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Episode:99

「不要なものは持つな、持ちあがらない物は持つな、大事なものはひとつだけ――ってこのことかよ」

「そういうこと」

 なんかもう本当にこの町、常に戦時体制らしい。


「ったく、徹底しすぎじゃね?」

「たしかに徹底しすぎかもしらんけど、しゃーないだろ。大戦のあともこの町、何度か狙われてんだ。1回はお前も遭遇したろ」

「たしかに……」


 遭遇した1回っていうのは、あたしがイマドと初めて会ったときこことだろう。

 運良くこの町は何もなかったけど、本当なら存亡の危機だったはずで……なのにそこでイマドと出会ってシエラへ行くことになったんだから、不思議な話だ。


「そーいや、姉貴はどうすんだ? さすがに農場ごとは避難できねーだろ」

「ああ。だから、ギリギリまで残る」

 お姉さんの片手が銃身を撫でたのは、イザとなったらそれを使う気だからだろう。


「ただ幸い、まだ種まきもしちゃいないしね。場合によっちゃ種まき遅らせるか諦めて、とっとと逃げるかもな」

「だなぁ。迂闊に撒いて荒らされちゃ、たまったもんじゃねーし」


 あたしも内心同意だ。撒いて荒らされるくらいなら、売るか食べるほうがまだマシだろう。

 もちろんいちばん良いのは、何事もなく種まきが出来ることだけど……。

 そんな話をしてるうちに、町が近づいてきた。誰かが知らせたらしくて、町外れに人の姿が見える。


「ザニエスさんから聞いた話、本当なのか?!」

 車を止めた途端に、町の人たちに取り囲まれた。

 お姉さんが答える。


「何の話か分からないけど、うちの親父から聞いたってんなら、親父待ってくれないか? あたしがここでヘタに言って、間違ってたら困る」

 きっぱりと言われて、町の人たちが鼻白んだ。


「けど、一刻も早く……」

「すぐ親父だって着く。だいいちもう、車が見えてるじゃないか」

 このお姉さん、本当に腹が据わってると思った。農場のことだって慌ててなかったし、今も浮き足立ってた人たちをあっさりと黙らせてる。

 その間にちょっと後ろから来てた、おじさんたちの車が着いて止まった。

 窓が開く。


「ザニエスさん!」

「分かってるよ。ただここじゃ、話をするには不都合だ。町の集会場へ行こう。集めておいてくれ」

 おじさんの落ち着いた声が、みんなを更に落ち着かせたみたいだった。


「分かりました、すぐ集めます」

「頼むよ。私も娘と孫を降ろしたら、すぐに向かう」

 その言葉を置いて、おじさんたちの車が出る。




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