Episode:81
この町へまた来られて良かった。そう思いながら歩き出した。
イマドが後ろからついてくる気配がする。
「えっと、こっちだっけ?」
「だな」
叔父さんの診療所は静かな住宅街の中で、学校や公園も近い。それを横目で見ながら、路地を抜けていく。
「あー、来た来た。ルーちゃーん!」
最後の角を曲がると、おばさんが診療所の前へ出ていた。
「連絡もらって、そろそろ着く頃だと思った。なんか、大変だったみたいね?」
「あ、はい。でもあの、着きましたし……」
なんか大騒動だったし遠回りしたけど、とりあえず着いたからいいだろう。
「そうね、着いたものね。さ、上がりなさいな、疲れたでしょ?」
おばさんが言いながら、あたしの荷物を持ってくれた。
「――おばさん、俺のは?」
「あんたは身体でっかいんだから、自分で持ちなさい」
つれない返事にイマドが文句を言う。
「ったく、娘欲しかったって、露骨に差つけんなよ。つかおばさん、娘いっぱいいるじゃねーか」
「この子は可愛いから別」
誰のことだろうと思いながら、診療所の脇を通って上がらせてもらった。
「ルーちゃん、そこの部屋使ってね。あ、イマド、部屋間違えんじゃないわよ」
「間違えねーよ……」
イマド、辟易という感じだ。
「あらそ? それならいいんだけど。なんたってルーちゃん可愛いから、入って襲ったりしちゃダメよ」
「だから、しねーってば」
話を聞きながら、イマドがあたしを襲ってどうするんだろうと思う。する理由がないし、そもそもそんなことをしたら、たぶん勝つのはあたしだ。
やっぱり、普通の人たちの言うことはよく分からない。
「ルーちゃんどうする? 何かちょっと食べる?」
「あ、えっと……」
どうしようと迷ってたら、横からイマドが割り込んだ。
「いい! つか俺やるから! おばさん頼むからなんも作んねぇでくれ」
「何よその言い方」
イマドのおばさん、拗ねて口を尖らせる辺りがちょっと母さんに似てるかもしれない。
――性格まで似てたら、どうしよう?
なんだか怖い考えになってしまったうえ、否定できないのがさらに怖い。




