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第48話 不審者?いいえ、親友です。

 ビルの廃墟の外は、もうすっかり暗くなっていた。周りには心許ない街灯が一つあるだけでそれ以外は見当たらず、やけに真っ暗に感じる。それに加え、街の外れだからか、やけに静かで薄気味悪いと思ってしまう。


 「いい時間になってしまったね」


 「そうだな…………ん?」

 

 祭持さんと二人、気味の悪い夜の景色に目配りしていると、ふと、建物と建物の狭い隙間に何かが挟まっているのが見えた。


 ……なんだ? 尻?


 薄暗い道路の端に何故かは分からないが、誰かが身を隠すようにしゃがみ込んでいるみたいだ。こちらに背を……いや、お尻を向けてしゃがんでいる。そして何故か、その尻は小刻みに震えている。


 「なあ、祭持さん、あれ……」


 俺が、怪しい物を見る目つきでその尻を指差して祭持さんに伝えると、祭持さんも不思議な何かを見る目で、その尻を見た。


 こんな時間に、いや、こんな時間でなくともあんなことをしているのは変過ぎる。祭持さんはそんな尻を見て、顎を摩った。


 「随分とスリムな尻じゃないか。男の尻か?」


 観点はそこかよ。


 「なんであんな場所に居るのか?」とか、「ん?怪し過ぎるな……」ではなく、男の尻か女の尻かどっちなのかと呟く祭持さんに、思わず呆れてしまう。そんな俺を置いて、祭持さんはその人物の方へと向かっていったのだった。


 特に警戒心も無く近づく祭持さんに、遅れて俺もついて行く。


 周りが静かなせいで俺と祭持さんの靴音がよく響いているのに関わらず、俺と祭持さんが結構近づいても、その人物は気付く様子はなく、尻を震わせている。


 すぐ後ろまで近づいた俺は、震えている尻に声を掛けた。


 「なあ、あんた」


 「ひぃぃぃぃ!!」


 声をかけると、震えていた尻……じゃなくて、震えていたその人物は一際ビクリと体を震わせた後、顔を上げた。その顔は今にも泣きそうな顔をしている。


 「そんなところで何をやってるんだ……って、あれ?改?」


 「許してくれよぉぉぉ!俺が何をやったって言うんだよぉぉ!…………へ? 奥崎?」


 夜に突然出没した震える尻の人物。その正体は意外な人物で、正体は俺の学校のクラスメイトであり親友の竹一改だった。てっきり酔っ払ったおっさんだと思っていた俺は、意外過ぎる正体に目を見開く。


 「え?か、改、こんなとこでなんで縮こまっていたんだ?」


 改のおかしな行動に動揺が隠せない俺は、つい言葉を詰まらせてしまう。俺の言葉を聞いた改は、目を逸らして俺に聞こえないくらいの声量で呟いたのだった。


 「……どうせ、言ったって信じてもらえねえよ」


 「え?なんて?」


 改の声が小さすぎて聞き取れなかった俺は聞き返すも、改は、「い、いや、なんでもねえよ」と言葉を濁す。


 なんだ?聞き返して欲しくなかったのだろうか?


 改は取り繕った笑みを見せた後、慌てた様子で立ち上がる。服に付いた汚れを素早く取った後、すぐさま俺と祭持さんの間を抜けて走り始めてしまった。


 「じゃあ、俺は帰るわ! また月曜日、学校でな!」


 作り笑顔で俺に手を振り、一目散に去っていく改の声は震えており、どう見ても何でもないはずがない。


 「お、おい! 待てよ、改!」


 明らかにおかしな過ぎる改を引き留めようと声を掛けるも、改は後ろを振り向くこともなく行ってしまう。そんな背中を見て、俺は不安と心配に襲われるのだった。


 「あいつ……一体どうしたんだ?」


 ビルの廃墟で祭持さんの同業者、外蘭との会議……と思いきや、いきなり殴りかかられ、しかもその後、霊異者が乱入。そしてビルの廃墟を出ると、夜道で建物と建物の隙間でしゃがみ込んでいた改を見つけ、どうしたのかと聞くも何も教えてもらえず逃走される。そんな、濃い一日は無事?終わり、俺はゲームが置いていない寂しい自分の部屋のベッドで眠りについた。


 柔らかいマットレスと布団に挟まれ、心地の良い就寝をする。幸せそうな表情を浮かべ寝ている俺は、まさか改が今回の会議に関わっているとは微塵も思っていなかった。



 朝が来た。目を覚ました俺は、眠たげにベッドを出て、洗面所へと向かった。


 今日は土曜日で学校が休み。部活動に入っていない俺は学校に行かなくていい。いつもだったら土曜日、いや、土日は特にやらなきゃいけないことはなく、一日中ゲーム三昧の最高な時間を過ごしていたのだが、今、俺の手元にゲーム機がない。あの忌々しい姉ちゃんの手の中なのだ。いつもの土日だったら、暇で死んでいただろうが、今日は朝から用事がある。


 祭持さんに、特訓をしてもらうのだ。


 歯ブラシを咥えながら、壁に掛かっている時計を見た。今の時間は八時過ぎ。今からご飯を食べて向かえば、ちょうど良い時間だな。そんなことを考えながら、歯磨きと洗顔を済ませ、朝食を取るためにリビングへと向かったのだった。


 リビングの扉を開けると、タンクトップにパンツ姿の姉がソファの上でいびきをかいていた。お腹をポリポリ掻きながら、涎を垂らしており、見るに耐えない。さらにテーブルへと目を向けると、食べた後のカップラーメンとおにぎりの包みが雑に置かれている。


 「はあ……片付けくらいしてから寝ろよ」

 

 今は親や俺が居るから、どれだけ姉ちゃんが家の中を汚そうともゴミ屋敷になったとはしないが、将来一人暮らしをするようになったら、姉ちゃんは一体どうなることやら……と言うか、弟に心配される姉って……はあ。


 ため息をつきながら、テーブルの上に置かれているゴミ類をゴミ箱へと捨てていく。


 本当は姉ちゃんが自分でやって欲しいが、このままテーブルの上にゴミが置きっぱなしだと、俺がご飯を食べれない。嫌々だが俺が姉ちゃんの出したゴミを捨てざる負えない。


 「……はぁ」


 今日二度目のため息をつきながら片付け終えた後、俺と姉ちゃん、二人分の軽い朝食を作り、一人、綺麗になったテーブルと向き合い食べ始める。


 姉ちゃんのいびきをBGMにしながら、一人マイペースに食べ、心地の良い朝を満喫する。


 ……姉ちゃんのいびきが無ければ最高だったんだけどな。


 姉ちゃんは俺の生活音がしていても全く起こる気配がない為、もう放っておくことにして俺は家を出るのだった。

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