Episode:93
「ほら、髪飾り作んだろ?」
言われて、何をしようとしてたか思い出す。
ただ、問題がひとつあって……。
「あ、うん。でもその……花で髪飾りって、何?」
瞬間、周りが石化した。イマドだけじゃなくて、ネミちゃんやアーネストお姉さんも固まってる。
しばらく沈黙した後、イマドが口を開いた。
「――お前、まさか髪飾り知らないのか?」
「えっと、髪に付ける飾り……だよね? 宝石とかの」
さすがにそのくらいは、あたしにも分かる。パーティーなんかに連れ出されそうになったとき、頭にこれを付けるんだと見せられた。
結局、パーティーが嫌で逃げたのだけど。
「いちおうそれは分かんのか。んじゃ、それを花で作る。そんだけだ」
「それが、よく分からないんだけど……」
花を髪に飾るなら、そのまま髪の間に挿せばいいんじゃないだろうか?
それを言うと、今度はイマドが笑い出した。
「あー、そゆことな。つーかその発想はなかったわ。たしかにそれじゃ、作ったりしねーもんな」
何だか分からないけど……みんな笑ってるとこ見ると、あたしそうとうおかしなことを言ったみたいだ。
「お姉ちゃんね、髪飾りって、花を集めて輪にするんだよ。でね、頭に載せるの」
「あ、じゃぁ輪冠みたいに?」
やっと少し意味が分かる。
「てーか、見たほうが早えぇな。ほらネミ、作ってみろよ」
「うん」
ネミちゃんが、花の咲いているほうへ駆け出した。
向かっている先は、咲き始めた一番花でいっぱいだ。黄色、桃色、白、紫……色とりどりの花が、草の間に顔を出している。
「もうちっと経つと、もっと咲くんだけどな。今の時期じゃこんなもんか」
「え、こんなに咲いてるのに?」
驚いて訊くと、この辺りはもう少し経つと、本当に一面の花畑になるんだっていう。
「マジですげぇぞ。全部草じゃなくて花になっから」
「そうなんだ……」
世の中にはいろんな場所があるんだなと思いながら、花畑に足を踏み入れる。
ネミちゃんのほうは、もう摘むのに夢中だった。
「お姉ちゃんね、なるべく綺麗で大きいの! でね、なるたけ茎、長く摘んで」
「えっと……こう?」
言われたとおり、茎を長めにとって摘んでみる。
「そうそう、お姉ちゃん上手! そしたらもっとー」
「分かった」
こういうのを、それも小さい子に褒められるってどうなんだろうと思いながら、花を摘んでいく。




