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第74話 秘密が多い女。

 「さあ?何だろうね?」


 ……はっ、教える気は無ぇのか。

 

 教えてくれない祭持をしばらく睨み続ける外蘭だったが、聞き出すのは無駄だと判断したのだろう。諦めて別のことを聞くのだった。


 「はあ……と言うか、そもそもソレを見せても良かったのかぁ?懺悔薄刀を知ってる奴なんて十人もいねぇだろ。いつかあのガキはお前の元から離れるっていうのによぉ、いいのかよ」


 祭持は、懺悔薄刀を手にした日から今日までその存在をひた隠しにしてきた。


 知らせなければいけない者、状況が状況故に知られてしまった者以外には一切その刀を見せてこなかった……その徹底ぶりは驚嘆に値する程。


 それなのに関わらず、祭持は奥崎蓮に懺悔薄刀の存在を教えた……いや、自ら見せた。そのことに外蘭は戸惑いを隠せなかったのだ。


 外蘭の言葉を聞いて、祭持は目を細めると、あり得ないとばかりに首を横に振る。


 「私の元を離れる……ね。それは無いよ。だって私は、あの少年を今後一切、手放すつもりはないからね」


 祭持は軽い口調でそう言っているものの、その目は本気。冗談で言っている訳では無い。


 祭持営は、本当に奥崎蓮をこの先ずっと近くに置いておくつもりなのだ。


 祭持は昔から、特定のものに執着する癖があった。それは面白い存在か、あるいは己の為のどっちか……どっちにしろ、あの奥崎って言うガキには何かあるのは間違いねぇ。俺に言ってない何かがなぁ。


 外蘭は目を細めて祭持を見る。


 「何でそんなにあのガキに執着するんだよ

。あのガキは確かに変わった存在だが、お前の話を聞く限り、ただ霊気を持っている人間ってだけじゃねえか……それとも何だぁ?他に何か、あのガキにはあるってかぁ?」


 「……さあ?どうだろうね」


 やはり教えてはくれない。


 ちっ、つまんねぇな。


 「クソが。相変わらず隠し事の多い奴だぁ」


 首の後ろに両手を置き、苛立ちを見せて毒を吐く外蘭。それを見た祭持は当然とばかりに笑う。


 「ふっ、それはそうだろう?女っていう生き物は隠し事が多い生き物なんだよ」


 「あっそぉかよ」


 ……もうこれ以上は何を聞いても答えてくれねぇかぁ。

  

 他に尋ねることもない外蘭は、もう帰れとばかりに手をヒラヒラと動かす。


 目的を達成した祭持としても、もうこれ以上ここに留まっておく理由が無いため、外蘭のそれを見て、踵を返した。


 「それじゃあ今日の午後八時、ビルの廃墟に集合してくれ。一昨日にできなかった作戦会議を行うから、くれぐれも時間厳守で頼むよ」


 「ああ、分かった分かった」


 本当に分かっているのか分かっていないのか……祭持は適当に返事をする外蘭から目を離し、三輪を見る。


 その眼差しは優しげに見えるが、瞳の奥に光が宿っていない。まるで、お前は分かっているな?と言っているように見える。


 「斎藤君、遅れないように頼むよ」


 「はい。必ず向かいます」

 

 しっかりと頷き、お辞儀をした三輪を見て、祭持は満足したのか、微笑みを残すと公園を出て行ったのだった。


 「それじゃあ、さようなら」


 「「・・・・」」




 しばらくすると辺りに虫の音が聞こえ始める。さっきはすっかり鳴りを顰めていたのに、今は元気に鳴いている。


 それはつまり、祭持さんがこの公園から出ていったことを意味する。


 公園に残っているのは三輪と外蘭の二人だけ。三輪は、ベンチに座り黄昏ている外蘭へと声をかけた。


 「外蘭様」


 外蘭は三輪の言葉に、顔を向けることなく返事をする。


 「なんだぁ?」


 「霊気……私の覚え違いでなければ、霊気というのは霊異者の源、想いから漏れ出るエネルギーのこと。霊異者にとっての溢れ出る生命エネルギーではありませんでしたか?」

 

 「ああ、そうだぁ」


 「霊異者にとって、想いは生命そのもの。想いから漏れ出る霊気は、霊異者がまだ存在していると言わしめるような、言わば証拠。つまり、あの少年、奥崎蓮は霊異者特有の想いをも身に込めてると言うこと。それは心臓と想い、二つの命を所有していると同義」


 「・・・・」


 「そんなことあり得るのでしょうか?人と霊異者の構造は全くの別物、別の存在です。もし、あり得るとしても、それら、霊気を持った人間……奥崎蓮は、果てしてそれは人間と呼べるのですか?」


 「…………さぁな、俺も知りてぇよ」

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