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第76話 束の間のくつろぎ

 「それで奥崎君。君は今日の夜、何か予定とかあるかい?」


 何気ない質問。これが祭持さんからの質問でなかったのなら、特に警戒することのない質問だっただろう。


 だが、今、質問をしているのは祭持さん。この何気ない質問には、何かあまり良からぬ意図があるに違いない。


 いつもの俺ならそう考えるだろう。だが今は佳奈島との戦いの後であり、外蘭が俺を狙わなくなったという安心感に浸っていたところだ。

 

 祭持さんの質問に、俺は何も考えずに返事をしてしまう。


 「え?別にないけど?」


 …………あっ、用事あるって言えば良かったかも。


 言葉を口に出した後に答えなければ良かったと思い、後悔が押し寄せてくるも既に遅い。


 俺の言葉を聞いた祭持さんはニヤリと笑うと俺と佳奈島の前に回り込んでくる。その一連の動きを見ながら俺は思う。


 ……ああ、また俺は何かに巻き込まれるんだろうな。


 ここ数日間、祭持さんと接していて、何となく次の展開というのが読めてきた。祭持さんが次に言う言葉は、きっとろくでもないことなんだろうと。


 そんな俺の期待を裏切ることもなく、祭持さんは口を歪ませて言うのだった。


 「じゃあ、夜の八時に外蘭との会議が決まったから、私と一緒に一昨日行ったビルの廃墟に向かおうじゃないか。前に出来なかった会議を今度こそやるためにね」


 一昨日の会議、今日やるのかよ……しかも俺も入れて。


 「……はあ、マジかよ」


 「マジだよ?」


 ため息をつき、肩を落とす俺にニマニマとうざったらしい笑みを見せつけてくる。


 そんな表情に若干の苛立ちを覚えながらも、断れないことが分かっている俺は了承するのだった。


 「分かったよ。行くよ」


 正直、外蘭と顔を合わせるのは気が引ける。もう外蘭に狙われないとは言え、一昨日はろくに会話を交わすこともなく有無言わず殺しにかかられたのだ。会うことに躊躇ができるのも当たり前だろう。

 

 本当は行きたくないが、行くと言った以上行かなければいけない。


 「それにしても急だな」


 一昨日に会議ができなかったとは言え、別に約束をこぎつけた今日でなくてもいいのではないのか?


 そう思い、尋ねると祭持さんは腰に手を置き、前のめりでこちらを見てくる。


 「そりゃあね。さっき、外蘭と話して決まったんだ……それに今日じゃないと間に合わないしね」

 

 今日じゃないと間に合わない?


 まるで今日、何か外せないことがあるかのように言う祭持さん。


 俺には祭持さんが口にした言葉の最後の方だけ、心無しか低い声色で言っているように聞こえた。『間に合わない』と言う言葉に引っかかりを感じた俺は尋ねる。


 「間に合わないって、何がだよ?」


 訝しむ表情で祭持さんを見る俺に、祭持さんは手を伸ばすと人差し指を俺の唇に添えて言うのだった。


 「それは……会議で話すよ」


 まるで会議でのお楽しみと言わんばかりに口を歪ます祭持さんに、俺はつい眉を顰めてしまう。


 別に今言ってもいいと思うんだがな。


 「と言うことで、幼女君。後から外蘭から知らされると思うけど、夜の八時に会議が決まった。遅れないで来るんだよ」


 俺の唇から指を離し、佳奈島の方を向いた祭持さんは佳奈島に語りかける。


 今まで俺の隣で静かにしていた佳奈島は、祭持さんに幼女と言われたことが不快だったらしく、若干嫌な顔をして祭持さんを見る。


 「……幼女じゃない」


 その言葉が聞こえなかったのか、あるいは聞こえてはいたけれどスルーしたのか……祭持さんはニヤリと口を歪ますと、佳奈島を見ることなく歩き、俺に手招きをするのだった。


 「ほら、戻るよ奥崎君」


 その言葉を聞いて俺はベンチから立ち上がる。俺が買ってあげた大量のチョコが入ったビニール袋を大事に抱えている佳奈島の方を向いて手を振った。


 「じゃあな、佳奈島」


 「うん。また、廃墟で」


 佳奈島は俺の言葉に頷きを見せると、ビニール袋からチョコが入った袋を取り出し、開けるともぐもぐと食べ始める。佳奈島の目はもうチョコしか捉えていない。


 はは、まだベンチに座っているつもりらしい。

 

 そんな佳奈島を見て、俺は苦笑いを浮かべるのだった。




 佳奈島と別れた後、一度、祭持さんの家である迷いの館へとに戻ってきた。


 てっきり祭持さんの家で何かする為に連れてこられたとばかり思っていた俺だが、どうやらそうではないらしい。


 ただ佳奈島との戦闘で消耗した俺の体力と霊力を回復させるため、祭持さん曰くこの街で一番安全な場所である迷いの館で休んで欲しくて連れてきたとのこと。


 相変わらず不思議な空間である赤と黒のみで彩られた部屋に案内される。


 何故置いてあるのか分からない大きなグラスと祭持さんがいつも座っているソファの他に、今回はもう一つソファが置いてあった。俺はそのソファに腰掛ける。


 部屋に戻ってきた祭持さん直々に、会議に行くまでの時間、この部屋でくつろいでいてくれと言われた俺は祭持さんの言葉通り、時間になるまで例の部屋でくつろぎ、しっかりと自分の体を休ませるのだった。


 あ、ちなみにご飯を食べさせてもらったりもした。祭持さん手作りの特製チャーハンをな。


 控えめに言って、めちゃくちゃ最高だった。

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