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第18話 ようやく見つけたけれど

 二手に分かれて、競斗芽井を探すこと数十分。これだけの時間走り回っているが、競斗さんは見つからない。


 祭持さんから電話が来ないということは、あちらもまだ見つけていないのだろう。


 辺りはもう日が落ちてきて薄暗くなっており、人通りもさっきからほぼ無くなってきていた。


 「くそっ!どこにいるんだよ」


 どれだけ探しても見つけれないことに加え、いつ競斗さんが霊異者に完全に乗っ取られてしまうか分からない。時間がかかればかかるほど競斗さんが体を奪われる可能性が高くなる……そんな焦りから、いつからか苛立ちが募ってきていた。


 そんな状態で、いつもは行くことのない路地裏を走っていく。途中、人が入れそうな場所を覗いてはまた違う場所を覗いてみる。そんなことを続けていると、突然雨が降ってきたのだった。


 「マジかよ」


 その雨は、最初は小雨でそんなに気にならなかったが、やがて大雨になってしまった為、俺はやむを得ず近くの屋根下で休憩がてら雨宿りをすることにした。


 「……この雨はいつ止むんだよ」


 本当は雨宿りなんかしている場合じゃない。小雨程度であれば、競斗さんを探すのを続行していたのに……


 「はぁ……憂鬱になるな」


 俺は晴れる兆しのない空と土砂降りの雨を見て、深くため息をつくのだった。




 そうしてしばらく雨宿りをしていると、遠くの方に人が歩いているのが目に入った。


 その人は土砂降りの雨の中、傘も差さずにゆっくりと歩いている。そんな人物を目を細めてよーく見ると、競斗さんっぽいことに気付いた。


 「ん?あれは……競斗さんか?」


 遠すぎてはっきりとは分からないが、あれは競斗さんかも知れないな。近づいて確認してみようか。

 

 そう思った俺は雨宿りを止め、駆け出すことにする。土砂降りの雨の中、水たまりを踏みつけて走った。


 「なあ!」


 「・・・・」


 遠くから走りながら声を掛けると、競斗さんらしき人は俺の声に気が付いたのか、その場で止まった。俺は走り続け、ある程度まで近づいた時、後ろ向きで止まっているその人物は競斗さんだということを確信する。


 「競斗さん!」 

 

 競斗さんだということが分かった俺は大声で名前を呼ぶが、競斗さんは一瞬肩を動かしただけで、その場で立ち尽くしたまま。


 そんな競斗さんに少し違和感を抱いたが、競斗さんの状態が、特に何も変わらない普通の状態だった為、俺は問題無いと判断し、近づく。


 「こんな雨の中、傘も差さずにゆっくり歩くなよ」


 なんだ? 何か違和感を感じる。


 何故かそう思ったけれども、どこも異常がないのだから気のせいなのだろう。ある程度まで近くに寄った俺は、歩きながら競斗さんに話しかける。


 「なあ、競斗さん。びしょ濡れになって今すぐ帰りたいと思うけど、少しだけ時間をくれないか?」


 おかしい。まだ違和感が拭えない。


 ずっと自分の中で警報が鳴り続けているが、それは気のせいだと自分に言い聞かせ、一歩、また一歩と近づきながら話しかけるが、競斗さんは振り向こうとせずその場で立ち止まったまま。


 「おい、無視するな…………よ?」


 もう伸ばせば手が届くような距離まで来た時、そんな近くまで寄ってようやくさっきから感じていた違和感の正体が何だったかに気付いた。


 いない……いないのだ。ずっと競斗さんの肩に乗っかっていた、あの黒い霊異者が。


 は?競斗さんから離れたのか?いや、そんなことをするのか?もう競斗さんは乗っ取られてもおかしくない状況だったんだ。そんなところまで来て離れようとする筈がない。じゃあ、霊異者はどこに消えていってしまったのか。


 まさか、もう既に競斗さんは乗っ取られーーーーッッッッ!!


 次の瞬間、俺は薄暗くなった空を見ていた。降り注ぐ雨はスローモーションに見え、綺麗だななんて呑気な考えが頭をよぎる。そんな考えが通り過ぎたや否や、体感時間は正常になり、複数回、地面に叩きつけられた後、俺は硬いコンクリートの壁に衝突したのだった。


 「ガハッ!」


 何が……起きたんだよ。


 ぶつかった衝撃か、意識が朦朧とするがすぐに元に戻る。俺は起きあがろうと水たまりに手をつき、力を入れる……が、倒れてしまう。その後全身に、遅れて全身に今まで感じたことのない激痛がやってきた。


 「が、があぁぁぁ! ゴボッ!」


 俺は、込み上げてきた気持ち悪さのままに血を吐いてしまう。


 痛い、苦しい。口の中が血の味がする。


 喉を押さえて痛みと味を誤魔化そうとするが、当然誤魔化すことなどできやしない。それでもどうにかしようとしていると、ふと自分の下に大きな水たまりができているのに気がついた。


 これは……全部俺の血……なのか?


 自分の体の下には一際大きな水たまりがあった。その水たまりの色は濃く、底の地面を見透かすことなどできない。それほどまでに赤かったのだ。正確には、大きな水たまりに血が混ざってしまっただけなのだが、混乱状態に陥ってしまっていた俺にはそれが全て自分の血に見えてしまっていた。


 そこでようやく自分が競斗さんの殴り、もしくは蹴りで吹き飛ばされたことに気がついた。


 俺はなんとか痛みを堪えながら顔を上げ、少し離れた場所にいる競斗さんを見る。


 競斗さんから何やらドス黒いピンク色のオーラのようなものが出ており、それは競斗さんであって競斗さんではない何かになってしまっていることを理解させられるには充分な変化であった。


 競斗さんは、気怠そうに両腕をぶらりと下ろしながら、びしょ濡れになった髪の隙間から感情がこもっていない目でこちらをじっと見ている。


 やべえよ、なんなんだよ……あれは!

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