Episode:77
ルアノンの町の辺りは、昔から国境線だ。
ただ、町の人間はあんまその辺気にしてなかった。なんせ辺境だから、中央の色んなものがイマイチ行き届かなくて、何でも自分達でやる気風だ。
所属国も、正直あんま気にしてない。ただここんとこは、アヴァン領が長かったってだけだ。
あの町がいちばん嫌がるのは、町を好き勝手にされることだった。
どこの誰が実質支配しようと、今までどおりなら構わない。けど何か押し付けるなら全力抵抗。そーゆー気質のとこだ。
今回どっちへ転ぶかは、来てる連中次第だろう。ただロデスティオだし、ワサールの状況見ても、締め付けは厳しくなりそうだ。
あと問題なのが、万が一連中が町へ来たら、かなりの虐殺になりそうなことだった。
ともかくロデスティオの連中は、荒っぽいことで有名だ。しかも支配の仕方も、逆らったら殺すっつー強硬なやり方だ。
こんなのが町来て、あの独立心旺盛な人たちと激突したら、町中血で染まりかねねぇ。
もしかしたら俺の取り越し苦労で、実際にゃ何もねぇかもだけど、先に行って知らせておきたかった。
「明日、切符取れっかな」
「あ、じゃぁ取れなくても、強引に……」
ルーフェイアがとんでもねぇこと言い出す。
「ンなことしたら、途中で放り出されっだろ」
「ううん。姉さんの名前使えば、大丈夫」
「大丈夫って、どんだけだよ……」
こいつン家がとんでもねーのは知ってたけど、ここまでとは思わなかった。
「えっと、列車とかって……大手企業とか大富豪が急に使うときのために、少しだけ席、余裕があるの。だから、それ使えば」
「そーゆー話かよ」
なんかもうケタ違う。一般市民の発想じゃねぇ。けどこれで、足は確保できそうだ。
「んじゃ、一眠りしたら出れるな」
「うん。足りないものだけ用意して、あとは乗れば……何とかなるから」
「助かる」
俺の何気ない言葉に、こいつが嬉しそうな顔になった。滅多に見せねぇ、大輪の花みたいな笑顔だ。
――こんな喜ぶのか。
今まで気づかなかったな、と思う。いつも寂しそうな顔してっから、出来るだけ笑わしてやりてぇと思ってたけど、こんな簡単なことだとは思わなかった。
こんなんだったら、もうちっと構ってやろうと思いつつ、言う。
「とりあえず、寝ようぜ。また起きたら移動だろ?」
「うん」
それから俺ら、村長さんちのばあちゃんに案内されて、ベッドへ倒れこんだ。




