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第20話 ボロボロの姿で

 「……んぁ?」


 次に目を覚ますと、俺の周りには誰もいなくなっていた。


 相変わらず雨は降っており、起き上がった後に辺りを見渡すが、やはり競斗さんと少女の姿が見当たらない。


 次に自分を見る……つま先から上半身まで。くまなく全身を見てみるが、何故かただ服がボロボロになっているだけでどこにも怪我が見当たらなかった。


 どういうことだ? 俺はボコボコにされた筈じゃ……それも瀕死になるまで。


 取り憑かれた競斗さんに蹴りやら何やらでフルボッコにされた俺は、確かに怪我と言う言葉では済まされない程の重傷を負ったはずなのだが、それらは綺麗さっぱり消えている。


 「どうなってるんだ?」


 さっきの……競斗さんと相対して殺されかけたのは確かに現実だった。夢やら幻覚の類いではない。思い出したくもないあのリアルな激痛は現実以外にはあり得ないだろう。


 だったらどうして負った傷が治っているんだ? 


 そんな疑問を解決しようと頭を捻るが、自分が納得できるだけの答えは思いつかない。

 

 駄目だ。全く分からない。それにあの憎たらしい少女。あいつ、俺にあげるとか何だとかと言っていたが、俺は何を手に入れたんだ?


 何か力が込み上げてくる訳でもなく、まして

や見た目が変わった訳でもなさそうだ。だが、あいつが俺に『あげる』と言った時、何か体に変化があったのは確かな筈だ。


 何が……何が変わったというのだろうか


 「……駄目だ。それもさっぱり分からない」


 少し考えてみるが分かりそうにない。まあ、今ここで考えても答えが出てこないだろう。そう結論付けた俺は立ち上がる。


 どうして俺の傷が癒えているかは謎のままだが、今はそんなことを考えている場合じゃない。それにこんな土砂降りの雨が降り続けている中、ずっとしゃがみ込んでいると風邪を引いてしまう……いや、もう今更か。


 俺は泥やら雨やらで全身が既に水浸しになった体を見て、ため息をついた。


 はあ……とりあえず、気を取り直して今の状況を分かっている範囲で確認しよう。


 俺がどのくらいの間、意識を失っていたのか正確には分からないが、辺りの暗さはさっきとそう変わっていないみたいだからそんなに時間は経ってはいないだろう。


 それに降っている雨の量も意識を失う前と変わっていない気がする。と言うことは、俺が気を失っていた時間はせいぜい一、二分。長く見積もっても五分だろう。


 それと、あの取り憑かれている競斗さんの動きは確かに速かった。だけれどもそれは、俺を見つけてからだ。それまでは恐らく立ち止まっているかフラフラと歩いているだけ。


 多分だが、まだ競斗さんは俺の近くにいる。きっと今探せば間に合う。追いつくだろう。


 「追いかけないと」


 そんな考えに至った俺は動き出そうと一歩足を前に出すが、俺の動きはそこで止まってしまう。


 「……え?」


 俺は今なんて言った?


 自分が無意識に口にした言葉に疑問を抱いてしまう。


 追いかけないと?俺は今、『追いかけないと』って言ったのか?なんで?追いかけて、探して……それで?それで俺はどうするんだ?


 「……競斗さんを探して見つけ出したとして、俺はどうするっていうんだ?また競斗さんを見つけたところで俺にはどうしようもできない。さっきみたいに、ただボコボコにされるだけじゃないか」


 足が震える。


 もう傷も無いし、血が足りていない訳でもないと思うのに、俺の足はガクガクと震える。

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