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第68話 誕生日パーティー

 その日の夜。私はパジャマ姿でソファの上で両手を上げていた。理由は、


 「今日寝たら、私の誕生日だぁ!」

 

 そう。明日はついに私の誕生日。プレゼントに美味しい料理にケーキが食べれるのだ。


 明日はプレゼントにケーキっ!早く明日にならないかなー!楽しみ!楽しみー!


 浮かれ過ぎて、体を左右に揺らす私。そんな私に、隣に座ってテレビを見ていたパパが微笑んだ。


 「そうだな。ついに明日、清の誕生日だな」


 はしゃいでいる私の頭を鷲掴みにして、くしゃくしゃと撫でてくる。


 パパの大きな手で雑に撫でられるのは私は嫌いじゃない。目を細めて、幸せそうな顔をする。


 「楽しみにしてろよ?誕生日パーティーはきっと豪勢だからなっ!」


 「うんっ!楽しみっ!」


 ニヤリと笑うパパに、歯を見せて笑う私。そんな私とパパの話を台所から聞いていたママは、何かを思い出したのか、動かしていた手を止めた。


 「あ、そうだわ。清」


 「何、ママ?」


 ママの声で私は振り向く。台所から顔を出したママは柔らかい表情を浮かべる。


 「明日のお誕生日会、みなちゃんを誘ってみたらどう?」


 「え?」


 え?みなちゃんを、お誕生日会に誘う?


 突然の言葉に、私は頭が追いつかず、固まってしまう。


 みなちゃんをお誕生日会に誘うってことは……みなちゃんと一緒にご飯を食べれるって……こ、と。


 数秒遅れて、ママの言っていることが理解できた私は、目を光らせてソファから立ち上がったのだった。


 「えぇ!いいのっ!?」


 「いいわよ。人数が多い方が楽しいし、清、あなたも嬉しいでしょ?」


 「それもそうだな!」


 ママの言葉にパパも頷く。


 今までのお誕生日会はパパとママと私の三人だった。そんなお誕生日会もすっごく楽しかった。けど、お友達と一緒にお誕生日会をやれるのはきっと、もっと楽しいと思う。


 みなちゃんと一緒にお誕生日会ができる!


 嬉しすぎて、私は飛び跳ねた。


 「うん!やったー!ありがとう!」


 明日はみなちゃんとパパとママと私で、お誕生日会ができるっ!


 その日の夜は、興奮からちょっぴり寝るのに時間がかかったのだった。




 次の日。公園に行った私は、みなちゃんと遊び尽くすと話を切り出した。

 

 「ね、ねえ、みなちゃん!」

 

 初めて、友達を家に誘う。しかも自分のお誕生日会に。


 私は緊張で力みすぎて目を瞑ってしまう。


 「うん?何?」


 「きょ、今日ね!私の誕生日なんだ!も、もしよかったら……た、誕生日パーティーに来て

……くれない?」


 断られたらどうしよう。そう思う私だったけど、恐る恐る目を開けると、みなちゃんは目を光らせて私を見ていた。


 「いいの?行きたいっ!私も誕生日を祝いたいっ!きよちゃんの誕生日、私にも祝わせてよっ!」


 両手を掴んでそう言うみなちゃん。こんなに嬉しがるとは思っていなかった私は、嬉しい気持ちで一杯になる。


 「じゃあ、行こっ!」


 「うんっ!」


 私はみなちゃんの手を握る。家に連れて行こうとみなちゃんの手を引っ張った。


 私は嬉しくて、ついスキップで歩いてしまう。大きく手を振り、笑顔で向かう。後ろにいるみなちゃんも笑みを見せている。


 けれど、その笑みは私の見せる笑顔とは真逆の笑み。


 「……ふふ、ふふふっ」


 みなちゃんは少し前を歩く私を見て、可笑しそうに笑う。口を大きく歪ませて笑い、それを見た野良猫が逃げて行く。


 私はそんなみなちゃんの表情に気付く事はなかった。




 「ただいまー!」


 「「おかえりー」」


 家の玄関のドアを勢いよく開けると、少し遠くから二人の返事が戻ってくる。


 どうやら、パパとママはリビングにいるみたい。


 「こっちだよっ!」


 靴を脱いだ私は、みなちゃんの手を引いてリビングへと向かう。


 「パパー!ママー!お友達のみなちゃんを連れてきたよっ!」

 

 ドタドタと廊下を渡り、リビングへと入った私達。そこにはいつもと違う光景が広がっていた。


 「わあっ!」


 あまりの凄さに私は目を見開く。


 いつも家族皆で食べているテーブルの上には、いつもだったら絶対に並ばない量の種類の料理が置いてあり、その中央には大きなホールケーキ。


 他の場所には風船やら和紙で作られたお花が沢山置いてある。そして天井には色とりどりの星や玉なんかが天井一杯に散りばめられていた。


 色鮮やか部屋。まるでここだけ違う世界のように感じる程、凄まじい。


 「すごい!すごいよっ!お部屋がすごく綺麗だよっ!」


 私は嬉しさのあまり飛び跳ねてしまう。


 そんな私を見たパパは、誇らしそうに鼻を摩る。


 「そうだろう?お父さん、張り切って天井まで装飾してみたんだ。大変だったけど、清のそんな顔が見れて疲れも飛んでいったよ。いやむしろ、元気が湧いてきたな、ははっ!そして料理は全部ママが手作りで作ったんだよ」

 

 「そうなの!?」


 「そうよ」


 ママが頷く。


 私はパパとママの説明を聞いて、テーブルに並ぶ数々の料理へと駆け寄ると、背伸びをして覗き込んだ。


 「わあ!これ全部ママが作ったの!?すごく美味しそう!ね、みなちゃん!」


 「うん!すごく美味しそうだよ!」


 みなちゃんも、私と同じように背伸びし、料理を見ている。その表情は笑っている。


 「ありがとう、パパ、ママ!私、すっごく嬉しい。幸せっ!」


 私は二人に抱きついた。大好きなパパとママがもっと好きになった。


 私がぎゅーっと強く抱きつくと、パパとママを優しく抱きしめ返してくれる。


 パパとママ、二人の温もりが心地よい。


 しばらく抱き合っていると、不意にパパが私に声をかけてきた。


 「ところで清。お友達は……」


 「あ、そうだ!」


 そう言えば、みなちゃんの紹介がまだだった。私はみなちゃんの元へと駆けると手を繋ぎ、パパとママの前まで引っ張った。


 「この子がみなちゃんだよ!公園で出会った私のお友達!」


 私は笑顔でそう言う。


 パパとママはみなちゃんを優しく迎え入れてくれる。そう思っていたけど、何故かパパとママが何やら渋い顔を見せる。


 「パパ?ママ?」


 なんでそんな顔を見せるのか分からない私は不安に駆られる。


 そんな私にパパは言った。


 「な、なあ、清。悪いんだが……その、お友達のみなちゃんはどこにいるんだ?」


 「……え?」

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