Episode:78
◇Rufeir
窓の外を、景色が流れていく。
――去年と逆に。
今列車が通っているのは、ルアノンのすぐ南の大森林地帯だ。その木々の間を縫うようにして、線路が通されている。
時々見える川は、水量が多い。きっと雪解け水と、春の雨のせいだろう。ただ下草はまだ枯葉色で、枝先に萌黄色がともる木々と、コントラストを成していた。
日程は、最初の予定より1週間以上遅れている。でもあれだけ回り道をしたことを思えば、まだいいほうだろう。ただこれだと、イマドの叔父さんの家にいる時間は、ほとんどなかった。
でも内心、このほうが良かったかな?とも思う。イマドや叔父さんには申し訳ないのだけど、あまり知らない人の家にずっと居るのは、ちょっとあたしには辛い。
イマドの叔父さんも叔母さんも、本当にいい人だ。学院へ行く直前の夏、去年の冬と夏と計3回お世話になってるけど、いつもとても親切にしてくれた。
ただそれが……ちょっと負担だ。
もちろん悪いのは、そういう性格のあたしだ。人の親切を負担に思うなんて、どうかしてる。
けどそう感じてしまうのは事実で、あたし自身にもどうしようもなくて……だから日数が短くなったのは、それだけ気を使わなくて済む分ありがたかった。
窓の外は、見た限りでは平穏無事だ。もしかして軍が移動した痕跡がないかと見てるけど、取り立てて目立ったものはない。
もっとも列車の傍なんて目立つ場所を、そう簡単に軍が通るわけがない。だからあたしの目に見えなくても、展開してる可能性は十分あった。
「もうちっとだな」
言ってイマドが立ち上がる。荷物を棚から降ろすんだろう。
「あたしも……」
「どーせ届かねぇだろ。取ってやるから座ってろって」
「……ありがと」
イマドに悪いなと思いつつ、こういうふうにしてもらうと嬉しかった。
「ったく、相変わらずお前荷物少ねぇな」
「ごめん……」
思わず謝る。
どうも前線で染み付いたクセが抜けなくて、あたしはいつも荷物が少なかった。日用品も着替えも最低限、それを使い回すのがパターンだ。
ただこれ、女子ではそうとう珍しいらしくて、見た人みんなに驚かれる。
「今度はもう少し、持って来るから……」
「いや、別にそういう意味じゃねぇって。つか、どうやったらこんな上手くやれんのか教えろよ」
びっくりしてイマドを見る。こんなふうに言われたのは初めてだった。
「――どした?」
「ううん。えっと……そういうの教えてって、初めて言われた……」
こんなことでも他の人の役に立つんだと、目から膜が取れた感じだ。




