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Episode:98

「町の備蓄なんかも、だいたいはそこ使ってんのさ。じゃないと、すぐに使えないし」

「そこまでやってたのかよ……」

 このルアノンの町、想像以上に恐ろしいところらしい。町がある程度備蓄してたり、避難先を確保してたりというのは聞いたことがあるけど、ここまでの規模は初めてだ。


 けど同時に思う。だからこそこの町、こんな辺境で生き残れたんだろう。

 辺境の町、特に国境付近というのは、ともかく翻弄されるものだ。隣り合う国の力関係が変わるたび攻め込まれ、占領されては拠点とされる。


 それでも交通の要衝にある大きな町なら、まだ何とかなる。町の機能自体を止められない――止めたら町を占拠した意味がなくなる――から、逆らわなければ普段どおりになることが多い。

 でも、ルアノンのようなところは別だ。本来なら砦があるような場所に位置する町だから、危険なことこの上ない。

 そういう場所なのに変わらず在る理由が、この度を越した危機管理体制なんだろう。


 とはいえ、疑問もある。

 人が避難する先は、ちゃんとあるからいい。けど町を占拠されてしまったら、戻れなくなって困るはずだ。

 まさか何十年も避難するわけには行かないだろうし、その辺をどうするつもりなのかは、ちょっと見当がつかなかった。


「すぐ、避難すんのか?」

「分からない。父さんたちが話し合って決めることだし。けど感じからして、久々に避難じゃないかな」

 お姉さんが言う。


「久々にって、ヘイゼル姉、避難したことあんのかよ?」

「あるさ。大戦の時に1回あったんだ。ってもあたしもガキだったから、あんま覚えてないんだけどね」

 大峡谷の避難先、予想より使われてるみたいだ。


「マジで町中避難とか言ったら、とんでもねーことになりそうだな……」

「そうでもない。大人はみんな知ってっからね。ガキどもがちゃんとついてきてさえくれりゃ、どうにかなるもんだよ」

「へぇ……」


 話を聞きながら、不謹慎だけど見てみたいなと思う。

 町全体の避難なんて、襲われてからの難民化以外、あたしは聞いたことがない。けど本当に出来るのだとしたら、何かのときの参考になるはずだ。


「家財道具なんかは?」

「持ってかないよ。最低限の着替えと大事なものだけ持って、出る決まりだし。だいたいがイマド、お前もその辺のルールは知ってんだろ?」

「あ……」

 何か思い当たったらしく、イマドが声を上げる。





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