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第14話 気がつくと

 「じゃあ、またね!」


 放課後、友達の家にお邪魔し、遊び終えた私は、友達に手を振ると外に出た。既に日も落ちてきており、夜特有の怖さを少し感じながらも薄暗くなった道を一人、歩き始めた。


 楽しかったな。やっぱり、友達と遊ぶのはとてもいい時間。


 お菓子を食べながら友達の話を聞いたり、自分の話をしたり。クラスの恋愛事情なんかも喋っちゃって、もう本当に楽しかった。

 

 私は、さっきまで話していた内容を思い出し一人、ニマついてしまう。


 はぁー、それにしても、まさかあの子とあの子が付き合っていたなんて! 


 全く関わりのないと思っていたあの二人が、実は先週から付き合い始めていただなんて意外すぎる。どういう成り行きでそうなったのか、気になって仕方がない。


 誰か、知っている人はいないのかな?


 そんなことを考えていると、鼻に冷たい何かが落ちてきた。


 「ん?」


 なんだろう?


 そう思っていると、その冷たい何かは次第に少しずつ増えていき、それが雨だということに気付く。


 「あ、雨が降ってきちゃった」


 ポツポツと降り始めた雨を手のひらに乗せてそう呟いた私は、これ以上酷い雨になる前に家に帰ろうと足を速めようとする。


 「急いで帰ろう」そう呟いた時、突然誰かが私の耳元で笑うのだった。


 「……フフフッ」


 その声は、いつも夢で聞いていたあの少女の声の様で……



 ーー、ーーーー、ーーーーーーーー。






 「……え?」


 気がつくと、私はついさっき居た場所とは違う場所に立っていた。雨も小雨を通り越して、土砂降りになっている。周りも明らかに暗くなっており、自分を見ると雨でずぶ濡れ。


 それはまるで私の知らない間に時間が過ぎていったよう……

 

 「どういう……こと?」


 自分の身に何が起きているのか分からなくなった私は怖くなる。その時、さっき耳元で聞こえた声がまた聞こえる。


 「フフ、フフフ……」


 この声、やっぱり私が夢で見る少女の声だ。でも、あれは……あくまで夢であって、現実とは全く関係ないんじゃないの!?なのに、なんで……なんで聞こえるの!?


 「い、嫌っ!」


 次第に大きくなる声。その声が大きくなる程に、何故か体が自分の体じゃなくなっていく感覚に陥っていく。それはまるで私という存在が消え去っていくよう……で。


 や、やだよ!誰か!誰か助けて!


 自分では声に出したつもりが、それは声にすらなっていなかった。そんな声にならない、誰にも届くことがない叫びを、私は力の限り叫ぶのだった。


 何度、何度も叫んでも自分の喉が私の言うことを聞いてくれない。次第に、腕も言うことが聞いてくれなくなってきており、ついにはどんどん視界が薄暗くなってくる。その時には、私には叫ぶ気力すらも無くなってきており、それになんだか眠くなってくる。


 もう駄目……どんどん私が消えていく。


 やがて視界も全て闇に覆われて、周りの音もほとんど聞こえなくなってしまう。


 今まで感じたことのない、消失感の底へと溺れゆく中、ふいに誰かの声が聞こえた気がした。


 「ーーさん! きーー! ーーー、めい!!」


 遠すぎて、よく聞き取れないが、それは恐らく私を呼ぶ声なのだろう。遥か彼方から聞こえているその声は、ここ数日私に話しかけてきてくれていた、クラスメイトの男の子の声によく似てて……。


 『ぇ?…………奥崎……君?』


 私は、声の聞こえる方へと手を伸ばしたのだった。




 数時間前。


 祭持さんの家へ行き、競斗さんの危機を知った俺は、競斗さんの居場所を知るべく、祭持さんと共に学校へと向かった。


 確か、競斗さんは『友達に誘われている』と言っていた。それは放課後、学校で何かするのか、はたまた一緒に外出、または競斗さんか友達、そのどちらかの家で遊ぶのか。競斗さんが友達と何かすること以上のことを俺は知らない為、競斗さんの行き先を知っている人物を見つける必要がある。その知っていそうな人物が見つかる可能性が高い場所はどこか、そう考えた時、真っ先に思いついたのは学校だったのだ。


 祭持さんには校門前で待っていてもらい、一人で学校の中へと入っていった俺は、競斗さんの行き先を知っていそうな人を手当たり次第に探し、聞いて回った。結果としては、競斗さんの行き先を知ることはできなかった。だが、まだ部活で残っていた同級生に競斗さんの家を教えてもらうことには成功したのだ。まあ、競斗さんの家はどこかと聞いた時、何やら怪しいと言わんばかりの表情をされたがな。


 そうして今、俺と祭持さんは競斗さんの家の前にいる。


 「ここが競斗さんの家か」


 同級生に教えられた住所を、スマホのナビの通りに行き、辿り着いたその先には一軒家が立っていた。今の時刻は十七時過ぎ。この時間なら友達との用事も終わり、家に帰っている可能性も十分あり得る。もし帰っていなくても、競斗さんの家族が居場所を知っているのかも知れない。


 ここが……最後の希望だ。


 これ以上、手掛かりがない俺達にはここで競斗さんを見つける、あるいは母親に競斗さんの居場所を教えてもらえないと後がない。


 俺は、唾を呑み込み、『競斗』と表札に書かれているのを確認した後、手を伸ばし、チャイムを鳴らした。

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