Episode:84
「ともかくほら、来なよ。通りに野菜置いとくわけにもいかないからね」
「へいへい」
真ん中のお姉さんのうしろを、みんなでぞろぞろついていく。
「いったん降ろして、なんなら姉さんとこにでも持ってってもらや、何とかなるだろうさ。じゃなきゃ母さんに、近所の人に配ってもらってもいいんだしね」
「まぁ、そりゃそうだけどさ」
そんな話をしながら行った通りには車が1台停められていて、荷台に野菜が文字通り、箱に詰められて満載だった。赤、緑、黄色。あたしじゃ何だか分からないものもいっぱいあるけど、どれも美味しそうだ。
「ったくヘイゼル姉、なんでこう旨そうなモン、山盛り持ってくんだよ! ちきしょう、料理してぇ……」
イマドの言葉に、お姉さん2人が声を立てて笑う。
「なんやかんや言いながらおまえ、料理好きだよな」
「だよねー。てかさ、明日の朝食作ってよ? あたし泊まってくから」
そんなやりとりが交わされる中、みんなで箱をひとつずつ持って、家に運び入れる。
「あーもったいねぇ。今晩と、頑張っても明日の夜しか泊まれねぇもんなぁ。とてもじゃねぇけど使いきれねぇよ」
「だろうねぇ。ま、残ったらあたしがテキトーに捌くから、気にしなさんな」
1回じゃ運びきれなくて、もう一度みんなで外へ出たところで、また女の人が現れた。
顔を見て思う。確かこの人、ここの一番上のお姉さんだ。
「あ、アネット姉来たんだ」
末のユーニスさんが言う。アネットっていうのは、アーネストさんの愛称だ。
「あらぁ、お野菜いっぱいねぇ。私もひとつ、もらっていこうかしら?」
他の2人と違って、このお姉さんは割とおっとりした感じだ。
ただ前に会ったときも思ったけど――意外なくらい隙が無い。のんびりマイペースなのだけど、そのマイペースをまったく崩すことがなくて、周りが巻き込まれる感じの人だった。
「これなんか、炒めたらきっと美味しいわぁ。それとも、こっちをサラダのほうがいいかしら?」
「アネット姉、いーからひとつくらい持ってくれって」
イマドに言われて、お姉さんが困ったように首をかしげる。
「そうねぇ、私も持たなきゃねぇ……でも私、力が無いのだもの。落としたらどうしましょう……」
言ってる間に他のお姉さんたちが動いて、野菜は片付いてった。
こっそりイマドに言う。
(いちばん上のお姉さん、なんかすごいね……)
(ああ。だから間違っても近づくんじゃねぇぞ)
なんだかヒドい言い方だ。
けど何を言いたいかは分かる。これが常態だとしたら、周りはきっと振り回されるだけだ。




