Episode:87
「ともかく俺は、他所行く気なんかねぇからな」
「分かったわよ……」
さしものアーネストさんも降参する。まさかイマドがここまで頑固だとは、思いもしなかったんだろう。
ただあたしとしては、このほうが嬉しかった。
「はいはい、んじゃ話まとまったみたいだし、食べに行かない? そろそろ診療所も終わるでしょ」
「あ、じゃぁ私が……」
居心地が悪かったのか、珍しくアーネストさんが動こうとしたけど、ヘイゼルさんに止められる。
「あたしが呼んでこよう。アネット姉なんか行かせた日にゃ、また診療所のもの壊すだろうしね」
思い当たることがあるんだろう、周り――ネミちゃんまで――が一斉に吹き出した。
「ホント、アネット姉ドジだもんね」
「ドジというよか、神経通ってないんだと思うね。ふつうは歩くたんびに、棚の上のものなぎ倒したりはしないもんだ」
言われたアーネストさんのほうは当たり前だけど、面白くなさそうな顔だ。
「まったくあなたたち、言っていいことと悪いことがあると思うのだけど?」
「そう思うんなら、もうちょっと気をつければいいじゃん」
間髪入れずに反論があがる。
「そうそう。ママ、お皿割りすぎだもん」
「ひどいわ、ネミまで……」
不満そうにちょっと口を尖らせて、斜め下に視線をやるアネットさん。これじゃネミちゃんのほうがしっかりして見える。
そんなことをしてるうちに、足音が近づいてきた。
「あぁら、全員揃ってたの? 探しに行く手間が省けたわぁ」
「――探さねぇだろ、ふつう」
現れたおばさん――そういえばいつの間にか居なくなってた――が、不満そうな顔になる。
「だって。居なくなったら困るじゃない」
「居なくならねぇっての」
なんとなく見てて、このおばさんがやっぱり、いちばん強敵かなと思う。いちばん上のアーネストさんと、いちばん下のヘイゼルさんを足した感じだから、破壊力も倍だ。
ふと、それでやれてるおじさんが最強かな、とも思った。もちろんおばさん、悪い人じゃないけど……一緒にやれるのはすごい。
「もういいからさ、母さん、食べに行くのまだ?」
「あぁそうだった、忘れてたわー。何ならあなたたち、先に行ってていいわよ? いつものとこだから」
「ほーい、了解。んじゃ行こ行こ、ほら」
ユーニスさんに押されて、あたしたち外へ出た。




