの……元人間がやることじゃないだろ」


 祭持さんの言葉を聞き、俺は思わず絶句してしまう。そんな驚きから目を見開いている俺に、外蘭が忠告だと言わんばかりに目を細めた。


 「おい……元は人間だからって、霊異者の思考が人のそれだと思うんじゃねぇぞぉ。今回の奴は特にそうだが、霊異者っていうのはなぁ、大体の奴は狂ってやがんだよぉ」


 「……そう」


 外蘭の横で佳奈島も頷いている。


 「そういうことだよ、奥崎君。まあ、今は納得できなくても、いつかは絶対に嫌でも分からせられる日が来るよ……霊異者は霊異者なのだということがね」


 「・・・・」


 俺はつい黙ってしまう。もう何年も霊異の世界に触れている祭持さん達が言うのだからそうなのだろう。だけど、それを聞いても……


 どうしても霊異者がそういうものだと割り切れない、納得がいかない。

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