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第31話 同級生を救った次の日も学校はいつも通りに

 「行ってきます……」


 低く、暗い声で力無く玄関の扉を開けた俺は、大きくため息を吐き、肩を落とすとトボトボと歩きだした。


 昨日の夜。競斗さんを霊異者から救うために深夜まで外出していた俺は、姉ちゃんに夜遅くまで外出した罰として、ゲーム機没収を言い渡されてしまった。


 己の命と価値が等しいであろうゲーム機。もう一つの心臓であるゲーム機で当分遊ぶことが出来なくなってしまったと思うと胸が張り裂けそうだ。


 「これから俺はどう暇を潰せばいいんだよ……」


 そんな言葉をこぼして、やるせない気持ちで通学路を歩く。俺は頭を抱え、落ち込みながら学校へと向かうのだった。





 そんな気分低迷の状態で学校に到着し、教室へと入っていった俺は、授業の準備やら、やることを終わらせて机に突っ伏す。


 教室内には仲の良い友達同士、もしくは隣の席の生徒と挨拶を交わしている声が行き交っている。


 当然、その声には俺の声は含まれていない。何せ、俺の唯一の隣の席である競斗さんはまだ来ていないし、俺の唯一の男友達であり親友の奴はここ数日、体調不良で休んでいる。


 まあ、もうそろそろ復帰してきてもおかしくはないが……


 そんなことを考えていると、ちょうど噂をしていた本人の声が俺の耳に入ってくる。


 「よっ!奥崎!」


 元気な声におもむろに顔を上げると、目の前には片手を挙げて屈託のない笑顔をこちらに向けている生徒がいた。


 その生徒の名前は竹一 改『たけいち かい』。明るさと元気さが取り柄の好少年だ。底なしの体力に有り余る元気さ。それは誰に対してもそうで、嫌いな奴はいないのか、皆と変わらない態度で接している。


 そんな、元気と言えばこいつだと言わんばかりの改だが、珍しく六日前に熱を出してしまい、ここ数日、学校を休んでいたのだ。


 「改、もう体調は大丈夫なのかよ」

 

 見るからにもう大丈夫そうだが、歯を出して笑う改に俺は一応聞いてみることにした。が、やはり大丈夫らしい。改は親指を立てて、大きくのけ反るようなポーズを見せる。


 「ああ。見てのとおり、もうばっちりだ!今までじっとしていたせいで元気が有り余っててるくらいにはな!」

 

 まあ、改のことだからそこまで心配はしていなかったが、それでも約一週間も会わない日が続くと、少しだけ寂しさは出てくるものなんだな。


 そんなことを俺は思ってしまうが、男に、いや、他人にそんなことを言うのは自分のプライドが許してくれない。


 「それは良かったな」


 表情が変わらないようにしながら、そっぽを向いてそう言う俺に、改は元気に笑う。


 「なんだ?もしかして心配してくれたんか?」


 そう言った改の表情が、元気いっぱいな笑顔から、からかうような笑顔に変化する。その表情を浮かべて、座って、そっぽを向いている俺の顔を覗き込んでくるのだった。


 「ん? どうなんだ?」


 ニマニマと笑う改。意地の悪い笑顔を近づけられた俺は鬱陶しさから振り払う素振りを見せる。


 「うっせ! たった数日なのに心配なんかしねえよ!」


 「おいおい、薄情者だなぁ」


 ホントは心配してたんだろ?今度はそう聞こえてくるようなうざったい表情をしてくる改に、呆れるようにため息をつく。


 そんな俺の見せる表情なんて気にすることの無い改は、楽しそうに提案してくるのだった。


 「そうだ、奥崎! 今日の夜、一緒にゲームしようぜ!」


 ……ゲームか。


 俺と改が一緒にやっているゲームは家庭用ゲーム機のゲームの一つ。悔しいことながら、姉ちゃんにゲームを没収されている今はどうやってもゲームをすることはできない。


 やりたいができない。そんな悔しさを表情に出した俺は首を振る。


 「やりたいけど……今、ゲーム機は姉ちゃんに没収されていてできない」


 すごくやりてぇ……やりたいけど、できないんだ。すまないな、改。


 「没収って……、奥崎お前、何をやらかしたんだよ」


 何を……か。


 改は眉をひそませて俺を見てくる。その目は俺が何か悪いことをやったと言っているように見える。


 だが、俺は別に悪いことはしていない。むしろ褒められることをした……いや、夜中に帰って心配をさせたのだから、悪いことをしたか。


 改に、ちょっと霊異者っていう幽霊みたいな奴から同級生を救っただなんて馬鹿正直に言っても信じてもらえないし、言えない。


 俺は少し沈黙した後、自分では言葉を選んだつもりで声を発した。


 「…………ちょっと夜遊びを」


 「ええ!? お前ってそんな奴だったか!?」


 うん、どうやら言葉選びを間違ったらしい。改は驚いた表情をした後、ニマニマとし始める。


 そんな改を見た俺は、改が良からぬ勘違いしていることにすぐに気付き、すかさず否定する。


 「お前が考えているようなことじゃねえよ」


 「おいおい、だったら夜遊びって、何だよー」


 違うと言っても全く信じてくれない。俺が悪いことをしたと完全に思っている改に更に強く否定しようとした時、教室の出入り口が開いた。


 「だからーーーー」


 「はいはい、席につけー」

 

 ちょうど、先生が入ってきてチャイムが鳴る。チャイムの音で時計を見た改は、「あ、やべ」と溢し、そそくさと自分の席へと戻っていった。


 うざったらしくウインクをして戻っていった改に死んだ目を見せた俺は思うのだった。

 

 後で、必ずそれっぽい言い訳を考えなきゃな。


 そして今日も今日とて、ショートホームルームが始まる。

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