Episode:88
「お兄ちゃん、お弁当まだー?」
「いま詰めてんだから、待てっての」
「えー、はーやーくー!」
賑やかな声が聞こえる。
夕べは外で食事した後、イマドのおじさんの家へ戻って一泊した。今日はネミちゃんが言ってた通り、お弁当を持ってピクニックに行くんだって言う。よく晴れて暖かいし、出かけるにはよさそうだ。
「どこ、行くの?」
イマドに訊いてみる。他のお姉さんたちでも答えてくれるだろうけど、まだあたしは自分から訊けなかった。
「森の辺りだとさ。まぁいろいろ芽吹いてくるころだしな」
「そうなんだ」
この調子じゃイマド、きっと行ったら野草を摘んで、今夜のご飯にするんだろう。
と、昨日と同じようにドアが叩かれる。
「誰か居るかー?」
声からして、昨日のヘイゼルお姉さんだろう。
慌てて開けに行くと思ったとおり、長身の姿があった。でももっと驚いたのは……。
「じゅ、銃?」
「ん? あぁ、これか。脅かしちまったね」
言ってお姉さんが、肩に掛けていた長銃を下ろす。よく手入れされてて、使い込まれた感じだ。
「この辺じゃ休みの日には、けっこう猟に出るんだよ。ってもまぁ、やたらと撃ったり捕ったりは出来ないんだけどね」
「そうなんですか……」
ケンディクなんかじゃ、ちょっと考えられない話だ。
「ささ、車乗んな。乗り心地はともかく、アネット姉のとこよりは気楽だよ」
聞けばアーネストさんとネミちゃんは、おじさんの車に乗るんだって言う。
「イマドもふだんはあっちなんだけどね、今日は人数多いからさ」
言いながらヘイゼルさんが、あたしの手首を掴んだ。
「ほら、おいで」
「はい」
手を引かれるままに歩いて、車に乗せられる。
「あーもう、ほんっと可愛いな」
座ったところで、いきなり抱き寄せられた。
「どうせならあたしも、子供はこういう女の子がいいんだけどなぁ」
そう言われて抱かれてる腕の中、やわらかくてすごくあったかい。
と、後から声がかかる。
「ったくヘイゼル姉、ドサクサ紛れに何やってんだよ」
「いいじゃないか、別に悪いことしてるわけじゃなし。にしても可愛いな、このまま持って帰りたいよ」
「人形じゃねーっての」
そんな声と共に、イマドが座った気配がした。




