Episode:79
イマドが笑う。
「お前、自己評価低すぎんだよ」
「そお……?」
自分ではそうは思えないけど、イマドが言うんだから、ちょっと考えたほうがいいかもしれない。
そんなことをしているうちに、列車がスピードを落とした。景色の動きが、だんだんゆっくりになる。
「荷物、これで全部だよな?」
「うん」
元々が少ないから、持ち運びは楽だ。それでも忘れ物がないか辺りを確かめて、最後にあたしはバッグを肩にかけた。
列車が止まる。
「あー、やっぱちっと寒いな」
「そうだね」
久しぶりに降り立った駅は、ケンディクよりはちょっと寒かった。1枚多く着た方がいい感じだ。
でも、空気はいい。潮風のケンディクとはまた違う、思わず深呼吸したくなるような澄んだ風だ。
「行くか。バス来てっし」
「うん」
駅前に止まってたバスに乗り込む。さほど大きい町じゃないから、バスの運行なんかも列車の時刻に合わせてだ。
イマドの叔父さんの家は、ここから歩いて行けないほどじゃない。でも荷物があるうえバスが来てては、わざわざ歩く気にはならなかった。
「あれ、ザニエス先生とこの坊やじゃないか」
「あ、ども」
坊やと言われてちょっと微妙な顔をしつつも、乗り合わせた人にイマドが挨拶する。
イマドの叔父さんはお医者さんだ。だからこの町じゃ知られていて、そこの一人息子扱いされているイマドも、同じように知られていた。
「シエラから里帰りかい? ほんと先生に似て、出来るねぇ」
「別にそういうんでも……」
イマド自身はおばさんの言うとおり出来るのに、あんまり言いたがらないのは面白い。
そのおばさんの視線が、あたしに向いた。
「あれ、可愛い子だねぇ。あれかい、彼女かい?」
「え、あ、いや、えっと……」
おばさんが笑い出す。
「いいんだよ、別に隠さなくたって。大人しそうでいい子じゃないか。あれだね、先生に見せに行くんだろ」
「いや、だから……」
イマドが必死に言おうとするけど、おばさん何も聞いてない。




